カテゴリー: 霊障

  • 新千夜一夜物語 第27話:大量殺人事件と不動明王(前編)

    新千夜一夜物語 第27話:大量殺人事件と不動明王(前編)

    青年は思議していた。

    相模原施設殺傷事件の加害者である、植松聖に死刑判決が下された報道についてである。
    この事件は、第二次世界大戦後、最大の大量殺人事件(19名が死亡、26名が重軽症)と言われている。
    植松被告は殺害する相手を選んでいたことから、2018年東海道新幹線殺傷事件(※第19話参照)のような無差別殺傷とは異なり、何らかの意図があって犯行に及んだように青年には感じられた。
    両者の違いは何なのか。何にせよ、彼にも霊障があるに違いない。

    そう思い、青年は陰陽師の元を訪れた。

    『先生、こんばんは。本日は大量殺人事件について教えていただけませんか?』

    「大量殺人事件とは、また物議を醸すようなテーマじゃな。して、どんな事件かの?」

    青年は、相模原施設殺傷事件の内容を陰陽師に伝える。

    『この事件のことをいろいろと調べていてふと気になったのですが、大量殺人事件を起こす人物には、魂の種類や霊的特性に何らかの共通点みたいなものがあるのでしょうか?』

    「いつも言っているように、人間は複雑な要素が重なって構成された複合体なわけじゃから、大量殺人者はこうといった公式みたいなものは存在しない。じゃが、ワシがみる限り、本来我が国にほとんどいないはずの4-2という属性を持った人物に凶悪犯罪者が多いということは言えるかも知れん」

    『え、4−2? 転生回数期が第四期の魂2:制服組(軍人・福祉関係)の一部が連続殺人者ですと?』

    そう言い、唸り声を上げる青年を横目に、陰陽師は湯呑みの茶を一口飲んでから声を掛ける。

    「どうも合点のいかぬ顔をしているようじゃから、今日は魂2の特徴についてゆっくり説明するにあたり、そなたの知識を再確認するためにも、覚えている範囲でかまわんから、魂2の特徴について、説明してもらえるかの」

    青年は湯呑みに注がれた茶を一口飲んで喉を潤わせた後で、口を開く。

    『魂2はかつては諸侯・貴族階級を形成していましたが、それらの階級が消滅した現代では制服組(軍人・福祉関係)の多くに分布している属性で病院の看護師、福祉関係、そして防衛装備庁・自衛隊などで活躍しているとお聞きしました』

    「うむ、基本的な話は、しっかり理解できているようじゃの」

    にっこりと微笑みながら、陰陽師は言葉を続ける。

    「して、そなたのその説明にひとつだけ付言すると、魂2の大半は、まだ貴族という階級があった時代においても、たとえば**伯爵のように、世に出て活躍するというよりも、王や皇帝をサポートする役割の人物が多かったという歴史的な事実もあわせて頭の片隅に留めておくとよいじゃろう」

    陰陽師の助言に青年は手を打ち、口を開く。

    『なるほど。貴族という階級が存在しない現代では、上記以外にも福祉・医療関係の幹部職員、NPO・NGO、WHO等の世界的福祉機関の職員として従事している方が多いという話もそのような歴史的背景からきているのですね?」

    「その通りじゃ」

    陰陽師は、ふたたび一つ頷いた後で、言葉を続ける。

    「さらに、職業と呼べるかどうかはともかく、町内会長、お祭りの実行委員長といった世話役なども、彼らの現代の主要な活動分野となっている。また、魂2の人間は総じて“質実剛健”であるとともに、かつては貴族であったにもかかわらず、ブランド品などの装飾品などにもあまり興味がなく、贅沢をしない人間がほとんどという特徴も合わせ持っておる」

    『お話を伺うかぎり、貴族という言葉から想起されるイメージとは裏腹ですね』

    ちょっと意外そうな顔をしている青年に、陰陽師が言葉を続ける。

    「もちろん、現代に生きる魂2の人々が一様に金持ちというわけではないが、仮に富裕層であったとしても、見栄を張るようなこともない。たとえ、高価な服を身に着けたり厳選された食材を買い求めることがあったとしても、日常の生活は極めて質素なことが多い。一方、性格的に穏やかな人物が多い反面、程度の問題はさておき、魂の属性3を中心として精神疾患を抱える人間が多いのも魂2の特徴の一つとなる」

    『つまり、自らの富や名声をこれ見よがしに誇示するのは、魂4の人物が多いわけですね?』

    「4-4にはそもそも該当する人物はほぼ存在しないので、そなたが言いたいのは2-4のことなのじゃろうが、自己顕示欲が強いという点では、むしろそなたたちのような魂3が一番じゃろうな」

    『げげ、そうなのですか?!』

    思わぬ展開に、驚きの声を上げる青年に、陰陽師が言葉を続ける。

    「たとえば、芸能人や、いわゆるセレブと言われる人々がほとんど魂3であることを考えれば、そう驚くことはあるまい」

    「たしかに。僕みたいな少数の例外を除けば、世間を牛耳り、ブイブイ言わせている人々はほぼ魂3でした」

    頭を掻きながらそう答える青年をおかしそうに眺めながら、陰陽師は紙に輪廻転生回数と各期について書きあげ、脇に“観音”と不動明王“と付け加えた。

    <各期と輪廻転生回数>
    第一期/老年期……301~400回(61~80歳)
    第二期/円熟期……201~300回(41~60歳)
    第三期/青年期……101~200回(21~40歳)
    第四期/幼年期……1~100回(0~20歳)
    ※人生を80年と仮定した場合。

    陰陽師が筆を止めたのを確認し、青年は問いかけた。

    『この、“観音”と“不動明王”とはどういう意味でしょう?』

    「この二つは魂2の性格を理解するキーワードとなる言葉なのじゃが、全ての説明を聞けば、おのずと理解できるものじゃから、後にしよう」

    陰陽師の言葉に対し、青年は黙ってうなずいてみせる。そんな青年に、陰陽師が説明を続ける。

    「この世に転生してきたばかりの第四期の魂は、各魂1〜4に共通する傾向として、人生経験が少なく、魂が未熟であることから、喜怒哀楽の論理構成がきわめて単純であり、いわゆる哲学的/形而上学的な思考回路が未熟である傾向が強い。それ故、物事の判断が極めて即物/短絡的という傾向がどうしても強くなる」

    『つまり、植松被告もこの期に該当していると?』

    青年の言葉に小さく頷きながら、陰陽師は紙に鑑定結果を書き記していく。

    植松聖

    青年は陰陽師が書き記した植松被告の鑑定結果に目を通し、口を開く。

    『彼の場合、天命運に“5:一般・事件・加害者・死亡”の相がありますし、全体運が3と極端に低いという特徴もあるにはありますが、自らの思想を主張するにあたり、今回のような事件を引き起こしてしまうところが、第四期らしいとも言えそうです』

    「そなたの言う通りじゃな」

    青年はしばらくスマートフォンを操作し、再び陰陽師に問う。

    『ちなみに、他の大量殺人事件、2011年ノルウェー連続テロ事件の犯人であるアンネシュ・ブレイビクと、1938年の“津山三十人殺し”の犯人である都井睦雄と、浅間山荘事件の犯人である坂口弘の魂の属性はいかがでしょうか?』

    陰陽師は無言で鑑定結果を書き記し、青年に差し出した。

    アンネシュ・ブレイビク

    画像3

    坂口弘

    三人の鑑定結果を見比べ、青年は首を傾げながら口を開く。

    『アンネシュ・ブレイビクと都井睦雄は植松被告と同じく第四期の魂2ですが、坂口弘は転生回数が第二期の魂3の武士なのですね。天命運に“5:事件・加害者・死亡”がありますが』

    「第四期の魂2の二人は鉄砲玉のように単独で犯行に及んでいるが、坂口弘は徒党を組んで中長期的にテロ活動を行なっていたことから、第二期の魂3という成熟した魂ゆえに成しえた事件という言い方もできなくはないが、この事件は時代が引き起こした事件と考えた方がいいじゃろうな」

    『とおっしゃいますと?』

    「以前、デモは4-4の専売特許という話をしたと思うが、現在の安倍首相の祖父である岸信介元首相が成立させた日米安全保障条約(安保条約)に反対して国会議員、労働者や学生、市民および批准そのものに反対する左翼や新左翼の運動家が参加した反政府、反米運動とそれに伴う大規模デモ運動である1959年(昭和34年)から1960年(昭和35年)安保闘争、そして1970年(昭和45年)の第2次安保闘争、それに派生する安田講堂事件や日大闘争、左翼団体などは成田闘争、さらには連合赤軍のあさま山荘事件なぞは、4-4ではなく、魂3が中心になって起こした特異な事件ということができるからじゃ」

    『なるほど』

    小さく頷く青年を見ながら、陰陽師が説明を続ける。

    「次に、第三期の魂2(3-2)じゃが、この時期の魂2は、魂3・4などと違い、社会的な上昇志向よりも魂2が持つ優しさ、奥ゆかしさ、慈愛といった側面が最大限に発揮されるという特徴を持つ。ワシが独り身のクライアントに、3−2の女性を見つけたら土下座してでも結婚してもらうようにと勧めるのもそのあたりの理由による」

    『先生がそこまでおっしゃるとは! 3-2の女性はまるで観音のような存在というわけですね』

    陰陽師の言葉に驚き、青年は思わず声をうわずらせる。

    「当然のこととして、これらの法則は人間のみならず動物にもあてはまることから、たとえば、ペットとして猫を飼うような場合にも、3−2の猫を飼うようクライアントに勧めておる。実際ワシのところの猫の一匹も3-2なのじゃが、見ての通りとても大人しく、猫の可愛い部分だけを集めた様な猫であるわけじゃから、間違いなくベストの選択となることじゃろう」

    『猫にも輪廻転生と魂の種類があるということは、猫には猫の修行があるのですね! 僕も猫を飼う機会があれば、絶対3−2にします』

    「ああ、それがいい」

    ちょうど、立ち耳のスコティッシュフォールドがテーブルに飛び乗り、陰陽師の手に体をすり寄せてきた。そんな猫の様子を見、二人は微笑み合う。
    件(くだん)の猫を優しくなでながら、ふたたび陰陽師は口を開く。

    「他にも、3−2の人物に関する逸話として、平成27年栃木県の鬼怒川が氾濫した際の被災者が挙げられる」

    『那須の温泉街をふくめた鬼怒川流域で、多くの方々が被災した災害のことですね』

    「その通りじゃ」

    青年の言葉に、陰陽師は小さくうなずいて続ける。

    「被災の報を受け、各局のテレビレポーターが被災地の避難所に急行し、被災者へインタビューを行なっていたのは報道の常であるが、この地域の被災者の方々の沈着冷静、かつ、自らのことを二の次として他者を思いやる応答/態度に、“感銘”を通り越し、“違和感”に近い感覚があった」

    『避難所に避難した被災者と言えば、特に家族の安否がわからないような場合、泣き崩れたり、当局の対応の遅さや甘さを非難したりする人が多いと思いますが、そうした人々とはまったく異なる印象があったわけですね』

    そう問いかける青年に、陰陽師はうなずいて同意の意思を示してから続ける。

    「三日間に渡る一連の報道でインタビューに応じた被災者のほとんどが、非常時にこのような対応ができるものであろうか、と思うほどの模範的な応答を繰り返していたのじゃから、この対応の理由を探るべく、途中からその方々の属性を調べてみた」

    『まさか・・・』

    「そのまさかじゃ。鑑定の結果、老若男女の別なく、そのほとんどが3-2であることがわかったわけじゃが、その中でも、感情を抑えて話すひとりの老婦人の横顔を見ながら、これこそが3-2のなせる発言、と感銘を受けたことを昨日のことのように覚えておる」

    陰陽師の言葉に、青年は納得顔で何度もうなずいて見せる。
    そんな青年を横目に、陰陽師は説明を続ける。

    「次に第二期じゃが、魂2の特徴の一方がはっきりと顕現するという意味では、この時期が最もわかりやすい。人間にたとえれば41~60歳にあたるこの時期は、現世での円熟期に相当しているわけじゃが、魂1:“先導者”を除く各魂がこの世で各々の魂の特徴を最も明確に体現するのがこの時期となる。魂2を例にとるとすれば、軍隊の制服組幹部に参画するのもこの時期じゃし、我が国の防衛大学をみても、毎年の卒業生の少なくとも5割が魂2というわけじゃ」

    うなずいて納得の意を示す青年を横目に、陰陽師は続ける。

    「また、第二期(2-2)の彼らは、福祉と軍隊という一見矛盾した職業分布を持っておるが、戦争というものを交戦現場の最前線という狭義の捉え方からもう少し広義の意味で考えてみると、納得のいく構図が見えてくるというくだりは、以前説明した通りじゃ」

    『以前(※第4話参照)説明していただいた、戦争のメカニズムの件ですね。話し合いによる二国間の問題の解決が困難になった場合に、最終手段として戦争が行われるという』

    「さよう。戦争が不可避となった場合でも、開戦に至るまでの諸手続き、具体的交戦方法とそれに対応する作戦立案、戦闘範囲の策定、そして、どのような状況をもって雌雄を決したかを判断する終結時期の確定と具体的な停戦/終戦方法の確定といった、実に広範囲の職務領域を軍隊の制服組幹部は持っておるわけじゃな」

    『実際の戦場で、命のやり取りの末、血に飢えた殺戮マシーンと化した魂3・4の軍人たちに、モチベーションを保たてつつ、婦女子を中心とした民間人に危害を加えさせないよう最大限の努力をする任務を負っているのも、現場の魂2の将校ということをお聞きしました』

    青年の説明に対し、陰陽師は小さくうなずき、付言する。

    「そのような状況の中、兵士の士気を鼓舞しつつ、戦況を有利に進めると同時に暴走は許さないという、まさに二律背反の難業に取り組むことこそが魂2の真骨頂というわけじゃな」

    『そして、福祉関係の有名人では、たしかナイチンゲールが魂2でしたね』

    ナイチンゲール

    「さよう。彼女の経歴なぞも、第二期の70回代の“大山”(2(7)-2)だからこそ可能な偉業というわけじゃな」

    『なるほど。とてもわかりやすいです』

    「最後は第一期の説明になるが、現世でも、老年期に差しかかった61~80歳の人間の最大公約数的な特徴を三つあげるとすれば、“保守的・幼児帰り・頑固”ということになる。これらの特徴は、残り100回を切った貴族の流れをくむ1-2にもしっかり当てはまり、4-2に犯罪者が多いのと同様、性格的にエキセントリックというか、屈折した人間が多く輩出されている」

    『なるほど』

    「魂2の人々が正反対の顔を有する理由を考えるにあたり、彼らが貴族をルーツに持つということも大きな問題なのじゃろう。何しろ貴族とは、世襲を基本としたステータスである以上、そのすべてが人格者であるとは限らない。それどころか、数々の特権を盾にした彼らの傍若無人な振る舞いの実例は、中世・近代の歴史を振り返るかぎり、枚挙にいとまがない」

    『つまり、特権を人のために活かす貴族もいれば、自分の欲望のために活かして悪事を働く貴族もいたというわけですね。説明を聞くかぎり、魂2の輪廻転生は、現世的に考えても波瀾万丈という言葉が、正にぴったりですね。まるで、別の魂の属性の人物のような印象を受けます』

    「いつも説明しておるように、この世が“修行の場”である以上、そのような魂2の波乱万丈の輪廻転生の一つ一つを捉えて批判的なコメントを加えることは厳に慎むべきじゃが、頭が2の1-2なぞは、一見頭が2の2-4とクロスオーバーする部分が強く、3-2の時代のやさしさ、奥ゆかしさ、慈愛に満ちた雰囲気はどこに行ってしまったのかと思うほどの変貌を遂げしてしまうのも、また事実ではあるんじゃが」

    そんな陰陽師の言葉に対し、青年が一言一言言葉を選ぶように、ゆっくりと口を開いた。

    『つまり、そのあたりが、第一期と第四期の魂2の人物が“不動明王”としての側面を、第二期と第三期の魂2の人物が“観音”としての側面を顕現していることになるわけですね』

    「まあ、そういうことじゃ」

    そう陰陽師は言い、壁時計に目をやる。
    青年も、スマートフォンで現在時刻を確認する。

    『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

    そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

    「気をつけて帰るのじゃぞ」

    陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送る。

    帰路の途中、青年は複雑な心境だった。仮に自分が植松被告と同じ魂の属性だったとして、運良く先生に会えたところで、天命が大量殺人事件を起こすこと、と言われて受け入れられるのだろうか?
    おそらく、自分の天命を果たすためとは言え、他人を手にかけることはできないと思う。今生の自分の天命の内容に感謝し、魂磨きの修行に励もうといっそう強く決意するのであった。

     

     

     

     

    帰宅後、どうしても確認したいことがあり、青年は陰陽師に電話をかけた。

    「どうした、こんな時間に。何かあったかの?」

    『いえ、そうではないのですが、先程鑑定していただいたノルウェー連続テロ事件の犯人、アンネシュ・ブレイビクについて、どうしても気になることが出てきてしまいまして。夜分遅くにすみませんが、ちょっと質問させていただいてもかまいませんでしょうか?』

    「もちろんじゃとも。して、具体的にはどういったことを聞きたいのかの?」

    『彼は、単独犯としては現在世界最大の大量殺人事件を犯していますが、先祖霊の霊障にも天命運にも“5:事故/事件”の相がなかったのに、なぜあのような事件を起こしたのでしょうか?』

    「彼の場合、先祖霊の霊障と天命運に“17:天啓”があること、先祖霊の霊障に“3:精神”の相があること、そしてチャクラの6・7の乱れが要因と考えられる」

    『とおっしゃいますと?』

    「“17:天啓”の相は、天命とは異なる方向に人生を向かわせるよう“天”から何かが頭・心に降りてくるということは覚えておるな?」

    『はい。覚えています。17の相は魂1〜3の人物には“天啓”、魂4の人物には“憑依”となって現れます(例外的に魂1~3にも“憑依”の相が現れることがあります)。霊障のため、人生における判断を誤る結果となってしまう相だったかと。その相が大量殺人事件とどういった関係があるのでしょうか?』

    「そなたは、アンネシュ・ブレイビクが強烈なキリスト教原理主義者じゃったのを知っておるのか?」

    『いいえ、そこまでは』

    「原理主義者がどのようなものかは、ゆっくりと調べてもらうとして、彼が2009年から移民の受け入れを推進していた労働党へテロ事件を起こした根底には、反移民、反イスラーム主義思想があったと思われる」

    『移民の受け入れに反対していたことが動機ということは理解できなくもないですが、テロ活動を実行するまでのことなのでしょうか?』

    苦々しく問う青年に対し、陰陽師のいつもの穏やかな声が電話越しに返ってきた。

    「たしかに、キリスト教とイスラム教は、現在も聖地で争いを続けている。また、彼らが信仰する神が“聖戦”を望んでいると思うかな?」

    『いえ、そうは思いません。地上天国をこの世に実現させることには賛成しかねますが、どちらの宗教も、人民救済が目的であって、他者の命を奪うことは目的ではないはずです』

    「そなたの言う通りじゃ。つまり、彼の場合も、”天啓”の影響で何かが頭・心に降りたことで、彼の意志とは関係なく、本来のキリスト教の教義とも彼の天命ともかけ離れた方向に動いてしまったと考えるべき、とワシは思う」

    『ということは、“3:精神”の相と、第6・7チャクラの乱れが原因で、判断ミスがいっそう大きくなったとは考えられないでしょうか?』

    「彼が4(3)-2(転生回数が30回代)という数奇な人生を歩みやすい時期の魂であることも、あそこまで過激な事件になった原因なのじゃろうな」

    『”タリバン”や”ISS”といったイスラムの過激派じゃありませんが、いずれにしても、宗教の闇の一面を見た気がします』

    そう言い、小さく唸る青年に対し、いつもよりトーンが下がった陰陽師の声が、電話越しに返ってきた。

    「たしかに、宗教にはそういった一面があるのもたしかじゃが、ところが、この問題はイスラム教やキリスト教に限らず、我が国でも見られた現象で、天皇陛下を“現人神(あらひとがみ)”に祭り上げ、“八紘一宇(はっこういちう)”を旗印に先の大戦にのめり込んでいった歴史があることを忘れぬようにの」

    『なるほど。宗教に限らず、何事においても、一つのことに盲信することには様々な危険が隠されているということでしょうか?』

    「うむ。妄信の恐ろしさについて付言しておくと、韓国における新型コロナウイルスの集団感染の原因が、二箇所の(キリスト教系)新興宗教教団であったことも忘れてはならない。また、感染拡大を防ぐためにモスクの閉鎖を敢行したイスラム諸国においては、”このような時こそ神とともに”、”礼拝できないのであれば、コロナによる死を選ぶ”といった過激なスローガンが並んでいたそうじゃが、これなぞも宗教の“偏狭性”を示す典型的な事例なのじゃろう」

    『なるほど。彼らはウイルスが蔓延していても、神が助けてくれると思い込んでみたり、自分の命よりも礼拝する方が大事なのですね。宗教色の強い国ならではの事情のように感じます』

    「そのあたりの話は確かに程度の差はあるのじゃろうが、日本でも五十歩百歩じゃ」

    『とおっしゃいますと?』

    「一例を挙げれば、先日もニュースで神社仏閣の狭い室内で”疫病退散”の神事を行なっている映像を見かけたが、ああいった催し事も、“ご利益”というよりは、集団感染の原因になりかねん危険な行為ということになる」

    『僕もその映像を見ました。あのような形だけの儀式では、コロナウイルスを退散させるどころか、自ら感染しに行っているようなものではないかと』

    「もちろん、こんな時期じゃ。何かにすがりたい気持ちもわからぬではないが、もしこれが“天”の意志であるとすれば、何をしたところで効果は期待できないわけじゃからのう」

    『そうですね。平安時代の末法思想に乗じて浄土教が広まったように、新型コロナウイルスをネタにする新興宗教教団に、人々がお金を収集されないことを願わずにはいられません』

    「そうじゃな。この時期、その手の話をしている人物や宗教団体には特に注意じゃぞ」

    『はい。僕も含め、“天啓”の相によって魂1〜3の人物が暴走しないことと、“憑依”の相がかかっている自称預言者や占い師によって惑わされる人物が一人でも少ないことを願うばかりです』

    「その通りじゃな」

    静かな陰陽師の声が、電話口から流れ込んだ。

    「あとはどうじゃ。まだ他に聞きたいことはあるかの?」

    『いえ、大丈夫です。おかげさまで今回の疑問はすべて解決しました。遅い時間にありがとうございました』

    「どういたしまして。おやすみ」

    その言葉を最後に、電話は切れた。

  • 新千夜一夜物語 第24話:前世の記憶と輪廻転生

    新千夜一夜物語 第24話:前世の記憶と輪廻転生

    青年は思議していた。

    SNSで偶然見かけた、前世の記憶を持つ少年についてである。
    彼が3歳の頃から語る前世の内容は詳細でブレがなく、それを信じた母親がSNSを使って拡散していた。
    前世の記憶は本当にあるのだろうか?
    それとも、なんらかの霊障が関係しているのだろうか?

    一人で考えても埒が開かないと思い、青年は陰陽師を訪ねた。

    『先生、こんばんは。今日は前世の記憶について教えていただけませんか?』

    「前世の記憶とな。また壮大なテーマじゃが、今回はどんなきっかけがあったのかの?」

    青年は前世の記憶を持つ少年と、情報を発信している彼の母親について、陰陽師に説明した。
    陰陽師は、青年の話に耳を傾けながら、鑑定結果を紙に書き記し終わると、口を開いた。

    「話をする前に、以前ワシが説明したこの世とあの世の仕組みについて、もう一度復唱してもらえるかな?」

    陰陽師に問われ、青年は一点を見つめて記憶を辿るようにゆっくりと話しだす。

    『この世は魂磨きのための修行の場であり、どの魂も例外なく400回の輪廻転生を繰り返します。肉体を離れる、すなわちあの世へ無事に帰還した魂はあの世にある魂の本体である”大御霊”の元に戻り、”大御霊”と合体し、この世の時間で換算すると28年間休息します。同時に、今世の振り返りと反省を行ない、次回の魂磨きの計画を立てます』

    陰陽師が黙って首肯するのを確認し、青年は続ける。

    『そのような輪廻転生を400回繰り返したのち、魂は永遠の生命を獲得し、三次元、四次元をコントロールしているセントラルサンの元で各々の役割に応じた任務を果たすという認識をしています』

    「うむ、最近は、なかなかよく勉強しているようで、知識もしっかり体系化されてきたようじゃな」

    青年の回答に満足そうな笑みを浮かべながら、陰陽師は言葉をつづけた。

    「そなたの説明に一つだけつけ足しておくと、魂が肉体を離れる際に、この世に何らかの執着を残し、あの世に戻ることを躊躇していると、あの世に帰りそびれ地縛霊となってしまう。そして、そのような経緯であの世に戻れなくなった魂は、地縛霊となって子孫にかかったり、子孫がいない場合は土地や会社、あるいはそれらに帰属する赤の他人にかかる以外手立てがなくなってしまうことは以前説明した通りじゃ」

    陰陽師の言葉を聞き、青年は黙ってうなずいてみせる。

    「それを踏まえて、鑑定結果をみてもらうと、このような結果になる」

    前世の記憶を持つ少年

    スクリーンショット 2020-03-08 17.13.54

    青年はしばらく鑑定結果を眺めていたが、やがて眉をひそめて口を開いた。

    『前世の記憶を明確に持っているということでしたので、この少年は“霊能力”持ち(±*)かと思っていましたが、ただの“霊媒体質”(−1)なのですね。しかも2−4、転生回数が第二期(201〜300回)の魂4ですから、鑑定結果を見る限り、この少年の妄言という印象が強くなりました』

    結果を知ってからというもの、辛辣な物言いに変わる青年。
    そんな青年を、陰陽師は片手で制してなだめる。

    「ちなみに、そなたは“霊能力”にどんな種類があるか知っておるかな?」

    陰陽師にそう問われ、青年は苦笑いをしながら首を左右に振る。

    「一般的な霊能力(神通力)の分類としては、天眼通力、天耳通力、自他通力、運命通力、宿命通力、漏尽通力という種類があるとされている」

    『一口に霊能力といっても、6種類もあるのですね』

    青年の言葉に陰陽師は首肯して答える。

    「中でも、“宿命通力”とはその人がどういう天命を持って生まれてきたのか、何故こういう運命になったのかという、前世・今世・来世のことがわかる能力のことなのじゃが、仮にこの少年が霊能力を持っているとするなら、これに該当することになる」

    『しかし、鑑定結果から判断する限り、少年は“霊能力”持ちではないと・・・』

    顔をしかめながら言う青年を横目に、陰陽師は続ける。

    「話を進める前に、ほかの霊能力について一通り説明しておくと、“天眼通力”とは、相手が何をしているか、将来はどうなるか、それらを神様が霊眼で見せてくれることを言う。“天耳通力”とは、耳で神の意図がキャッチできたり、心霊と話ができたりする能力のこととなる」

    『人間の視覚と聴覚が進化した印象ですね』

    「ただし、超能力と霊能力の違いは、超能力が人間の五感をさらにパワーアップさせたものであるのに対し、霊能力とは、超能力と一部かぶる部分もあるにはあるが、一般の人間には見えない世界に対応する能力と理解するとわかりやすい」

    『なるほど。たとえば“遠視”が単に遠くが見えることだとすると、“天眼通力”は物質的な世界を超えたものなのですね』

    「端的に言うと、そういうことじゃな」

    青年の言葉に陰陽師は小さく頷いて見せ、続ける。

    「次の“自他通力”とは、読心術のことであり、相手の思っていることがすぐ読めるという能力のことじゃ。“黙って座れば、ピタリとあたる”という易者などが、その典型的な例じゃな。そして、“運命通力”とは、運命を予知する能力で、以前こういうことがあったとか、この先こういう時期にこういうことがあるであろうということがわかる能力のこととなる。簡単に言えば、人間の過去世や未来が見える能力のことじゃな」

    『“12:読心・暴力衝動/諸事に支障(物)”と“13:予知・口撃衝動/諸事に支障(人)”、どうでもいい場面では人の心が読めたり、予知できるものの、大事な場面では外してしまうという霊障と混同されそうな能力ですね』

    青年は眉を潜め、口を挟む。

    「12・13がタヌキやキツネにとり憑かれる状態だとすれば、こちらはそれの正常版というところじゃな」

    対して、陰陽師は小さく笑いながら続ける。

    「そして最後の“漏尽通力”じゃが、これは人の悩み、苦しみ、人生上の様々な問題を(今世の宿題と抵触しない程度に)解決する能力のことで、漏尽とは漏れなく尽くすという意味となり、人間の問題点、苦しみを漏れなく尽くして解決し、幸せに導く能力と言うこともできるじゃろう」

    『なるほど、この六つが俗にいう霊能力(神通力)なのですね』

    青年は陰陽師の説明に小さく頷くと、言葉を続ける。

    『この六つの霊能力の中で、先生の“霊能力”は“漏尽通力”がもっとも近い印象です。救霊はもちろん、Yes/Noで僕たちの質問に答えてくださっていますので』

    「ただし、これらの説明は古来からの“分類”がそうなっているという話をしたまでのことで、ワシら霊能力者の間では、天眼通力、天耳通力、自他通力、漏尽通力の存在を認めるものが多い反面、運命通力、宿命通力の存在については懐疑的な意見を持つ者がかなり多いのが実情となる」

    『とおっしゃいますと?』

    「まあ、そう話の先を急ぐでない。まず、そなたなりの推論を聞かせてもらいながら、おいおいそのあたりについても説明していくとしよう」

    陰陽師はいつもの笑みをたたえながら、青年に先を促す。

    『では話を元に戻しますが、少年は転生回数の十の位が“30回代”ですから、前世の記憶を持って産まれてくるという数奇な運命を抱えて転生してきたと考えることもできると思います』

    自分に言い聞かせるように青年は言葉を止め、再び口を開く。

    『とは言え、天命運の“3:精神”の相、先祖霊の霊障と天命運の“17:憑依”の相、そして、魂の属性が3で霊媒体質が最も強い(-1)という特徴を踏まえると、この少年の場合、霊障の影響が強く出る体質と思われます。つまり、キツネやタヌキといった動物霊が憑依しているのではないのかと』

    青年の言葉を聞き、陰陽師は小さくうなずいてから口を開く。

    「ここまでは、そなたの推理は大筋で当たっておろうと思う。じゃが、今回の一件は母親の魂の属性にも言及する必要があると思うが、そのあたりはどのように考えるかの?」

    今世の母親

    スクリーンショット 2020-03-08 17.26.03

    青年は両者の鑑定結果を見比べながら、口を開く。

    『母親の鑑定結果をみるかぎり、先祖霊と天命運に障害はあるものの、“3:精神”も“17:天啓”といった相がないことから、現実離れした言動をする人物とは考えにくいと思います。また、頭が“1”で基本的気質や基本的性格が7−7という点も考慮しますと、至極真っ当な人物と思われます』

    青年の言葉に対し、小さくうなずいてから陰陽師は口を開く。

    「3(9)―3という魂の属性から判断するかぎり、母親は医師の可能性が高い。また、医師となる人物は、そのほとんどが魂の属性“7”なのだが、この母親の場合はめずらしく魂の属性が“3”なんじゃ」

    陰陽師の言葉を聞き、青年は再び鑑定結果を確認してから口を開く。

    『魂の属性が3ということは、先祖霊の霊障があり、見えない物事に対する理解・関心度が(+1)と高いわけで、前世の記憶といったスピリチュアル的なことにそれ相応の理解があり、そういった領域にも柔軟に対応できるハイブリッドな医師と考えて差しつかえないと思うのですが』

    やや興奮気味に話す青年を片手で制し、陰陽師は説明を再開する。

    「そこまでの断定はできないとしても見えない物事に対する理解・関心があることは間違いないじゃろうから、息子さんの言葉を鵜呑みにしたというか、一定の疑義は持ちつつも最終的には受け入れてしまった可能性は否定できんかもしれんな。さらに言えば、この母親にとって、“親子間の相性”が10点満点中の1点であることから、この少年が親泣かせの子供である可能性もかなり高いと思われる」

    『仮に親御さんが医師であるとするなら、魂の属性7が基本の医学界では、今回のような前世の記憶などの発信をすると、異端視される心配すらありますよね』

    「うむ。患者の足が遠のく以外にも、お子さんの前世の記憶に関する問い合わせが増え、本来の職責とは関係ないところで多忙となる可能性も高くなるじゃろうしな』

    そう言い、陰陽師は湯呑みに注がれた茶を飲み始める。
    青年は顎に手をあてて黙考していたが、やがて顔を上げて口を開いた。

    『ふと思ったのですが』

    「うむ?」

    足元にすり寄ってきた猫をなでながら、陰陽師は青年に先を促す。

    『あの世で今世の出来事を振り返るとしても、新たに転生するにあたりそのような記憶をリセットしてくるわけですから、前世の記憶を持っていることは極めてめずらしいことになりますよね?』

    青年の言葉を聞き、陰陽師はうなずく。青年は陰陽師の意図を察し、続ける。

    『あるいは、この世の宿題、天命を魂が潜在意識で知っているとするなら、この少年が語っている前世の光景は、過去の話ではなく今世の彼の天命、つまり将来起こることを予見しているのでは、とふと思ったのですが』

    「そのあたりは先程の運命通力と宿命通力の話にも関連するのじゃが、未来というものは、地球上にいる80億人以上の人間たちの一瞬一瞬の選択の積み重ねと、地震、津波、気温の急激な変動といった天変地異なぞが複雑に絡み合うことでできていることから、大まかな道筋はついているとしても、確定した未来などというものは存在しないことから、その可能性はまずないと思う」

    『ということは、人が死を迎えるにあたり、その結末は歩んできた道のり次第ということなのですね』

    「さよう。たとえば、3.11のような大災害で亡くなった人々を例にとると、彼らの大多数は、あのような大災害に巻き込まれて命を落とすことを納得した上でこの世に転生してきておる。傍(はた)から見ると志半ばで命を奪われたようにみえたとしても、実際に、地縛霊化する人間なぞほとんどいないのはそのような理由によるのじゃ」

    陰陽師の言葉を聞き、青年は目を見張ってから声色を高くして答える。

    『それはとても興味があるテーマですので、機会をあらためてゆっくりお話を伺いたいと思います』

    青年の言葉に陰陽師は首肯して答える。

    「で、話を戻すと、もう一つの可能性は、この少年が話す前世の記憶が、少年の前世ではなく他の人物の記憶という可能性じゃ」

    『とおっしゃいますと?』

    テーブルに飛び乗ってきた猫の頭をなで、微笑みながら陰陽師は口を開く。

    「地縛霊化した魂にかかる子孫がいない場合、土地や会社、あるいはそれらに帰属する赤の他人にかかることは先ほど説明した通りじゃが、稀に血脈(肉体の先祖)も霊統(魂の先祖)も土地や会社にもかかわりのない関係ない、文字通りの赤の他人にかかることがある」

    『つまり、救霊を願う地縛霊が、偶然縁もゆかりもない少年にかかってしまい、少年の口を介して生前の記憶を語っているというわけですね?』

    「実際、ワシのクライアントの中にも若干名、霊能力がないにもかかわらず、前世の記憶を持つ者がおるのじゃが、特に有名な事件や事故にかかわっている場合なぞ、彼らの語る前世を単なる妄言と済ますわけにはいかぬような歴史的な符号があったりする。しかもそれが当事者しか知りえぬ事象であった場合、深層心理の下にある記憶が何らかの拍子に表面化したものか、あるいは地縛霊など他人の記憶を拾ったものなのか、判別が非常に難しい。この少年の場合も、地縛霊がかかっていることからそのあたりの可能性を一概に否定することはできないと思う」

    『ということは、その地縛霊を祓ってみないかぎり、この少年の話が完全な妄言と断定することはできないと。逆説的な言い方をすれば、少年にかかっている地縛霊を救霊しさえすれば、彼の記憶が深層心理の下にあったものか、どこかの地縛霊の記憶かの判別ができると?』

    青年の言葉に対し、陰陽師は小さく首を振って答える。

    「いや、話はそれほど単純ではないじゃろうな。というのも、少年の魂の属性や先祖霊の霊障と天命運とチャクラの問題等を総合的に勘案するかぎり、彼の話がすべて真実とは言い切れない面があまりにも多すぎる。よって、仮に神事をしたところで、新たに別の地縛霊の話を前世の記憶として話し始めてみたり、ここまで話を大きくしてしまった手前、今更前世の記憶の話が嘘だったともいえんじゃろうしのう」

    青年は再び腕を組んでうなってから、口を開く。

    『ただ、本当に前世の記憶を持っている可能性もある以上、少年の話が真実で、前世と関わりがあった人物と再会し、ハッピーエンドを迎えられれば、ベストであることは間違いありませんよね』

    「ことの真偽はともかくとして、その少年の言うことが真実であるのであれば、その通りじゃろうな」

    『そして、今後もこの少年が今世の母親を惑わせ続けるとしても、子供は親を選んで産まれてくる以上、今回の出来事が、この親子双方にとって魂磨きに必要な縁であることも間違いなのでしょうし』

    「この少年にかかっている地縛霊と我らの間になんらかの縁があるのであれば、いつの日か思いもかけぬ邂逅があるかも知れんしな」

    陰陽師の言葉に対し、青年は大きくうなずいて見せる。そして、時計に目をやり、口を開く。

    「いつの間にか夜も更けたようじゃ。気をつけて帰るのじゃぞ」

    『今日もありがとうございました。これからも勉強を続けます』

    そう言い、席を立って深く頭を下げる青年に対し、陰陽師は微笑みながら片手で別れの挨拶をする。

    帰路の途中、青年はいろんな人物のことを思い出していた。
    過去世が見える人、相手の寿命が見える人、未来が見える人、そのいずれも確たる根拠のない人々ばかりだった。結局、表立って異能をアピールする人の中に本物の霊能力者はほとんどいないのではないか?
    そんなことを思いながら、青年は一歩一歩歩を進めていった。

  • 新千夜一夜物語 第19話:2018年東海道新幹線殺傷事件と魂の属性

    新千夜一夜物語 第19話:2018年東海道新幹線殺傷事件と魂の属性

    青年は思議していた。

    2018年東海道新幹線殺傷事件の結末についてである。
    この事件は、無職ホームレスの男性が、無期懲役になって刑務所で一生を過ごしたいがために、計画的に新幹線の近くの座席に偶然居合わせた人物を襲ったものである。二人が重傷を負い、一人が死亡した。

    判決の結果、望んでいた通りの無期懲役となり、加害者の男性は万歳三唱をした。

    こうした無差別殺人事件はなぜ起こるのか?
    被害者となってしまう人物には、何か共通点があるのだろうか?
    青年は答えを求めるように、陰陽師の元を訪れた。

    ※今回の主な登場人物の鑑定結果
    ①加害者の男性
    頭2、4(7)―4、魂7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に1・2・8・14・17の相。チャクラの乱れなし。
    全体運1、ビジネス運1、金運1、人運1、恋愛運1、健康運9、天啓−、憑依−、大日不可思議9

    ②死亡した被害者の男性
    頭1、3(3)―3武士、魂7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に5・14・17の相。チャクラの乱れ、1・5・6・7。
    全体運1、ビジネス運8、金運8、人運1、恋愛運9、健康運9、天啓−、憑依−、大日不可思議7

    ③窓際の席の隣の女性
    頭2、2(3)―2、魂3(先祖霊の霊障に5・12・13・14・15の相)
    天命運に5・14・17の相。チャクラの乱れ、6・7。
    全体運1、ビジネス運9、金運9、人運1、恋愛運9、健康運9、天啓−、憑依−、大日不可思議7

    ④通路を挟んで反対側に座っていた女性
    頭1、3(3)―3武将、魂3(先祖霊の霊障に5・12・13・14・15の相)天命運に5・14・17の相。チャクラの乱れなし。
    全体運3、ビジネス運9、金運8、人運1、恋愛運9、健康運9、天啓−、憑依−、大日不可思議9

    『先生、こんばんは。今日はまた事件について教えていただけませんか?』

    「もちろん。で、今回はどういった事件かな?」

    青年は事件の顛末について説明した。陰陽師は指を小刻みに動かしながら黙って青年の声に耳を傾ける。

    『事件が起きる背景にはいろんな事情があると思いますが、もしも事前に防ぐことができるなら、せめて関わりがある人々だけでも助けてあげられたらと思うのです』

    陰陽師は紙に鑑定結果を記しながら、口を開く。

    「まず、加害者(※①参照)には先祖霊の霊障もチャクラの乱れもない。つまり、間違いなく加害者の意志で事件は起きたと思われる」

    『霊障による精神疾患がないという意味だと思いますが、だとすると、この事件は起きるべくして起こった事件なのでしょうか?』

    青年の言葉に陰陽師はうなずき、鑑定結果を書きながら答える。

    「今度は被害者3名の共通点じゃが、みな転生回数の十の位が“30回代”であり、天命運に“5:事故/事件(人災・事故・被害者・怪我)”があった。また、全体運が1〜3とかなり低く、人運にいたっては1しかない(9点満点)」

    青年は鑑定結果を食い入るように見つめ、口を開く。

    『不運の条件が重なりに重なり、今回のような数奇な事件に引き合わされたのでしょうね・・・』

    「もちろんそうとも言えるが、話を加害者に戻すと、全体運もビジネス運も金運も1と最低値であり、しかも天命運に“1:金銭”と“2:諸事万般”の相があることから、そもそも今世の彼の人生は自力で生活することそのものが困難だったはずじゃから、被害者の3名と巡り合わなくても、遅かれ早かれ別の形で無差別殺傷事件を起こしていた可能性が高いのじゃろうな」

    陰陽師の言葉に目を見張り、青年は驚きの声をあげる。

    『加害者がホームレスで無職だったことは納得ですが、生活保護を申請したとしても、運気が塞がれていた影響で通らなかったのかもしれませんね』

    「というよりも、彼の選択肢の中では、生活保護よりもこのような形で生きる糧を確保する方が合っていたのじゃろう。いくら魂が4で、転生期間も第4期だったとは言え、“70回台”と“大山”にいるわけじゃからな」

    そんな陰陽師の説明に、青年は暗い表情で顔を伏せ、ため息をつく。

    「ところで、登場人物の属性分析は分析として、今回の事件、そなた自身はどのような印象を持っておるのかの?」

    陰陽師の言葉に青年は顔を上げ、腕を組んでしばらく黙考する。
    励ますような陰陽師の笑みを確認し、やがて青年は重い口を開いた。

    『加害者が無期懲役を望んで今回の事件を起こしたとするなら、それを叶えずに死刑にすることは一理あると思います。昨今の我が国の経済事情を考えると、今回の判決によって、刑務所に入りたいがために犯行に及ぶ新たな人間が現れないとも限らない気がしますので』

    青年の言葉を聞き、続きを促すように陰陽師は黙ってうなずく。

    『もちろん、刑務所での生活が加害者にとって安楽なものでなく、反省し、改心できる環境なのであれば、話は別かもしれません。あるいは、特別に過酷な労働環境に身を置かせることなど、加害者の望みが叶わないような特別な対応ができるのであれば、被害者や遺族の方々も納得しやすいのではないかと思います』

    「たしかに、そなたが考えるように、加害者の甘い希望を打ち砕くというのも一つの解決方法ではあるかもしれんな」

    陰陽師が、小さく頷いた。

    「ところで、ネットでは、この事件にたいしてどのようなコメントが上がっているじゃろう?」

    陰陽師に訊ねかけられ、青年は早速スマートフォンを操作し始める。

    《コメント(1)》
    希望通りの生活は刑務所にはないと思う。
    事の重大さが分からないまま死刑になるよりキツい判決かもしれない。
    そんなに簡単に“ラク”にさせるのも違う気がした。
    生きるのが嫌な人を死刑にするなら、執行は20年後くらいにして欲しい。

    ※頭1、2(3)−3武士、魂の属性7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に8・14の相。チャクラ5・6・7の乱れ。
    全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、憑依−、大日不可思議8

    《コメント(2)》
    普通の神経の持ち主なら、懲役などの刑事罰は受けたくない。
    だが、こう願ったり叶ったりになってしまうのは別の罰を与えられないだろうか。
    無期懲役になったらその先はみんな一緒ではあまりに被害者や遺族が不憫。

    ※頭1、3(4)―3武士、魂の属性7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に8・14・17の相。チャクラ6・7の乱れ。
    全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、憑依−、大日不可思議8

    《コメント(3)》
    犯人を責めるのは簡単だし、犯人はもちろん罪を償わなければならない。
    だが、青年が“犯人にならざるをえなかったこと”が現代の闇かもしれない。

    ※頭1、3(3)―3武士、魂の属性3(先祖霊の霊障に6〜15の相)
    天命運に2・8・14の相。チャクラ2〜7の乱れ。
    全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、憑依−、大日不可思議8

    《コメント(4)》
    どうしてこんな人を税金で養わなければならないのか?
    判例が、前例が、で死刑にできないなら裁判官を辞めてほしい
    判例に基づくならAIに任せればいい

    ※頭2、4(3)―4、魂の属性7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に2・8・14・17の相。チャクラの乱れなし。
    全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運7、天啓−、憑依−、大日不可思議7

    以下、コメント(4)に対して
    《コメント(5)》
    死刑じゃ生温い。もっと税金使って日々拷問して公開してほしい。
    今後の抑止にもなる。

    ※頭2、2(3)―4、魂の属性7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に8・14・17の相。チャクラの乱れなし。
    全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運9、天啓−、憑依−、大日不可思議7

    《コメント(6)》
    判決を出すには理由づけが必要。
    その理由だって裁判官の経験則に基づいたものでなければいけないから、たとえ裁判官本人が死刑にしたかったとしても、前例がなければできないなんてこともある。
    他にもツッコミどころがありますが、司法がそんな簡単に務まる物じゃ無いことは知っておいた方がいい

    ※頭2、2(3)―4、魂の属性7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に14・17の相。チャクラの乱れなし。
    全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、憑依−、大日不可思議8

    青年がコメントを読み上げるのに合わせ、陰陽師は鑑定結果を紙に書き記していく。
    一通り書き終えると、陰陽師は口を開いた。

    「まず、コメント1〜3は魂3で、4〜6は魂4の人間のコメントじゃな」

    『なるほど。前半と後半とで印象が異なるコメントを抜粋しましたが、やはり分かれましたか』

    陰陽師が黙ってうなずくのを確認し、青年は続ける。

    『コメント1〜3は判決の結果に捉われず、この判決結果がおよぼすであろう世間への影響や遺族のことを考え、事件が起きたそもそもの背景に注目していることから、魂3ということに納得しました』

    「また、三人ともが頭が1、というのも特徴的じゃな」

    『コメント4は、問題の論点をすり替えただけで、コメント5は新たな考えを提案しているかと思いきや、結局は死刑に相当するような苦痛を与えたいという感情論に終始している感じがします。コメント6は大局的見地から発言している印象を受けましたが、知識を用いてコメント4に対して上から目線で接したいだけの印象なので、魂4だということに納得です』

    「なるほど。いつの間にか、コメントからそなたなりの見立てができるようになったようじゃな」

    微笑みながらうなずく陰陽師に対し、青年ははにかみながら小さく頭を下げる。

    『全体的に死刑に賛成する声が多かったのですが、判決結果のみに言及していたコメントは魂4だと予想し、抜粋しませんでした』

    「この世の基準、例えば望みが叶うことが幸福、望みが叶わないことが不幸という二極的な視点で考えれば、加害者の望みを叶えない死刑の方が判決として妥当、という声が多いことはある意味当然の帰結じゃろう」

    陰陽師の言葉に青年は黙ってうなずき、続きを待つ。

    「しかしながら、“この世は魂磨きのための修行の場”という前提を踏まえ、生きたまま罪を償いつつ、魂の修行を続けさせることも選択肢の一つとして考えてみてもいいのじゃろうな」

    『死んだことがないのでなんとも言えませんが、この世の時間の流れであれば、死の苦痛は一瞬なのではないかと思います。反省を促すという意味であれば、先生がおっしゃる通り、生きてもらう方が理にかなっている気がします』

    陰陽師は加害者の鑑定結果にラインを引き、口を開く。

    「人間である以上、感情的になって、罪を犯した人間に何らかの罰を与えたいと思うのはもっともなことではあるが、特定の人物に対して恨み辛みを持ち続けることは執着に繋がり、天命から外れる一因にもなりかねん」

    『なるほど。色々と思うことはありますが、加害者に対して長く憎しみの念を抱くよりは、生きられていることに感謝し、天命を全うする努力をする方が幸せなのかもしれませんね』

    力強い眼差しで青年はうなずき、陰陽師は満足そうに微笑む。

    『鑑定結果で“5:事故/事件”の相がある人が今回のような事故・事件に巻き込まれて地縛霊化しないよう、ご縁があった時はよく話してみようと思います』

    青年の言葉を聞き、陰陽師は指を小刻みに動かしてから口を開く。

    「ちなみにじゃが、今回の事件で命を落とした被害者の男性は、無事にあの世に帰還しておるからな」

    意外な回答に、青年は目を見開きながら答える。

    『そうなのですか? 僕はてっきりこの世に未練を残し、地縛霊化しているのかと思っていました』

    青年の反応に対し、陰陽師は小さく笑って答える。

    「臨終の際に未練があるかないかは当人次第じゃ。第三者的に見て、志半ばで命を落としたり、この世をはかなみ自殺したからと言って、地縛霊化しているとは限らんのじゃよ」

    『なるほど・・・』

    「逆に、例えば聖路加国際病院の元院長、日野原重明氏のように、未来日記を何年も先まで書いてやりたいことをたくさん持っていたりすると、それが執着になって地縛霊化してしまうこともある」

    『105歳まで生きたあの医師が! 未来日記を書くとは、生前はずいぶんと前向きな人物だったと思うのですが、そうした人物であっても、死ぬ瞬間にこの世に思いを残していると地縛霊化するのですね・・・』

    「さよう。やりたいことや目標をもつことは大事じゃが、それが執着にならないようにそなたも気をつけるのじゃぞ」

    『はい。僕は神事のおかげでパフォーマンスが100%になっているので、死ぬ時は天命を全うしたのだと思って潔く受け入れます』

    「その意気じゃ。病や事件、戦争などをこの世からなくし、“地上天国”を目指すことこそがこの世の目標と考えている人物は少なくないと思うが、魂の修行という意味では、一見悪と思える所業も特定の人間にとっては必要だったりすることもあるわけじゃしな」

    『必要悪という言葉があるように、この世から病や戦争をなくすことはできないのだと薄々感じていましたが、先生の言葉を聞いてそのあたりのことは納得しました。とは言え、少なくとも僕はそれらに巻き込まれて無意味に命を落としたくないので、神事を受け、“この世とあの世の仕組み”について色々と勉強させていただくことができて、本当によかったと思っています。今であれば、不慮の死に直面したとしても、この世に無用な想いを残さず、心静かにあの世に戻ることができるような気がします。もちろん、その時になってみなければ、実際はわかりませんが』

    そんな青年らしい率直な言葉に、陰陽師はおかしそうに笑いながら、言葉をつけ加えた。

    「出会いは必然じゃとしても、当時のそなたにとっては、文字通り、“清水の舞台から飛び降りるような”英断じゃったな」

    出会った頃の青年の様子を思い出し、陰陽師は体を揺らして笑う。
    青年は過去の自分を振り返り、いろんな感情を噛み締めてゆっくりうなずいて見せる。

    「そろそろ時間のようじゃな。気をつけて帰るのじゃぞ」

    『はい。運気的に事故や事件に遭う可能性は低いとは言え、みずから危険な状況に首を突っ込まないようにします』

    陰陽師は笑いながら片手を上げて挨拶をし、青年は席を立って深々と頭を下げた。

    帰り道、青年は10歳の時に二度死にかけたこと、すんでのところで交通事故に遭いそうになったことを思い出した。もしも自分に“5:事故・事件”の相があったら、そう思うと青年は背筋がゾッとし、今も生きていることに対する感謝へ置換して一歩一歩確かな足取りで歩むのだった。

  • 新千夜一夜物語 第17話:激辛カレー教諭いじめ事件と魂の属性

    新千夜一夜物語 第17話:激辛カレー教諭いじめ事件と魂の属性

    青年は激怒していた。

    神戸市の小学校にて、男性教員(20代)が先輩の教員たち(30〜40代)に羽交い締めにされて激辛カレーを目にこすりつけられたという、教師間にて行われたいじめ事件についてである。

    加害者グループは被害者にとっての先輩教師4人(首謀者の女性1人、男性3人)であり、他にも別の女性教員らにLINEでわいせつなメッセージを無理やり送らせたり、被害者の男性教員の車の上に乗ったり、その車内に飲み物をわざとこぼしたりしたという。

    被害者の男性は兵庫県警に被害届を出しており、今も登校できない状況が続いているとのこと。
    一方、加害者4人は休職処分となった。また、いじめの様子は動画で撮影されており、動画を見た児童の一部が精神的ショックを受けたようで、その児童たちへの心的配慮として給食でのカレーを中止した。

    教員の間でいじめがあるようでは、学校でのいじめ問題が改善するはずがない。
    今回の事件も、何らかの霊障による原因があるのではないかと感じた。そして、陰陽師に今回の事件の要因を確認すべく、出かけるのだった。

    ※今回の主な登場人物の鑑定結果
    ①いじめの中心となった女性教員
    頭2、2(4)−4、魂7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に2・8・14の相。チャクラ1〜7の乱れ
    全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
    憑依−、大日不可思議8

    ②いじめの被害者となった男性教員
    頭1、2(3)−4、魂7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に2・5・8・14の相。チャクラ1〜7の乱れ
    全体運7、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、憑依−、
    大日不可思議8

    ③激辛カレーを食べさせる時に被害者を羽交い締めにした教員
    頭2、2(3)―4、魂7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に2・8・14の相。チャクラ1〜7の乱れ
    全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
    憑依−、大日不可思議8

    ④女性教員を他校から呼び寄せた校長
    頭2、2(3)―3武士、魂7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に2・14の相。第7チャクラの乱れ。
    全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
    憑依−、大日不可思議8

    ⑤いじめの対策を取れなかった現校長
    頭2、2(3)―3武士、魂7(先祖霊の霊障なし)
    天命運に2・8・14の相。チャクラ1〜7の乱れ
    全体運8、ビジネス運7、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
    憑依−、大日不可思議8

    『先生、こんばんは。また2−4でしょうか!』

    部屋に入るなり、開口一番青年は吠えた。

    「いきなりすごい鼻息じゃが、今度は何があったのかの?」

    『失礼しました。今回はいじめ事件について話を聞きにまいりました』

    青年は、深々と謝罪の礼をしたあとで、事件の概要を陰陽師に説明し始めた。

    *教員の名前が未公開のため、人物についてはインターネットから確認できた範囲となります。

    いくつかの質疑応答の後、事件の概要と主要な人間関係を理解した陰陽師は小刻みに指を動かしながら、鑑定結果を書き記していく。

    鑑定結果を見た青年は、驚きの声を上げる。

    『いじめの中心となった女性教員(※①参照)は転生回数の十の位が40回代ですから、運気が“小山”に当たるとはいえ、やはり、2−4ですか』

    鑑定結果のメモ書きを凝視し、青年は続ける。

    『先祖霊の霊障にも天命運にも、5:事故/事件がないのに、今回の加害者となった理由としてどういったことが考えられるでしょう?』

    「まず気性がかなり荒い。また、この女性教員の場合、天命運に2:仕事と14:偶発的人的トラブルの相があることも、事件の引き金の一端になったと思われる」

    『この女教師は、前校長から気に入られてこの小学校に引き抜かれたようですし、生徒からは頼り甲斐のある先生という声もあったことから、性格に二面性があったのかもしれませんね』

    「さらに言うと、この女性教員の場合、チャクラ1〜7全てが乱れておるところからみて(−40%)、他の人間に比べてストレスが溜まりやすく、その結果、ストレスのはけ口として今回のような事件を引き起こした可能性もかなり高いじゃろうな」

    青年はうつむき、少し長めの息を吐く。過去にいじめられていた体験を思い出したのだろうか。

    『ちなみに、被害者の男性教員(※②参照)も同じ2−4の人物ですが、頭が1なので、穏便に事を済ませようとしてあまり抵抗しなかったことも、加害者の教員たちのいじめがエスカレートしていった一因かもしれませんね』

    「もちろん、その可能性もあるじゃろうし、被害者の教員の天命運に“5:事故/事件”があることから、それが原因でターゲットになってしまった可能性も捨てきれんじゃろうな」

    『なるほど。それにしても、他の教員たちが止めようとしなかったことが不思議です。女性教員の取り巻き(※③参照)が頭2で2−4なのでいじめに加担するのはわかりますが、いじめを容認していた、二人の校長(※④、⑤参照)が“3:ビジネスマン”階級なのはどう理解したらよろしいでしょうか』

    「学校を一つの組織と考えれば、校長は企業でいうところのトップじゃ。もちろん2-4が校長になることも皆無とはいえないじゃろうが、腐っても鯛ではないが、魂3の二人が校長の座に上り詰めたことは、それほど驚くことではあるまいて」

    青年は納得顔でうなずき、口を開く。

    『聞くところによると、前校長(※④参照)はあまり仕事をしない人で、職員室で何があっても関係ないという事なかれ主義の人物だったようですから、女性教員が自分の代わりに教員たちを仕切ることをある部分容認していたと考えることもできますよね』

    「前校長のチャクラの乱れは7のみ(−20%)であるところから、一見障害が少ないと考えがちじゃが、実相はその逆で、7ひとつで-20%ということは、乱れのある個所が7であることも含め、1〜7の全てのチャクラが均等に乱れていることよりも問題が大きいということになる」

    『とおっしゃいますと?』

    「−40%の障害を1〜7で単純に割り算すると、一つのチャクラの乱れの平均値は約6%となるが、前校長の場合は7の乱れが単独で20%もあるんじゃ。チャクラ全体の説明は別の機会にするとして、第7チャクラの機能を端的に説明すると、動物的な生き方、つまり生存本能をベースとした生き方から、より本質的な生き方、つまり物欲主導の生き方から高次の使命感(滅私奉公・霊主体従)といった生き方へと向かうという機能を担っておることから、第7チャクラが正常だと、目に見えない世界に関する“真実”をおのずから理解できるようになり、物事を言葉によって理解するというより、直感/感覚・概念として理解する感覚が身についてくるようになる。逆に、このチャクラに異常があると、肝心な時に気力が充実しないことがあり、大局を見誤ることになるわけじゃな」

    『と言うことは、前校長の場合は、大局的な判断を下しにくいことから、結果的に採用してはいけない女性教員を誤って推薦してしまった可能性が高いと・・・』

    「まあ、そういうことじゃ」

    陰陽師は首肯して答える。

    「話を聞く限り、後任の現校長(※⑤参照)も女性教員の暴走を止めることよりも、下手な仲裁をすることによって、その矛先が自分に向けられることを避けたい、そんな思いが心の片隅にはあったのかもしれんな」

    青年は腕を組み、唸り声をあげる。

    「さらに言えば、いじめの首謀者である女性教員を除き、他の四人の教員の転生回数が30回台というのも決して偶然ではあるまい」

    青年はメモ書きを再び覗き込み、口を開く。

    『そう言えばそうですね! 転生回数の期に関わらず、30回代は心身が不安定になりやすく、数奇な運命を歩みやすいというお話でしたよね?』

    「その通りじゃ。今回のような事件に関わることも、数奇な運命の範疇なのじゃろう」

    『いじめという言葉はだいぶ前から出回っていましたが、ここまで目立つ事件は少ない気がします。それと、今回の顛末が、給食のカレーを中止するという見当違いとも思える措置がとられたのも数奇といえるのではないかと』

    青年は苦笑しながら言った。陰陽師も微かに笑みを浮かべてうなずく。

    「ところで、この事件に関し、インターネットではどのようなコメントが出ておるのじゃ?」

    『確認しますね』

    青年はスマートフォンを操作し、コメントを読み上げる。

    《コメント1》
    何を批判されてて
    何が問題になってるのか

    まったく理解できてないんだな・・・

    ※頭1、4(4)―4、魂の属性7
    天命運に2・8・14・17の相。チャクラ5・6の乱れ。
    全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運7、天啓−、
    憑依−、大日不可思議7

    《コメント2》
    そもそも普通ではない激辛カレーを給食なんかに出さないでよ
    子供だって食べられない子いるでしょうに

    ※頭1、2(3)―4、魂の属性3(2・6〜14・17の相)
    天命運に2・8・14・17の相。チャクラ2〜6の乱れ。
    全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
    憑依9、大日不可思議9

    《コメント3》
    期待している対応「教師全員を解雇、刑事事件として告発します」
    実際の対応「カレーやめます」

    ※頭2、2(3)―4、魂の属性3(2・8・12〜15の相)
    天命運に2・8・14・17の相。チャクラ5の乱れ。
    全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運8、天啓−、
    憑依−、大日不可思議9

    《コメント4》
    問題の根本を改善するのではなく
    とりあえず臭いものに蓋をする風土なのですね

    ※頭2、2(3)―3武士、魂の属性3(2〜5、12・17の相。5は一般事故・被害者・怪我)。天命運に2〜5・17の相。チャクラ4〜6の乱れ。
    全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓8、
    憑依−、大日不可思議8

    《コメント5》
    教師になるくらい頭がいい筈なのに何でこんなにバカなの
    もう教師というシステムやめてAIの授業とかでいいのではないか?

    ※頭2、4(3)―4、魂の属性3(8・12・17の相)
    天命運に2・8・17の相。チャクラ5の乱れ。
    全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運7、天啓−、
    憑依9、大日不可思議7

    以下、コメント5に対し
    《コメント6》
    小学校の教員になるようなやつが頭いいわけないだろ

    ※頭2、2(3)―4、魂の属性3(2〜4・6〜14・17の相)
    天命運に2・3・6・8・14・17の相。チャクラ1〜6の乱れ。
    全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運7、天啓−、
    憑依7、大日不可思議8

    《コメント7》
    大学出て教員採用試験受かるくらいの頭持ってる奴が
    高卒程度の地頭しか持ってない奴にどうやって教える事が出来るんですかね
    天才の思考論理は分からないのが当たりまえだが、アホの思考論理も分からないでしょ?
    そもそも大卒しか教員になれないって制度が間違っている

    ※頭2、3(3)−3武士、魂の属性3(2〜4・6〜12・14・17の相)
    天命運に2〜4・8・17の相。チャクラ3〜6の乱れ。
    全体運7、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓−、
    憑依9、大日不可思議9

    《コメント8》
    今の教師なんて高卒に毛が生えたレベルの知能しかない

    ※頭2、2(3)―4、魂の属性3(2・4・8・12〜15の相)
    天命運に4・8・14の相。チャクラの乱れ無し。
    全体運7、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運7、天啓−、
    憑依−、大日不可思議7

    《コメント9》
    教師はバカしかいない

    ※頭2、4(3)―4、魂の属性3(2・3・6〜14・17の相)
    天命運に2・3・6・8の相。チャクラ4・5の乱れ
    全体運5、ビジネス運5、金運5、人運5、恋愛運5、健康運8、天啓−、
    憑依9、大日不可思議7

    《コメント10》
    まあペーパーさえ出来れば大学には入れるし。
    単位さえとって試験に受かれば免許は取れる。
    そんなもんです。

    ※頭2、3(3)―4、魂の属性3(2〜4・6・9・12・17の相)
    天命運に2〜4・6・9・17の相。チャクラ1・5〜7の乱れ。
    全体運3、ビジネス運7、金運7、人運7、恋愛運7、健康運8、天啓−、
    憑依9、大日不可思議7

    《コメント11》
    教師なんてアホ大学の教育学部卒ですよ

    ※頭2、3(3)―3武士、魂3(先祖霊の霊障に4・6・8・9・13・17の相)
    天命運に4・6・8・9・17の相。チャクラ7の乱れ。
    全体運5、ビジネス運8、金運8、人運3、恋愛運7、健康運9、天啓9、
    憑依−、大日不可思議7

    陰陽師は指を小刻みに動かしながらコメントを聞いていたが、やがて指を止めて口を開く。

    「この中で、魂3によるコメントは、4、7、11の三つとなる。それ以外は全て魂4じゃな」

    青年は再びスマートフォンで該当するコメントを見、答える。

    『ということは、半分以上が魂4ですね。ここらあたりにも魂4の参加意識の高さがしっかりでていますね』

    「そうじゃの」

    『しかし、コメント1と2も魂4だったとは。コメントを読む限り、一歩引いた視点な感じがしたのですが』

    陰陽師は再び指を小刻みに動かし、数字を書き足していく。

    「その二人は頭が1なので、他のコメントとは違った印象を受けたのじゃろう」

    青年は納得顔で何度もうなずく。

    『4と7と11は教員の人格や行動というよりも、事件の根本的な問題や原因について触れている印象があります』

    陰陽師はうなずいて賛同の意思を示す。

    『コメント5はもっとも反応が多かったので読み上げましたが、やはり魂4でしたか。内容としては教師というシステムに言及していますが、AIにすればいいという結論が短絡的なのでしょうか? AIに変えたら変えたで起こりうるであろう、新たな問題をまったく想定していないような感じがするのですが』

    「それもそうじゃが、それ以前の問題として、義務教育の中でも、特に小学生は勉学以上に人間教育という側面が重要となる」

    『そのような意味で、AIが授業を行った場合、対AIのスキルは上達するかもしれませんが、対人間とのつき合い方に大きな支障が出るような気が僕もしています。もちろんこれからAIが活躍する領域はますます広くなっていくのでしょうが、そうであっても対人間とのつき合いが基本になることに変わりはないと思います』

    青年は背もたりに寄りかかり、後頭部を両手で支える。

    「そなたの言うように、百歩譲って魂4の児童が2−4の教員から指導を受けるのを是とするとしても、魂1〜3の児童までもが、大局的見地に欠けたものの見方や意見を一方的に押し付けられることは大いに問題じゃろうな」

    『僕が小学生の頃、きちっとした理由づけもなしに“こうと言ったらこうなんだ!”式の意見を押しつけてきたり、すぐ感情的になる教員がいましたが、今考えてみると皆2-4だったのでしょうね』

    「もちろんそれらの教師も皆2-4じゃが、問題は、そのようなやり方が今も教育現場でまかり通っているという現実じゃ。前にも話したように、ワシは月の半分近くを京都で過ごしておるのじゃが、居酒屋などで小学校の教師連中に遭遇することがままある。もちろん京都という特殊な場所柄、そのほとんどが2-4なのはいうまでもないのじゃが、彼らの話に聞くとはなしに耳を傾けていると、果たしてこんな連中に教育の現場を任せておいていいんじゃろうか、そう思わずにはおれない話が聞こえてきたことも一度や二度ではない」

    陰陽師が小さく首を振りながら、小さくため息をついた。

    『ところで原初的な質問なのですが、たとえば戦前も、小学校の教師には2-4が多かったのでしょうか』

    「とんでもない」

    青年の質問に、陰陽師は首を横に振る。

    「戦前の小学校(尋常小学校・高等小学校)の教員は、ほぼ2(4)−3が半分近く、1(7)−1が約4割、残りの1割が2−4か2−2という比率じゃった」

    『え、そうなのですか?!』

    陰陽師の意外な回答に、青年は目を大きく見開く。

    『ということは、現代と構成比率が全く異なっているのですね』

    「その通りじゃ」

    『しかし、敗戦によって、小学校の教育の場に何が起こったのでしょう?』

    「原因は、大きく三つにわけられる。その一つは、敗戦より、焦土と化した我が国の復興のため、魂1~3の優秀な人材の多くが“教育よりも経済復興を選んだこと”じゃ。その結果が昭和40年代以降の奇跡の経済復興へとつながってはいくものの、戦後の多くの優秀な人材が、たとえ経済行為に直接従事しないとしても、大学や各種の研究機関などへ流れてしまい、初等教育に関心を持つ者が、極端に減ってしまったという問題じゃ」

    『なるほど』

    陰陽師の説明に、青年は大きく頷く。

    「そして、二つ目には、“教育の変質”という問題じゃ」

    『教育の変質ですか?』

    「たとえば、日教組が“教師は労働者”という考え方を打ち出したことで、教育に対する教師の情熱が大きくそがれてしまった。また、国旗・国歌の問題に代表されるように、教育に政治を持ち込み教育の質も低下してしまったという問題も存在する」

    『しかし、今でも情熱をもって生徒を指導している教師は相当数いると思いますが・・・』

    「もちろん、それはそうなのじゃが、戦前の教育現場では、“教師は労働者“なぞという考え方をする教師は、まずいなかった。逆に、戦前の教師とは、教育を”聖職“と考える人格的に優れた人たちによって構成されていた」

    『そのあたりが、2(4)−3が半分近く、1(7)−1が約4割という比率に現れているわけですね』

    「そのとおりじゃ」

    青年の言葉に小さく頷くと、陰陽師は話を続ける。

    「そもそも戦前の小学校教師は、“師範学校”という今でいう教育大学出身者が基本となっていた。教師を養成するために作られた官立の学校であった師範学校は、東京に設置された日本初の教員養成機関(後の東京高等師範学校、学芸大学、東京教育大学を経て現在の筑波大学)の固有名称であったし、かつての京都師範学校は戦後、京都学芸大学を経て、今の京都教育大学になっておるといった具合にな」

    『なるほど』

    「ともかく、戦前の師範学校は学ぶことすべてが教職課程だったわけじゃから、教師になっても、そもそもの心構えが今とまったく違う。また、戦前は、士官学校同様、学費が一切かからず、さらには些少ながら給料も出たので、教師になるということは、優秀であるが貧しくて上の学校に行けない人間たちにとって、人生の大きな選択肢の一つだったわけじゃ。さらに言えば、師範学校そのものへの入学もなかなか難しく、入学選考では人柄や学力のみならず、変な顔をしていたり体臭が強いというだけで、教師には不向きと判断され、不合格になったなどという笑い話のような話さえ残っているくらいなんじゃ」

    『なるほど、そこまでしないと師範学校に入れないということでしたら、自然と自覚がつきそうですね』

    青年の言葉に、小さく頷きながら、陰陽師は言葉を続ける。

    「教育という職責の意味を嫌というほど叩き込まれたそんな師範学校出身の教師たちは、高級官僚や大企業の幹部などになった帝大出身者の超エリートを尻目に、明日の日本を背負って立つ人材を育てることに強烈なプライドを持っていたわけじゃ」

    『つまり、戦前の先生というのは、現在僕たちが教師に持っているイメージと全然違う存在だったのですね』

    陰陽師の説明に、青年は納得顔で大きく頷く。

    「その通りじゃ。今説明してきたような経緯から、戦前の教師は教育に対するスタンスが今の教師とは決定的に違っていた。勢い、教育を受ける生徒自身や保護者との間でも、全面的な信頼関係が成立していたわけじゃな」

    『できることであれば、僕も戦前の教育を受けてみたかったです』

    青年は感嘆の息を漏らし、答えた。

    「それは、かく言うワシも同感じゃな」

    青年の言葉に、陰陽師が小さく頷いた。

    「ただしじゃ、戦前の教育にも問題がなかったわけでもない」

    「といいますと?」

    「教員の絶対数不足という問題じゃ」

    『え。そうなのですか?』

    「これまで説明してきたように、師範学校を卒業し、“訓導“(今でいう教諭)の資格を得た人間が教員になっていたわけじゃ、特に小学校(尋常小学校・国民学校)では人材不足が深刻じゃった。そのため、それを補うために、”代用教員“という制度を作り、師範学校にも行けず、普通教員資格もない人間たちが、旧制中学・旧制高等女学校卒業程度の学歴で小学校教師として任用されていたこともめずらしいことではなかったのじゃ」

    『では、戦前の教師の中には、厳密に言うと、無免許の教師が存在していたと』

    「平たく言うと、まあ、そうなるわけじゃな」

    『しかし』

    青年は、腕組みをしながら、言葉を続けた。

    『そんな教師が一定数いたのに、何故、戦前の教師のレベルは高かったといえるのでしょう』

    「そこが、先ほどから話している属性の妙なのじゃよ」

    『つまり、戦前の小学校教師は、2(4)−3と1(7)−1で占められていたというあれですね』

    「そのとおりじゃ。実際、代用教員経験者の中には後の著名人も非常に多く含まれていて、一例を挙げるとすれば、詩人の石川啄木、作家の坂口安吾、田山花袋、三浦綾子、化学者の野口英世や漫画家の馬場のぼるなど、枚挙にいとまがない。ちなみに、2006年(平成18年)度上半期のNHK朝の連続ドラマ“純情きらり”ヒロインの宮崎あおい演じた桜子も代用教員じゃったわけじゃ」

    陰陽師の説明に、目を見張りながら耳を傾けていた青年。その顔を横目で見ながら、陰陽師は話を続けた。

    「そして最後の問題が、今までの話を受けた“小学校教師に要求される能力とそのステータスの問題”となる。まず、戦後の小学校教師は、個々のレベルはそれほど高くないとしても、全教科を教えられるオールマイティーさを要求される。そこには、学科だけではなく、体育や音楽まで入っているわけじゃから、ほんと大変じゃ。さらに教育学部に通うことが基本的に要求される。今でこそ、私立の教育学部や通信教育といった選択肢も広がってきたものの、誰でもが簡単にクリアーできるハードルではない」

    『そのあたりは、学業に秀でた2-4の真骨頂ということになりますね』

    「さらにステータスという面からみても、身分、処遇面からみても、突出こそしていないが2-4のプライドを大いに満足させる職業であることは間違いない」

    『さらに、中高生よりコントロールしやすい小学生に、上から目線で過ごせてプライドも満たされ、給料も社会的地位も安定しているわけですからね』

    青年は納得顔でうなずいた後、顔を上げて続ける。

    『今までの話をお聞きしていて、ふと気になったのですが、ヤンキー上がりの教師というのは魂1〜4でいうとどこに該当するのでしょうか?』

    「というと、一般論ではなく、誰か特定の教師に心当たりはあるのかの?」

    青年は腕を組んで沈黙する。陰陽師は小さく笑いながら、青年に先を促す。

    「もちろん、実在の人物でなく、たとえば、小説や漫画のキャラクターでも構わんぞ」

    『実は』

    陰陽師に励まされ、やがて青年は口を開いた。

    『GTOというヤンキー上がりの教師が主人公の漫画があるのですが、彼を取り巻く人物が、どんな属性の人間たちなのか少々気にかかっていたのです』

    「あいわかった。それで、主な登場人物の名前と特徴は?」

    そう陰陽師に促され、青年はキャラクター名と各々の特徴を伝える。陰陽師はしばらく指を小刻みに動かした後、口を開く。

    「鬼塚英吉(主人公)は
    頭が1で、2(4)−3武士、魂の属性3(1)―7(3)、
    先祖霊の霊障に2・6〜15の相があり、天命運に2・8・14の相がある。
    全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓-、憑依-

    冬月あずさ(ヒロイン)は
    頭が1で、2(4)−3武士、魂の属性3(1)―7(3)、
    先祖霊の霊障に12〜14・17の相があり、天命運に8・14の相がある。
    全体運8、ビジネス運9、金運9、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓9、
    憑依-、

    内山田ひろし(教頭)は
    頭が2で、2(3)−4、魂の属性7(1)―7(3)、
    先祖霊の霊障がなく、天命運に8・14の相がある。
    全体運8、ビジネス運8、金運8、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓-、憑依-

    桜井良子(理事長)は
    頭が1で、2(7)−3(1)武将、魂の属性7(1)―7(1)、
    先祖霊の霊障がなく、天命運に8・14の相がある。
    全体運9、ビジネス運9、金運9、人運8、恋愛運8、健康運8、天啓-、憑依-」

    青年は鑑定結果をまじまじと眺めてから口を開く。

    『やはり、主人公とヒロインは、“3:ビジネスマン”階級でしたか。しかも、転生回数が240回の“小山”ですから、戦前の各小学校の教師の5割に属しているわけですね』

    「主人公の鬼塚英吉に関して言うと、ヤンキー上がりといっても前の作品では暴走族のトップをしておったとの話から、世間一般のヤンキー上がりの教員として一括りにするのは少々問題があるじゃろうな」

    『とおっしゃいますと?』

    「ヤンキーの下っ端としてパシリにされていた2−4の人物が、喧嘩では芽が出ずに勉学に励んだ結果、私立大学の教育学部あたりに合格して教員免許を取得し、箔をつけたいがためにヤンキー上がりの教師と自称する人物も中にはおるじゃろうからな」

    『その場合、生徒たちに、この先生を怒らせたら怖いという印象を与え、2−4お得意の感情任せ、上から目線の教育が行われるのですね。そして』

    青年はため息混じりにつぶやく。

    『教頭の内山田ひろしはやはり、2−4でしたか。彼はよく感情に振り回されていますし、愛車が何度も大破するのは転生回数の十の位が30回台の数奇な運命が反映されているのかもしれませんね』

    「それなりに勉強の成果が出ているようじゃの」

    青年の言葉に一つ頷いた後で、陰陽師は話を続けた。

    「それ故、人情味や理屈、道理でもって生徒を更生させられる主人公の鬼塚英吉のような教師は、まず2(4)−3武士や1(7)―1と考えても差し支えないじゃろうな」

    『確かに、鬼塚は解決策の一つとして暴力を使うことはあっても、生徒に暴力を振るったり、権力にものを言わせて生徒を従わせるようなことはしていませんでした。漫画のキャラクターにもその辺りが反映されているのですね』

    青年は何度もうなずきながら続ける。

    『鬼塚に先祖霊の霊障と天命運の両方で“2:仕事”の相があるのも興味深いです。本来であれば、もっと大きな舞台で活躍するチャンスがあるのに、物語を面白くするために場違いな分野の職に就いているというのですから』

    青年は笑いながら言い、陰陽師も微笑みながらうなずく。

    『ヒロインの冬月あずさは、根は真面目ですので教師は適職だとして、たまに暴走することがあるのは先祖霊の霊障“17:天啓”によるものではないかと。同様に、先祖霊と天命運の両方に“8:異性”の相があることから、恋人がいない設定なのもうなずけます』

    「また、理事長の細かいキャラクターは存ぜぬが、主人公の才能を見抜くという意味では武将としての才をいかんなく発揮しておるようじゃの」

    『理事長は1−1かと思いましたが、武将タイプだったのですね。しかも、転生回数が270回で“大山”の』

    「ちなみに、舞台はどんな学校なのじゃ、公立の学校なのか、それとも私立なのかな?」

    陰陽師の言葉に、青年はハッと息を飲み、答える。

    『そう言えば、舞台は学校法人ということで私立ですから、経営的な手腕も必要なことから、理事長が武将タイプという設定だと考えて差し支えないのですね』

    陰陽師は首肯して答える。

    『先祖霊の霊障もなく親近性も7(1)ということから、主義主張や経営にも適しているということで、理事長の座にまで上り詰めたという設定になっておるのじゃろう」

    『なるほど。それにしても』

    青年は腕を組んでから続ける。

    『小学校の教員が2−4ばかりになってしまうと、日本の将来が心配になってしまいますが、どうにかできないものなのでしょうか?』

    「とにもかくにも、魂1~3の教員を増やすことじゃ。根本的な解決策は、その一点にかかっているといっても過言ではあるまい」

    『これから日本を背負って立つ若い魂3世代にとって、今をときめくIT系企業の社員や公務員になる方が魅力的なのでしょうが、国の将来を考えるかぎり、小学校の教員を目指すことも重要だというわけですね』

    「そのとおりじゃ」

    大きく頷く陰陽師を見ながら、僕が2(4)で小学校の教員に適正があったら、と青年は小さくつぶやく。そんな青年の気持ちを察し、陰陽師が機先を制した。

    「気持ちはわかるが、そなたはそなたのやるべき道があることを忘れてはならんぞ」

    『そうでした。僕の使命は天命を歩む人物を増やし、その結果小学校の教員に適した人物を側面的に応援することでした』

    我に帰り、そう答える青年の言葉に、陰陽師は満足そうにうなずく。青年はスマホの画面を確認して口を開く。

    『ちょうどいい時間のようですね。本日も貴重なお話をありがとうございました』

    「どういたしまして。気をつけて帰るのじゃぞ」

    青年は席を立ち、深々と頭を下げる。陰陽師はいつもの笑みで応えるのだった。

    帰路の途中、青年は学生時代のことを思い返していた。教員たちの顔と言動を思い返し、どの教員がどの魂なのかの仮説を立てる。
    そして、これからは教員の採用に携わる人々との縁を増やしていこうと思うのだった。

  • 新千夜一夜物語 第14話:家出少女と誘拐犯

    青年は思い悩んでいた。

    先日ニュースで報道されていた、“埼玉女子中学生誘拐事件”についてである。

    誘拐事件の容疑者である男性は不動産業に従事しており、“家出したい”とツイッターで発信していた女子中学生二人を呼び、彼が管理していた埼玉県にある借家に住まわせていたという。

    二人はそれぞれ個室を与えられ、外出は自由。食事は一日三回、入浴や携帯電話の使用も制限されていなかった。また、兵庫県の中学生は親に安否を知らせる手紙を出していたという。

    養ってもらうための唯一と思われる条件が“勉強すること”で、容疑者は女子中学生二人に学校の科目のほかに不動産業の勉強をさせており、保護された時は勉強中だったとのこと。

    青年にはどうしても容疑者の男性が悪人とは思えなかったため、今回の事件の要因を知るべく、陰陽師の元を訪ねるのであった。

    『先生、こんばんは。今日は魂の属性の観点から事件について教えていただきたいです』

    「今度は事件についてとな。そなたもいろんなことに関心を持つようになったようじゃの」

    『霊障の影響や魂について学んだことで、いろんなことに興味を持つようになりました』

    青年は大きく頷いて答えた。

    「ちなみに、どんな事件かの?」

    青年はウェブで確認した事件の概要を話した。陰陽師は時折、指を小刻みに震わせて話を聞いていた。

    『家出したいと発信することはあっても、実際に家出するのはなかなか勇気がいることだと思います。女子中学生の一人は兵庫県から埼玉県へと、かなり遠方から来ていたようですし。これは誘拐というより、女子中学生たちが自分の意思で容疑者の元へ行ったわけであって、それくらい嫌なことが家庭で起きていたのではないかと思います』

    珍しく饒舌な青年。長所である“一見不可思議な正義感”が表れているのだろうか。

    「話を聞きながら鑑定をしておったのじゃが、
    容疑者の男性は頭が1、2(3)―2、魂の属性7(1―1)―7(1)、
    先祖霊の霊障はなく、魂の属性や親近性からも、世間で言う犯罪者タイプではないようじゃな」

    青年は目を見張って口を開く。

    *2(3)−2・・・転生回数が230台の魂2。
    *魂の属性3は霊媒体質、7は唯物論者。
    *7(1)の人物は主義・主張をするが、裏表がない。

    『鑑定してくださってありがとうございます。容疑者の男性は、頭が1で、“2:制服組(軍人・福祉)”階級ですか。魂2ということは、身寄りがなく自活能力に乏しい女子中学生を支援したという意味で、福祉方面での役割(第4話参照)が発揮されたのでしょうか?』

    「そういった捉え方も一理あるの」

    『先祖霊の霊障がないとしても今回のような事件になる以上、何か他の要因が考えられないでしょうか?』

    陰陽師は紙に新たな数字を書きながら、説明を再開する。

    「まず、この男性は輪廻転生が230回台であることから、そもそも数奇な運命をたどる可能性は極めて高いということがいえるじゃろうな」

    『なるほど』

    「あと考えられるのは、この容疑者の場合、天命運に2、5、17の相が色濃く出ておるな」

    『なるほど、天命運の方でしたか。ちなみに、天命運の数字は先祖霊の霊障の種類(第2話参照)と同じなのでしょうか?』

    陰陽師は首肯して答える。青年は慌てて霊障の種類が書かれた紙を取り出した。

    『2は仕事で、5が事故/事件、17は天啓/憑依ですね。容疑者の男性は魂2なので、17は天啓ということで合っていますか?』

    「その通りじゃ。勉強の成果が出ておるな」

    青年は調子に乗ったのか、表情を輝かせながら解説を始める。

    『これらの相から察するに、容疑者の奉仕精神が17の天啓によって現在の日本の法律では違法行為となる形で表れてしまい、事件となってしまった。しかも、仕事運が塞がれていることから、女子中学生二人を養えるほどの経済的余裕があるくらいに仕事が順調だったものの、今回の事件で仕事も失われてしまったのではないかと』

    「5:事故/事件の相の影響で、今回の事件を引き起こす方向へ人生がズレてしまったとは言えるかもしれんが、そのほかはこじつけと言わないまでも、かなり我田引水というか、牽強付会な解釈のようじゃな」

    大きく肩を落とす青年。その様子を見て、陰陽師は体を揺らして笑う。

    『まだまだです・・・。とは言え、僕個人の見解として、容疑者は純粋な悪人とは思えないのです。“将来、仕事を手伝わせるためだった”という個人的な願望によって養うことを条件に勉強させていたようですが、見方によっては学業だけでなく将来のことも視野に入れて女子中学生の面倒を見ていたと言えなくもないかと』

    「容疑者本人に実際に悪意があったかどうかは断言できぬが、この事件を容疑者を中心にみるかぎり、天命運の障害によって引き起こされた可能性は高いじゃろうな」

    青年は真剣な表情でうなずく。陰陽師は再び指を小刻みに動かし、紙に数字を書いていく。

    「ちなみに、兵庫県の女子中学生は、
    頭1、3(9)―3(武士)、魂の属性7(1−1)−7(1)で、
    先祖霊の霊障はなく、天命運に2、6、14、17の相が出ておる。

    一方、さいたま市の女子中学生は、
    頭1、2(4)ー3(武士)、魂の属性7(1−1)―7(1)で、
    先祖霊の霊障はなく、天命運に6、14、17の相が出ておる」

    『6は家庭の相でしたね。たしか、複雑な家庭環境で育つ、親と折り合いが悪い、あるいは自分が親となって家庭を持った時に複雑な家庭環境となってしまったり、子供との折り合いが悪くなる、そうでしたね』

    「そのとおりじゃ」

    『二人とも5の事故/事件の相がないのに今回の事件が起きてしまったということは、6の家庭の方に家出の原因があったのでしょうか?』

    「その前に二人の両親も鑑定しておくとしよう」

    『よろしくお願いします』

    事件の加害者と被害者の話かと思いきや、家族関係の話へ展開していく。
    霊障や天命運による因果関係というのは、当事者たちだけではなく、その家族まで関係してくるから、実に複雑怪奇な様相を呈する場合が多いようだった。

    「まずは兵庫県の女子中学生の両親じゃが、
    父親は、頭1、3(9)―3(武士)、魂の属性7(1−1)−7(1)で、
    先祖霊の霊障はないが、天命運に6、8、14、17の相が出ておる。

    母親は、頭2、2(3)−4、魂の属性3(1−3)―7(3)で、
    先祖霊の霊障に6〜15が、天命運に2、6、8、14、17が出ておる」

    青年は陰陽師のメモ書きを食い入るように見つめる。

    「今度はさいたま市の女子中学生の両親じゃが、
    父親は、頭1、2(4)−3(武士)、魂の属性7(1−1)―7(1)で、
    先祖霊の霊障はなく、天命運の障害は8、14、17の相が出ておる。

    母親は、頭1、2(3)−4、魂の属性7(1−7)―7(1)で、
    先祖霊の霊障はないが、天命運の障害に2、6、8、14、17の相が出ておる」

    『魂の階級や属性を見るに、どちらも父親の霊統を受け継いでいますね。そして、母親がともに2−4だと・・・』

    「そのとおりじゃな」

    『二人の中学生の母親がともに2−4ということは、娘さんに対して日ごろから上から目線で接していたり、理不尽な理由で感情をぶつけることが少なくなかったのではないかと思います。世間でよく言う、教育ママ系なのかもしれませんし』

    一呼吸置いてから、青年は続ける。

    『また、娘さんたちは“3:ビジネスマン”階級であるから、母親の感情的な対応に納得がいかないことがあったでしょうし、とは言え親子ですから従わなければならず、不満はたまっていく一方だったのではないかと』

    陰陽師は魂の属性の数字に丸を描き、強調する。

    「もちろん、2-3と2-4なわけじゃから本質的なところでお互いを理解し合うのは難しいという問題を捨象したとしても、双方の母親の天命運に家庭不和の相が色濃く出ているわけじゃし、兵庫県の家族にいたっては母親が先祖霊の霊障でヒステリックになりやすい傾向があるのに加え、天から何かが降りてきて、狐憑きのような状態に陥ることもあったようじゃから、唯物論者である娘さんとしては、そんな母親を理解できず、衝突を繰り返していたことは想像に難くない」

    青年は軽くのけぞり、顔を引きつらせる。

    『魂の属性3と7の価値観の合わないところが家族間で生じると大変そうですね・・・』

    「霊統が同じである父親は娘さんたちに対し、ある程度の理解を示していたのかもしれんが、家庭というのはどうしても母親の影響力が強くなりがちという事情もあわせて考えると、母娘間のミゾが問題を大きくしたのじゃろうな」

    『さいたま市のご家庭の方は、両親と共に頭が1で転生回数も2期と共通する部分がいくらかあると思いますが、兵庫県のご家庭の方は、母親の頭の1/2が異なりますし、娘さんの転生回数が3期で、“3:ビジネスマン”階級の大山(第10話参照)である3(9)なわけですから、勢いがある分、ガラ携並みの魂しか持たない母親から見たら理解不能なことが多いのかも知れませんね・・・』

    陰陽師はゆっくり首を縦に振り、青年は神妙な表情で何度もうなずく。

    『こうした両家の複雑な家庭の事情があったために二人の女子中学生たちは家出へと気持ちが大きく傾いていたところへ、天命運の障害に5:事故/事件の相がある容疑者と知り合ったために、家出を決意してしまい、今回の事件が起きたのでしょうか?』

    「その可能性は大いにあるじゃろうな。ところで」

    陰陽師はグラスに注がれた水を飲み、続ける。

    「先日、インターネットのコメントは“4:ブルーカラー”階級が多勢を占めていると伝えたが、この事件に関するコメントはわかるかの?」

    『掲示板を見ればわかります!』

    青年はスマートフォンを操作し始め、しばらくして口を開いた。

    『代表的なコメントを読み上げますね』

    《コメント1》
    自分の管理物件の空部屋に住まわせていたのか
    衣食住与えて勉強までできる環境で手も出してないんだろ?
    だとしたら人格者じゃねえか

    《コメント2》
    児童相談所よりよほどいい仕事してるじゃん

    《コメント3》
    この犯人を擁護してる人等の頭は大丈夫かね

    《コメント4》
    (コメント3に対し)
    そこらへん毒にも薬にもならない凡人よりはるかに徳が高いだろ

    《コメント5》
    足長おじさんも許されない世の中

    《コメント6》
    NPO設立して児相と一緒にやれば合法
    個人でやれば対象が未成年なら当然違法

    《コメント7》
    >2人は保護された際、勉強中だった。
    www

    青年がそれぞれのコメントを読み上げる中、陰陽師は指を小刻みに動かして鑑定している。

    「コメントの1から4は“魂4:ブルーカラー”階級で、5から7は“魂3:ビジネスマン”階級じゃな」

    『適当に抜粋しましたが、やはり魂4の方が多いのですね』

    「1から4は事件や人物といった小さい枠にフォーカスしておる。しかも上から目線で感覚的な評価に終始している感じがするじゃろう」

    青年はコメントを見返し、無言で頷く。

    「一方、5と6は事件や人物を踏まえた上で合法や違法など社会の仕組みについて触れており、何が原因でどうすればよいのかといった点まで考えたうえでコメントしておる」

    『気に入る、気に食わないといった感情論でものを言うのは自由ですが、それだけでは物事の改善に繋がりにくいでしょうし、建設的とは言い難いと思います』

    青年は背もたてに寄りかかり、腕を組む。

    『コメント7は魂4かと思ったのですが、そうでもないのですね』

    「このコメントを一読する限り、一見魂4のコメントと思うじゃろうが、よく読んでみると、本当に従来の誘拐事件なのかという問題提起をしつつ、そのズレを面白おかしく捉えている。これなどはどちらかいうと魂3の発想なのじゃな」

    『なるほど。コメントだけ見ると短絡的な印象ですが、引用元とセットで考えるとわかります。ただ』

    青年は眉間にシワを寄せながら言う。

    『コメントの数を見ると半分より少し魂4が多い程度ですので、意外と魂3も発信していませんか?』

    「それは抜粋したそなたが魂3じゃから、魂3のコメントに反応しやすかったのじゃろう」

    『なるほど。適当になんとなく気になったコメントを読み上げただけなので、そうかもしれません』

    「仮に初期段階で魂3と魂4のコメント数がきっこうしていたとしても、賛同されるコメントの数と引用コメントがつきやすいのは、そのコメントを読む人数から考えてもみても魂4が発信したものなのじゃから、結果、魂4の声がネットで目立ち、世論の主流となりやすいという結果になるのじゃよ」

    『魂3は魂3が発信したコメントに同意したとしても、あえてコメント欄で賛同の意を示さない印象です。僕だけかもしれませんが・・・』

    「今回のコメントの抜粋はひとつの例に過ぎんが、発信されるコメント数とどんな内容がコメントの中で語られているかを観察する重要さを少しは認識できたじゃろう?」

    陰陽師は微笑みながら言い、青年は背筋を伸ばして答える。

    『はい。これからは世間で起きる様々な事象について、登場人物やことの善悪といった表層的な問題だけでなく、その背景となる人間模様や、当人たちの属性や霊障の有無なども視野にいれて考察していこうと思います』

    陰陽師は時刻を確認し、口を開く。

    「ちょうどいい時間じゃな。今日はここまでにしようかの」

    『今日もありがとうございます。また気になる事件や出来事があったらご教授ください』

    「あいわかった。気をつけて帰るのじゃぞ」

    青年は席を立ち、深く頭を下げる。陰陽師は優しい笑みをたたえながら青年を見送った。

  • 霊障とは②

    霊障とは②

    先祖霊と地縛霊

    先祖霊とは、人が死を迎えるにあたり、何らかの理由で”この世”に思いを残したために”あの世”に戻り損ね、父方母方の先祖が子孫にかかる霊を意味する。

    先祖霊が子孫にかかる理由はただ一つ、あの世に戻りたいとの思いだけである。

    なお、かかられた人間がその願いに応えられないでいると、17に分類される”霊障”が顕在化してしまう。

    また、”先祖霊の霊障”は、誕生時に顕在化している人間と、後天的に顕在化するケースに分かれる。

     

     

    先祖霊の種類

    先祖霊の霊障は、脈、脈、統、統の4つに分けられる。

    脈”の先祖霊とは、魂の種類1〜4に関わらず、本人と魂の種類が同じ、地縛霊化した先祖のことである。

    脈”の先祖霊とは、本人と魂の種類が異なる地縛霊化した先祖のことである。

    脈”の先祖霊が、魂の属性3:霊媒体質の子孫にしかかからないのに対し、脈”の先祖霊は、魂の属性3だけでなく、魂の属性7:唯物論者にもかかる。

     

    統”と“統”の先祖霊とは、先祖が子孫にかかっていてもいなくても地縛霊化している先祖霊のことを意味し、“統”は本人と同じ種類の魂、“統”は本人と異なる魂の種類であることを意味する。

    ”先祖霊”は特殊なケースを除き、新生児にしかかからないため、”あの世へ戻る”という願いを叶えられないうちにかかっていた子孫が死んでしまった”先祖霊”は”地縛霊≒浮遊霊”となる。

    統”と”統”の先祖霊は、子孫にかかっていないことから、いわば”地縛霊≒浮遊霊”であり、新たな孫/ひ孫の誕生を待ってその子孫にかかり直すことになる。

     

     

    地縛霊

    子孫が途絶えるなどして、かかるべき子孫がいない”先祖霊”は”地縛霊”となり、基本的に、死んだ場所の付近を徘徊している。

    ”地縛霊”の居場所として、事故現場、古戦場、病院、墓地等、様々であり、建物/法人にかかることもある。

    ”地縛霊”の願いも同様に、”あの世に戻りたい”との思いであり、”地縛霊”がかかっている土地に縁がある人間が、その願いに応えないでいると、17に分類される”霊障”が顕在化してしまう。

     

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  • 霊障とは①

    霊障の分類

    霊障には以下の種類があります。

    ・先祖霊(魂の種類1〜4):霊脈、血脈、霊統、血統

    ・地縛霊(魂の種類1〜4):かかる子孫が途絶えた魂

    ・土地/建物/法人の霊障(地縛霊)

    ・グッズの霊障

    ・念(呪い、生き霊、邪神など)

    ※以下、眷属や動物霊など

    ・龍神

    ・龍霊

    ・稲荷

    ・狐霊

    ・熊手/狸霊

    ・雑霊/魑魅魍魎:動物霊/天狗・座敷童・麒麟(似非神様)

    地縛霊に対する救霊神事は一度で十分ですが、霊媒体質である人物は、生きている限り念や雑霊/魑魅魍魎を拾ってしまうため、日々のお祓いが必要となります。