月: 2021年3月

  • 新千夜一夜物語 第43話:秋篠宮眞子内親王とご結婚

    新千夜一夜物語 第43話:秋篠宮眞子内親王とご結婚

    青年は思議していた。

    秋篠宮眞子内親王の結婚が物議を醸している件についてである。皇族の結婚は慶事であるはずが、国民から批判の声が多く上がっているように、青年には感じられた。
    その理由は、婚約者である小室圭さんの母親である、小室佳代さんが元婚約者との金銭トラブルを起こしていることと、そもそもそのような問題を起こす性格の人物の息子であることが原因のようだ。
    天皇家と縁を持つ親族に、金銭トラブルを抱える/そもそも起こす人物がいることに対し、国民は不安に感じることだろう。

    皇族に関して一個人として意見を述べるつもりは一切ないが、なぜここまで問題になっているのだろうか。
    小室佳代さんにかかっている、何らかの霊障が関係しているのだろうか。

    一人で考えても埒が明かないと思い、青年は陰陽師の元を訪れるのだった。

    『先生、こんばんは。今日は小室佳代さんのことで教えていただきたいことがあり、お邪魔しました』

    「以前から色々と話題にあがっている件じゃな。して、具体的にどのようなことを知りたいのかな?」

    青年は、小室佳代さんの金銭スキャンダルや、彼女の夫と、その家族たちの身に起きたことを、簡潔に説明した。

    『今回の騒動は、婚約している当事者ではなく、小室圭さんの母親である、小室佳代さんと彼女の元婚約者である竹田さん(仮名)との、過去の金銭のやり取りが問題となっているようです。この400万円以上もの大金について、小室家サイドでは贈与で、彼は貸与だったと主張しており、双方の認識がずれています』

    「我々庶民の結婚においても、婚約者の親族に金銭的なトラブルを抱えている人物がいるとわかったら、トラブルを解決してもらうか、それが難しいとしても、せめて納得のいく説明や対応を求めるのは、当然のことじゃからな」

    陰陽師の言葉に対し、青年は一つ頷いてから口を開く。

    『しかし、この件に関し、小室家からの明確な回答がないことから、この結婚に不安を感じている人々が多いのではないかと思います』

    「なるほど。ちなみに、今回の結婚のトラブルの発端となったお金は、どういった経緯で生じたのかの?」

    陰陽師にそう問われ、青年は再びスマートフォンを操作し、該当するサイトを読み上げる。

    『元婚約者は、婚約していた当時、小室圭さんが通っていた大学の学費として400万円を渡したようですが、その後も佳代さんからの金銭の要求が激しかったため、婚約を破棄したようです。その後、今回の結婚の話が出たことから、返金してもらおうと思い返金交渉に着手したようですが、誓約書がなかったために返金は不可能だと知り、新聞記者に情報をリークしたようです』

    「なるほど」

    そう言い、陰陽師は鑑定を始め、紙に鑑定結果を書き足していく。

    小室佳代SS

    竹田(仮)SS

    2人の属性表を眺めた青年は、小さく唸り声を挙げてから言葉を発する。

    『小室佳代さんは全体運9点で金運が9点満点中8点、元婚約者は総合運8点で金運が8点ですが、2人の今世の課題に、今回の騒動のようなお金の問題を抱えることは、本来は含まれていないのでしょうか』

    「いや、今世の課題にお金の問題が含まれないのは、総合点が9点かつ金運が9点の場合のみじゃ。8点の場合は、霊障とは関係なく“何らかの問題を抱える”ことになり、7点以下になってしまうと、“かなり大きな問題を抱える”結果となる。また、総合点が1点下がる毎に、それ以下の項目は、総合点9点の場合と比べて、さらに1点ずつ下がることになる」

    陰陽師の説明に青年は何度も頷いた後、口を開く。

    『なるほど。2人とも、お金の問題を抱えることは今世の課題に含まれているものの、今回の騒動にいたるまでの大きな問題に発展してしまったのは、“1:財運”の相による影響が大きいと』

    「その可能性が高いじゃろうな。また、金運について付言しておくと、ワシが言う金運とは、世間一般で定義されているような、収入や貯金と言った問題もなくはないが、そうではなく、入ってくるお金を自らの“宿題”に沿った使い方ができる運を持っているか否かということを意味している」

    『なるほど。小室佳代さんは、庶民からみれば贅沢な暮らしをしているように感じられますが、彼女のお金の使い方そのものが、1の相の影響によって、今世の課題に沿っていない可能性があると』

    「いつも諭しておるように、そのような一面的な考え方をしていかん。1の相はそんな単純な話ではない」

    『とおっしゃいますと』

    「たとえば、じゃ。融資を受けようとした際に、通常なら融資を受ける条件が整っているのに融資を受けられず、自分が望む・理想とする“お金の入り方”がその希望通りにならないといったように、具体例を得げればキリはないが、いずれにしても、本来であれば起こりえないことが起こるのが、霊障の特徴なわけじゃ」

    『なるほど』

    陰陽師の説明に戸惑いながらも、青年は言葉を続ける。

    『いずれにしても、霊障である限り、お金の入り口と出口の両方で、通常では考えられない邪魔が入るということなのですね』

    「さらに注意が必要なのは、たとえば、魂4と魂1〜3とでは、同じ修行をするにしても、そもそも修行のレベルが異なっている。それ故、収入や支出のスケールも当然異なってくるわけで、仮に、贅沢な暮らしをしているからとって、必ずしも今世の課題に沿った使い方をしていないとは限らないという問題もある」

    『なるほど』

    未だ納得のいかない表情を浮かべている青年に、陰陽師が言葉を続ける。

    「ところで、そなたの家庭では、お金はどのように使われていたか、覚えておるか?」

    陰陽師の問いに対し、青年は顎に手を当てて黙考した後、口を開く。

    『僕の両親は共に“魂3:武士”でしたが、食費などを倹約して、四人いる子供の学費のために貯金を優先してくれました』

    青年の答えに対し、陰陽師は一つ頷いてから口を開く。

    「たとえば、魂4、特に4−4の家庭では、教育や教養に類する支出が少なく、食費にかけるエンゲル係数の比率が一般的に高い傾向がある。つまり、同じ収入であっても、それを何に使うのかによって、金運の“質”が変わってくるわけじゃ」

    『なるほど』

    真剣な表情で頷く青年を見やり、陰陽師は次の質問を投げかけた。

    「さて、今度は、彼女の亡くなった夫の家族に起きた出来事について教えてもらおうかの」

    陰陽師に問われた青年は、手早くスマートフォンを操作し、やがて口を開く。

    『彼女の夫は焼身自殺し、その一週間後に義父が首吊り自殺をし、それからおよそ一年後、義母も自殺しているようです』

    「なるほど」

    あいづちを打つ陰陽師に対し、青年は言葉を続ける。

    『夫が亡くなった後、佳代さんは、70代の彫金師の男性と5年ほど交際していたようですが、彼も不審死したようです。このように、彼女と深く関わる人物が命を落としていることから、何らかの霊障が関係しているのではないかと思ったわけです』

    「合計4名もの人物が亡くなっているとすれば、何らかの霊障が関係している可能性は高いかもしれんな。どれ、さっそく鑑定してみよう」

    そう言い、陰陽師は紙に鑑定結果を書き記していく。

    小室敏勝SS

    小室善吉SS

    小室敏勝の母SS

    彫刻家ASS

    他界した人物たちの属性表を眺めた青年は、深いため息を吐いてから、口を開く。

    『亡くなった方々全員に、先祖霊の霊障に“5:事故/事件・被害者・死亡”の相がかかっているので、亡くなってしまったことに納得ですが、地縛霊化している方はいるのでしょうか?』

    「確認しよう。少し待ちなさい」

    固唾を飲んで結果を待つ青年。
    少しした後、陰陽師は口を開く。

    「いや。全員、無事にあの世に戻っているようじゃな」

    安堵の息を漏らす青年を横目に、陰陽師は言葉を続ける。

    「元婚約者も含め、佳代さんと関わった人物全員が、人運と恋愛運が共に“7以下”であることから推察するに、上記の人々は彼女と関わって苦労することも同時に今世の宿題としていたようじゃな」

    『なるほど』

    苦々しい表情でそう言う青年に対し、陰陽師は微笑みながら続ける。

    「亡くなった人物たちを中心に考えると、“女性問題、特に夫婦関係、親族関係”で苦労するという宿題を抱えて転生してきたとすれば、それらの問題で苦労するのは決して悪いことではなく、むしろ自らの宿題を果たすにあたり、相応しい人間関係と環境を選んだと考えられるわけじゃ」

    『ただ、“薬も過ぎれば毒となる”ではありませんが、“5:事故/事件・被害者・死亡”の相があったために、彼女と関わった人物が命を落とし、“1:財運”の相があったために、元婚約者は400万円以上もの大金を失うほどの問題に発展してしまったと』

    「うむ。宿題による重石と霊障による“余分な重石”とは、分けて考える必要はあるものの、大筋としてはそうなる。自殺というと世間の人間はネガティヴに捉えるじゃろうし、実際、胸の痛む出来事ではあるが、“あの世”の視点でみれば、佳代さんと関わって命を落とした人物は、立派に今世の宿題を果たして帰還してきた魂ということになる』

    陰陽師はそう言い、何度も頷いている青年を横目に、湯呑みに注がれた茶をゆっくり飲み始める。
    しばらく無言で腕を組んでいた青年が、次の疑問を口にする。

    『それにしても、佳代さんと深く関わる人物は、なぜあんなに高額なお金を彼女に渡してしまったのでしょうか』

    青年の問いを聞いた陰陽師は、鑑定を行い、口を開く。

    「今も話したように、基本的には今世の宿題が大きな要因ではあるが、“余分な重石”の部分である霊障の影響としては、“14:人的トラブル”と“17:憑依”の相じゃな」

    『彼女は“魂3:武士”であるのに、めずらしく17の相が“天啓”ではなく“憑依”なのですね』

    やや目を見開きながら言う青年に対し、一つ頷いてから、陰陽師は言葉を続ける。

    「“17:憑依”の相には、本人に眷属(※第35話参照)や動物霊が憑依した結果、遠慮や躊躇がなくなったり、妙なパワーを得て人に対する圧力や過激な言動が増し、本来の実力以上の“感化”を他人に与える力がある」

    『なるほど』

    「そして、人運と(特に男性の)恋愛運の低さに加え、佳代さんとのパワーバランスとでもいうような、個別の相性を考慮する限り、彼女の提案を断れない関係だったと言うことができるじゃろうし、今世の宿題を含め、様々な霊障との合わせ技によってお金を渡してしまったと考えるべきなのじゃろうな」

    陰陽師の説明に青年は首肯した後、しばらくしてから口を開く。

    『現状、秋篠宮眞子内親王と小室圭さんの結婚がどのような結末になるかはわかりませんが、仮に成婚した場合、秋篠宮眞子内親王だけでなく、秋篠宮家にも何らかの問題を持ち込むことが懸念されますが、どうなのでしょうか』

    「どれ、鑑定してみよう」

    そう言い、陰陽師は鑑定結果を紙に書き足していく。

    秋篠宮眞子内親王SS

    小室圭SS

    『秋篠宮眞子内親王は、人運と恋愛運が7以下と低いことから、今世は人間関係や異性問題で苦労することが今世の宿題のようですが、小室家の問題で苦労することも、その中に含まれているのでしょうね』

    青年の問いに対し、陰陽師は無言で鑑定を始め、やがて口を開く。

    「いや。あらためて、そのあたりをみるに、どうもそうではないようじゃな」

    『とおっしゃいますと』

    「つまり、宿題という観点からみる限り、今世の秋篠宮眞子内親王の宿題に、小室家と婚姻関係を結び、それによって苦労するという宿題は存在しない。ゆえに、今回の結婚が成立してしまい、その後トラブルに巻き込まれるとすれば、それは霊障のなせる技ということになる」

    『なるほど。霊障によって、ここまでの騒動になるとは。ほんと、霊障の影響は恐ろしいですね』

    そう言い、青年は腕を組んで黙考した後、やがて陰陽師に問うた。

    『ちなみに、お二人の恋愛と結婚の相性はいかがでしょうか?』

    青年の問いに、陰陽師は無言で鑑定を始め、紙に結果を書き足していく。

    秋篠宮眞子内親王からみて/小室圭からみて
    恋愛  D/F
    結婚  F/F

    アルファベットを見、青年は小さくため息を吐いてから言葉を発する。

    『S+が最高点であるのに対し、Fは0点、Dは1〜10点ですので、恋人関係であろうと婚姻関係であろうと、相性から判断しただけでも、お互いにとって魂磨きの修行にはならないわけですね』

    「もちろん、それはそうじゃが、ワシが言う恋愛や結婚の相性とは、単に社会的地位の向上や収入の安定、夫婦円満といった現世利益だけではなく、お互いにとっての魂磨きの修行が進むかどうかといった、霊的な問題も含んでいることをよく心に留めておくようにの」

    『なるほど。我々は魂磨きをするために、修行の場である“この世”に転生してきているわけですから、趣味や感性や考え方が合うからといった、思議の基準ではなく、今世の課題を達成するのに適しているかどうかという基準でパートナーを選ぶべきなのですね』

    「その通りじゃ。話を戻すが、秋篠宮眞子内親王には今世“結婚で苦労する”という相がないので、できることであれば、霊障によって引き起こされている、この結婚が破談になることを祈念するばかりじゃ」

    そう言い、陰陽師は壁時計に視線を向ける。
    それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

    『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

    そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

    「今日もご苦労じゃったな。気をつけて帰るのじゃぞ」

    陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。

    帰路の途中、青年は小室佳代さんにまつわる出来事を読み返していた。
    結婚によって、本人の意図とは無関係に、本人の親族はもちろん、パートナーやその親族にも影響を与えてしまうことがあるし、一度婚姻関係を結んだ場合、離婚したとしても、霊的な繋がりは切れないことが多いことも理解できた。
    恋愛で盛り上がっているカップルや既婚者たちには辛い話だろうが、結婚後のことも踏まえた大局的見地から、相性鑑定の重要さを説明していこう。
    そう青年は決意したのだった。

     

     

  • 新千夜一夜物語 第42話:マスク拒否おじさんと魂の属性

    新千夜一夜物語 第42話:マスク拒否おじさんと魂の属性

    青年は思議していた。

    2020年9月、飛行機内で客室乗務員からマスクを着用するように指示を受けていたにも関わらず、頑なに拒否して航空機を臨時着陸させた男性についてである。

    ネットの情報から判断するに、彼は健康上など、なんらかの理由でマスクを着用できないようではなかった。彼のように、周囲の状況を顧みずに迷惑行動を取る人物は、いったいどのような魂の属性で、先祖霊の霊障にどのような相がかかっているのだろうか。

    一人で考えても埒が開かないと思い、青年は陰陽師の元を訪れるのだった。

    『先生、こんばんは。本日はマスクの着用を巡って事件を起こした人物について教えていただきたいと思い、お邪魔しました』

    「ふむ、いつもと毛色が異なる事件のようじゃが、具体的にどういったことを知りたいのかの?」

    青年は、マスクを拒否した男性が起こした事件の経緯と概要を、順を追って陰陽師に説明した。

    『順序としては、マスクを着用しなかった彼に対し、隣席の客が“気持ち悪い”と苦言を訴えたのが事の発端だったようです。コロナ禍である現状、飛行機内での密な空間の中、少し動けば袖が触れる距離にいる人物がマスクをしていなければ、なんらかの拒否反応を示すのは止むを得ないと思うのですが』

    「たしかに」

    小さく頷く陰陽師を横目で見ながら、青年は言葉を続ける。

    『その後、彼は客室乗務員に他の乗客が不適切な発言をしたとして謝罪させるように言い、その際に大声で詰め寄ったようです。眠っていた他の男性が目を覚ますほどの声量だったようですが、加害者は声量の感じ方は人それぞれであり、自分は紳士的な対応をしていたと主張しています』

    「ふむ、一般常識で考えると、必ずしも紳士的な対応とは言い難いがの」

    微笑みながらそう答える陰陽師に、ひとつ首肯してから青年は説明を続ける。

    『さらに、加害者は客室乗務員からのマスク着用のお願いを再三断り、今度は書面を出せと言っておきながら、機長指示で提出された書類を丸めて投げ捨て、それを客室乗務員が加害者の胸ポケットに入れようとしたところ、客室乗務員の腕をねじり上げて全治2週間の怪我を負わせました

    「なるほど。話を聞く限り、かなり気性が荒そうな人物のようじゃな」

    『彼の蛮行はそれだけにとどまらず、2020年11月にも、彼は某ホテルの食事会場で、ホテル側からのマスクと手袋の着用などの呼びかけを無視して入場し、その後、ホテルの支配人から端の席に移動するようにとの要請なども無視しました。さらに、板前も加わっての押し問答にまで発展し、現場が混乱して収拾がつかなくなったため、最終的にホテル側が110番通報しました』

    「なるほど」

    『さらに、翌朝も同ホテルの食事会場に現れ、ホテルの従業員の制止を無視してマスク未着用のまま強引に入場しようとし、再び警察沙汰になりました』

    「そのような人物であれば、他にも問題を起こしてそうじゃが、どうかな?」

    『2020年夏頃、皇居の東御苑を訪れた際も、マスク着用を拒否して入場したようです。ただ、皇居の警備員が同行するという条件付きで、マスク未着用のまま入館許可を得ていますが、これも問題行動ではないかと』

    「たしかに」

    青年の言葉に一つうなずいた後で、陰陽師が青年に問いかける。

    「しかし、そこまでして、なぜ、その人物はマスクの着用を拒否したのか、何か情報はないのかの?」

    『本人としては、小さい頃から喘息を患っていたと述べていますが、ネットで調べる限り、喘息患者はマスクをしない方がいいというわけでもないようですので、健康上の理由は建前のように感じます』

    「ふむ。健康上の理由ではないとすると、彼なりに何らかの意図や主張があったのかな?」

    『彼自身の主張としては、コロナ禍でマスクの着用の義務化が進む中、マスクをしない少数者が不利益を受けていると考えていたようで、マスクをしない自己決定を認めよう、とのことのようです』

    そう言い、青年は加害者の一つの主張を読み上げる。

    社会の中でも“妥協しない自由”も認めることが、同調圧力の少ない“楽しい”社会を作ります

    『感染すると死の恐れがあるコロナウイルスに対し、科学的にマスクの有効性が証明されていることを考慮すると、マスクをする方が良いと思いますが』

    「たしかにの。して、最終的に彼はどのような罪状で逮捕されたのかな?」

    『この騒動により、関西国際空港に向かう便が新潟空港に臨時着陸し、2時間ほど遅延しました。罪状としては、威力業務妨害、傷害、航空法違反などとなります。ちなみにですが、逮捕されて捜査車両に乗せられる時は、“不当な警察権力の介入が行われたことは遺憾に思っています”と叫んでいたようです。勾留中もマスクをすることはなく、捜査員も着用させることを諦めたそうです』

    「で、マスク着用の拒否に始まり、犯罪に発展するまでの行動を取った、彼の経歴は?」

    陰陽師の問いに対し、青年はスマートフォンの画面を見ながら口を開く。

    『名前は奥野淳也、34歳。彼は大阪のかなり裕福な地主の息子のようで、東京大学法学部出身で比較政治学を専攻。大学院に進むも博士課程では論文審査に合格できずに満期退学したようです。そして卒業後、明治学院大学非常勤職員(特別ティーチングアシスト)として論文の書き方の指導していたようですが、このアルバイトは時給2,000円で月収11万円程度だったようで、その収入を元に茨城県の家賃4万円代の団地に住んでいたようです』

    「我が国の最高峰とも言える東京大学を卒業し、博士過程にまで進むほどの学歴の持ち主のようじゃが、それだけの学歴を持ちながら、もっと経済的に豊かな職に就けなかったのかが気になるところじゃな」

    『おっしゃる通りです。高学歴であれば、就活でそれなりのアドバンテージがあったと思いますが』

    「そうじゃな。して、そなたの見立てでは、彼はどのような魂の属性だと考える?」

    『彼の言動は自己中心的に取れるため、頭が2の人物だと思います。そして、博士課程まで進んでいることから、“魂3:武士”で、仕事や経済面から判断するに、霊障に“2:仕事”の相がかかっているのではないかと』

    「なるほど。では、さっそく鑑定してみるとするかの」

    そう言い、陰陽師は紙に鑑定結果を書き記していく。

    奥野淳也SS

    鑑定結果を眺めた青年は、小さく驚きの声を挙げる。

    『なんと、2−4ですらなく、4−4(転生回数期が第四期の魂4)でしたか。確認ですが、この世に転生してきたばかりの第四期の魂4は、魂1〜3同様、人生経験が少なく、魂が未熟であることから、喜怒哀楽の論理構成がきわめて単純であり、いわゆる哲学的/形而上学的な思考回路が未熟である傾向が強く、それ故、物事の判断が極めて即物/短絡的という傾向がどうしても強くなるということでしたよね』

    「基本的にそなたが指摘した通りじゃ。歴史を例にとるとすれば、室町時代中期以降の一向一揆や江戸時代の百姓一揆などが典型的な4―4の行動となるが、現代においても、沖縄の米軍基地や裁判所の前でピケ(争議中の労働者などがストライキ破りを防ぐために見張ること。またはその人)を張っている人々の大多数が、あるいはまた、それに対峙する機動隊や警察の最前線にいる人員もそれに該当することは、先日説明した通りじゃ」

    陰陽師の説明を聞き、青年は一つ頷いた後、顎に手を当てながら口を開く。

    『なるほど。仮に4−4であっても、学業が90点(S)であれば東京大学に合格し、大学院にまで進めるのですね。まさに、転生回数が大山である70回代が為せる業なのですね』

    「以前に説明したように(※第39話参照)、魂4の中でも学業が突出するのは、転生回数期が第三期後半からとなるが、彼のように例外的に学業が異常に高い人物も、中にはいるというわけじゃな」

    『なるほど。ところで、彼にかかっている“5:一般・事件・加害者・怪我”の相と、航空機内の騒動で客室乗務員に軽傷を負わせたことになんらかの相関関係があるのでしょうか』

    「そなたの話を聞く限り、彼は航空機だけでなく、他の場所でも警察沙汰を起こしていることから、その可能性は高いと思う。さらに言えば、人運が3という低い値であること、霊脈と血脈と天命運の全てに“14:人的トラブル”の相が出ていること、そしてこの霊障5が合わさることによって、今回のような逮捕に至るまでの事件を引き起こした可能性は、たしかに、高いと思われる」

    『なるほど』

    陰陽師の説明に一つ頷いた後で、青年が口を開く。

    『つまり、そのあたりをもう一度整理すると、総合運が満点である9点で、霊障がない(神事をし、パフォーマンスが100%の状態)場合、各項目が8点以上であれば、今世、重大な苦労をする心配はない反面、7点以下の項目がある場合、それなりの苦労を覚悟する必要があるわけですね。さらに言えば、7点以下の項目で苦労することが今世の課題だと』

    「端的に言うと、そういうことじゃ」

    『彼の大学の同級生によると、“とにかく理屈っぽくて浮いた存在でした。“変人”って感じで。友達はほとんどいなかったのではないでしょうか“といった印象だったそうですが、この点も踏まえると、彼が人間関係でトラブルを起こしやすいことも納得です』

    そう言いながら小さく頷く青年に、陰陽師が問いかけた。

    「ちなみに、彼の家族はこの事件に関して、何かコメントをしておるのかの?」

    陰陽師に問われた青年は、スマートフォンを操作し、父親に関する情報を伝えた。

    『彼の父親は、彼が逮捕されたことに対し、“裏で大きな力が働いているのでは”とコメントしたり、ネット番組で息子と共演していることから、同じ魂4ではないかと思います』

    「なるほど。せっかくだから、彼の両親も鑑定してみるとしよう」

    そう言い、陰陽師は紙に両親の鑑定結果を書き足していく。

    奥野淳也の父SS

    奥野淳也の母SS

    二人の属性表を見た青年は、頷いてから口を開く。

    『やはり、4−4でしたか。欄外の枝番の数字の多くが“3”で“性善説”論的な気質を持つことから、根は悪い人ではないようですが、一部に5があるあたりが、今回のような騒動を起こした息子を擁護する要因なのでしょうね』

    「それと、各所に14があること、また、総合運の中の人運が7であることも、そのあたりの言動に影響しておるのかもしれんな」

    『たしかに。本来であれば、偏狭ではあるものの正義感が強く、大衆の意見に感化されやすい魂4である人物がこのような言動をするというのは、正に、“人間は多面体”を地で行っていると言えるのでしょうね』

    「さらに言えば、 “魂4(逆)色眼鏡”によって結ばれた、魂の組み違い夫婦であることを考えると、父子の間では話が通じていたのかもしれぬが、頭が1で、しかも“魂3:武士”である母親からすると、二人と価値観が合わず、色々と苦労している可能性も否定できぬの」

    『僕もそう思います。参加意識の高い魂4の父親がメディアの前でコメントしたことはある意味当然として、母親からコメントが一切ないのは、あるいは、そのような事情があるのかもしれませんね』

    そのような青年の言葉に大きく頷いた後で、陰陽師が口を開く。

    「ところで、彼がマスクをしない理由として、小さい頃から喘息を患っていたからとあったようじゃが、そのことに関するコメントはあるかの?」

    陰陽師に問われた青年は、スマートフォンを操作し、該当する項目を読み上げる。

    『父親曰く、過去に一緒に生活していた時は、マスクをつけられないような症状はなかったとのことです。それだけではなく、彼は事件の後にマスクをして街中を歩いている姿を目撃されているようです』

    「つまり、彼がマスクをしないのは健康上の理由ではなく、個人的なこだわりである可能性が高いというわけじゃな」

    『どうやらそのようですね。彼は“法律上の規制がない以上、マスクを強制することはできない”という持論を展開していますが、マスクを巡る騒動の結果、今回のような事件を引き起こしたことには、首を傾げざるを得ません』

    「広義の意味で、マスクを着用しないことは法律上の規制にはならないという理屈を盾に持論を主張した結果、航空法や宿泊約款といった、民法に違反して逮捕されてしまったことは、たしかに、4−4らしい反応と言えるかもしれんのお」

    陰陽師の説明に対し、青年は頷いてから話題を変えた。

    『ところで、話が変わりますが、もう一人、マスクを巡る騒動で逮捕された男性がいます。49歳という年齢で今年(2021年)の大学共通テストを受けた人物なのですが、彼は、監督者に何度も注意されたにも関わらず、マスクで鼻を隠すことを最後まで拒否しました。その結果、監督者に試験会場から退場するように言われたものの、それすらも無視したため、他の受験生の方が別室に移動することになりました。試験が終わった後も、彼は試験会場のトイレに立てこもるといった問題行動を取り、最終的には、不退去容疑で現行犯逮捕されました』

    「つまり、マスクから鼻を出していたことが原因で、テストで失格になったわけじゃな?」

    『どうやら、そのようです。監督者は彼に6回も注意をし、しかも次に注意をしたら失格になることを明確に伝えたにもかかわらず、彼は注意を無視し続け、マスクの着用を改めなかったようです』

    「なるほど」

    『いずれにしましても、マスクの着用はきっかけに過ぎず、ルール違反が主な要因であることから、僕としても失格はやむを得ない措置だったと思います』

    「ちなみに、彼には健康上の理由などはなかったのかの?」

    陰陽師に問われた青年は、スマートフォンを再び操作し、しばらくしてから口を開く。

    『その点に関しては明確な情報は出ていないのですが、マスクを鼻まで着用できないまでの理由があるのなら、監督者に注意された際にその旨を伝えることができたはずだと思います』

    「たしかに」

    『それだけではありません。事前に配布されていた“受験上の注意”にも、次のように書かれていました』

    マスク(予備マスク含む。)を持参し、試験場内では常にマスクを正しく着用してください。(中略)。感覚過敏等によりマスクの着用が困難な場合は、”医師の診断書“を提出して受験上の配慮申請を行い、別室での受験を申請する必要があります。

    「と言うことは、この男性も、個人的な事情でマスクを拒否していた可能性が高いわけじゃな」

    『はい。自分の主張が認められず、いらいらしていたと容疑を認めていたことから、おそらく個人的な事情だと思います』

    陰陽師は青年の言葉に頷いてみせ、失格となった男性の鑑定結果を紙に書き記していく。

    共通テスト失格男SS

    属性表を見た青年は、少し驚いた表情を見せ、口を開く。

    『彼は“魂3:武士”だったのですね。ただ、頭が2で、欄外の枝番の数字は“7”であること、そして、先祖霊の霊障に“5:一般・事件・加害者”の相があることを鑑みるに、今回のような自己中心的な騒動を起こしたことも納得です』

    人運が“3”とかなり低いことも騒動を起こした要因の一つじゃろうし、転生回数の十の位が30回代の人物の場合、メディアで取り上げられるような事件を起こす可能性がどうしても高くなるようじゃな」

    陰陽師の言葉に首肯した後、青年はしばらく黙考してから口を開く。

    『また確認になりますが、この世で犯罪を犯したり迷惑行動を取る人物も、結局は、“永遠の世”の要請で生まれた魂であることには変わりがないわけですから、400回に及ぶ魂磨きの修行を終えれば、この世で真っ当な人生を歩んでいる人々の魂と同様に、“永遠の世”で何らかの職責を担うわけですよね』

    「その通りじゃ」

    青年の質問に大きく頷く陰陽師の様子を確認し、青年は言葉を続ける。

    『と言うことは、たとえこのような事件を起こしたとしても、彼らは彼らで今世の課題をこなしていることになるわけですから、それを以て彼らを安易に批判することは、あまり意味がないということになりますね』

    「その通りじゃ。いつも言うように、“罪を憎んで人を憎まず”ではないが、騒動を起こす人物を目の敵にしたり、悪意を向けるのではなく、それらの事件から気づき、学んだことを自分の糧として活かすことが肝要であると同時に、“この世は修行の場”という言葉の意味を常に噛み締めることが重要じゃとワシは思う」

    『つまり、この世が“地上天国”ではない以上、たとえ自分の身に不幸な出来事が起きたとしても、それは今世の宿題であったと考えるべきなのですね』

    「もちろん、誰もが戦争や凶悪犯罪に巻き込まれたくないと願うわけじゃが、霊障がない状態でそのような厄災に巻き込まれた場合には、それも今世の宿題と思うくらいの覚悟が必要だとワシは思う」

    『そして、それこそが“不動心”だと』

    「まあ、そう言うことじゃ」

    そう言い、陰陽師は壁時計に視線を向ける。
    それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

    『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

    そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

    「今日もご苦労じゃったな。気をつけて帰るのじゃぞ」

    陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。

    SNSやウェブ上だけでなく、現実でも偏狭な正義感を振りかざして迷惑行動を起こす人物がいる。特にコロナ発生以来“**警察”と呼ばれる、過度な自警団的行為が多数報告されている。しかし、そんな彼らの行動にも、彼らなりの宿題が大きく絡んでいるのだ。
    とは言え、そこに霊障が絡むと、事態が思わぬ方向に進んでしまう可能性が出てくる。そのような意味で、これからも、霊障によって魂磨きの修行が阻害される人物が一人でも少なくなるよう、ご神事の提案だけは続ける必要があるはずだ。
    そう青年は思議したのだった。