新千夜一夜物語 第26話:芸能界から排除されそうなプロデューサー

青年は思議していた。

スポーツ・芸能・芸術の世界において天から排除命令が出るとして、スカウトマンやプロデューサーと出会わなければ、排除命令によって過去にこの世を去った偉人たちは、別の職業で長生きできたかもしれない。

彼ら/彼女らの人生を大きく狂わせたと言っても過言ではない、スカウトマンやプロデューサーたちにも、排除命令の余波のような影響が当然あってもおかしくないのではないか。

一人で考えても埒が開かないと思い、青年は陰陽師の元を訪ねた。

『先生、こんばんは。今日は芸能界の排除命令について、もう一度教えていただけませんか?』

「そなたはそのテーマに関して、随分と熱心じゃな。して、今日は具体的にどのようなことを知りたいのかな?」

『排除命令に該当する人物の運命を、別の人物が代わりに引き受けるなんてことはあるのでしょうか?』

青年の問いに対し、陰陽師は湯呑みに注がれた茶を飲んでから口を開いた。

「ワシは芸能界にほとんど興味がないので、実例を何件も探し当てたわけではないが、答えとしてはYESじゃ」

『まさか、本当にそんな人物がいるとは! いったいどなたなのでしょうか?』

身を乗り出す青年を片手で制し、陰陽師は答えた。

「知っておるのは一人だけじゃが、元シャ乱Qのつんくじゃ」

そう言い、陰陽師は席を立って鍵のかかった引き出しから書類の束を持ってきた。
陰陽師が書類をめくる様子を眺めながら、青年は問いかける。

『つんくということは・・・彼が咽頭癌で声帯を失ったのは、モーニング娘。のメンバーの誰かが排除されるのを阻止した結果ということなのですね?』

「というよりも、モーニング娘。は、彼がプロデューサーをしていたわけだから、彼がいなければ世に出なかったグループということになる。もちろん、彼自身は芸能界に適した魂の属性なのじゃが、オーディションであまりに多くの3(9)-3を選びすぎた。おそらくこれほどの3(9)-3芸能界に送り込んだプロデューサは彼をおいて他におらんじゃろう」

そう言い、陰陽師は一枚の紙を青年の前に差し出す。

つんく

鑑定結果を一通り眺めた後、青年は口を開く。

『ということは、他のアイドルグループに比べ、モーニング娘。のメンバーには3(9)−3の人物が多いのでしょうか?』

青年の問いに陰陽師は首肯してみせ、続ける。

「さらに、つんくには作詩・作曲家・歌手という側面もあるが、モーニング娘。のみならず、グループを卒業した個人にまで延々と作詞・作曲を提供し続けていたことも考え合わせると、あの悲劇も致し方ないといえば致し方ないじゃろうな」

『つまり、本来であればアイドルとして芸能界で活躍すべきでなかった3(9)−3の彼女らを芸能界へ送り込んでしまった責任がそれだけ重かったと。それに、彼には天命運に“4:病気/怪我”の相がありますし』

テーブルの上に広げられた何枚かの紙を見つめながら、青年が悲痛な声を絞り出し、その言葉に陰陽師はうなずいて見せた。

後藤真希

市井紗耶香

安田圭

安倍なつみ

全員の鑑定結果にもう一度目を落とした後で、青年は再び口を開いた。

『この結果を見て思い出しましたが、“プッチモニ“は第一期のメンバーが後藤真希と市井紗耶香と安田圭で、第二期のメンバーは市井紗耶香が脱退した後に吉澤ひとみが加入したので、3(9)−3のためのグループだったといっても問題ないですね』

「もちろん、つんくに霊能力がないわけじゃから、これらの事態は不可抗力だとしても、人数が多すぎる」

陰陽師の言葉に対し、青年は大きくうなずいてみせ、口を開く。

吉澤ひとみ

『吉澤ひとみは2018年に信号無視・飲酒ひき逃げ事件を起こしてましたが、天命運の“5:一般・事故・加害者・怪我”に納得です。ちなみに、当時は“ハロー!プロジェクト”のまとめ役という重要なポジションだったようですが、この事件が排除命令なのでしょうね』

「彼女がこの事件を契機として芸能界を引退するといっておるようじゃから、あるいはそうかもしれんな」

『あと、タンポポには石川梨華と加護亜依がいましたね。加護亜依と辻希美は似ている部分があったのでその当時から比較されていましたが、モーニング娘。を卒業した後の明暗は本当に大きく分かれてしまった感があります』

「辻希美は恋愛運が高く、異性絡みの相がなかったために幸せな結婚生活を送っているようじゃが(※第22話参照)、加護亜依はその後どうなっておるのかな?」

陰陽師に問われ、青年はスマートフォンを操作しつつ答える。

『加護亜依はママタレとして復帰したものの、2019年に薬物疑惑による影響があってか、所属事務所との契約が解除されたようです」

「なるほど。おそらくそれも排除命令の一つじゃろうな」

加護亜依

石川梨華

青年はなおも子細に鑑定結果を見比べた後、ふたたび口を開いた。

『ちなみに、モーニング娘。の現役のメンバーで排除命令に該当している人物はいるのでしょうか?』

「では、さっそく鑑定してみるとするかの」

青年が読み上げる現役メンバーの名前に耳を傾けながら、陰陽師はその内のひとりの人物の名前と鑑定結果を書き記していく。

石田亜佑美

その人物の経歴をスマートフォンで検索した後、青年は口を開く。

『石田亜佑美は小学3年生から東北ゴールデンエンジェルスJr.チアリーダーズとして活動し、モーニング娘。に加入する前からバックダンサーとしていろんなイベントに出演していたようですし、2018年12月31日からモーニング娘。のサブリーダーに就任するなど、これまでの経歴は順風満帆なようですね』

「ということは、まだ排除命令が出ていないことになるが、このままいくといつ何時、何が起こっても不思議ではないかもしれん」

陰陽師の言葉を聞き、青年は鑑定結果に目を通してから口を開く。

『天命運の“4:病気”の相と健康運が7という鑑定結果から、病気にかかってしまうのではないでしょうか?』

苦虫を噛みつぶしたような顔で言う青年に対し、陰陽師は真剣な表情でうなずき、口を開く。

「石田亜佑美が排除されるか、このまま彼女の起用を続けるプロデューサーが身代わりで何らかのペナルティを受けるか、いずれにしてもただではすまん感じじゃな」

『ところで、AKBを始めとする多くのアイドルをプロデュースしている秋元康はどうでしょう。彼は大丈夫なのでしょうか?』

陰陽師は湯呑みに注がれた茶を飲み、秋元康の鑑定結果を書き記していく。
青年が固唾を飲んで見守る中、陰陽師はようやく口を開いた。

「未来のことは何とも言えんが、秋元康も危ういかもしれんな」

秋元康

青年は鑑定結果を見、眉間にシワを寄せながら口を開く。

『秋元康自身は芸能人ではないわけですから、属性はこれでいいのでしょうが、問題は彼がプロデュースしているAKBを中心としたグループにあると』

そう言い、青年はお手上げをしてそのまま後頭部に両手をそえる。

「もちろん、彼がプロデュースするグループのすべてをみたわけではないが、AKBをはじめとして、代表的なグループ、その主要メンバーはみな2−3−5−5…2じゃったことから、こちらは問題ないと思う。問題は、最近プロデュースしたグループのメンバーの中に」

『3(9)-3がいると?』

「さよう」

『で、なんというグループですか?』

「詳細はわからんから、彼がプロデュースしているグループ名を挙げてくれんか?」

青年は早速スマートフォンで当該のグループの検索を始め、検索結果を読み上げ始める。

「それじゃ。そのラストアイドルという名前じゃったな」

『“兼任OK”、“14〜26歳”、“どこの事務所でもOK”という、多くの人物に門戸が開かれたアイドルグループ、“ラストアイドル”、これですね。この中のメンバーは・・・』

青年は再びスマートフォンを操作し、メンバーの名前を読み上げる。

「テレビか雑誌で見かけた程度じゃから、名前だけでなく顔写真も見せてもらえるかの?」

青年は黙ってうなずき、スマートフォンを陰陽師に渡す。
陰陽師は慣れない手つきでスマートフォンの画面をスワイプし、該当の画面を眺めては鑑定結果を書き記していく。

阿部菜々実

西村歩乃果

青年が鑑定結果を見終わった頃合いを見計らい、陰陽師は口を開く。

「今後考えられることとして、この二人が問題を起こして排除されるか、あるいは秋元康が二人を庇護することで、代わりになんらかの問題を起こす可能性のどちらかじゃろうな」

『鑑定結果を見る限り、特に天命運に“5:一般・事件・加害者”の相がある西村歩乃果が何らかの事件を起こす可能性が高そうですね』

陰陽師は小さくうなずくのを確認し、青年は続ける。

『彼女の場合、元々は美容師として裏方で働いていたところ、カワイイから表に出た方がいいと何度か言われ、いざオーディションに応募したら合格してしまったという経緯があるようです』

「今後どうなるとしても、天命に沿った生き方という意味では、彼女はアイドルよりも、美容師として才能を発揮するべきなのじゃがのう」

真剣な表情で言う青年に対し、陰陽師は微笑みながら言う。

『天命運に“2:諸事万般”の相があることから、今の状況になっているのかもしれませんね』

納得顔で頷く青年に、陰陽師が言葉を続ける。

「それと、忘れぬうちにもう一つ。秋元康本人なんじゃが、ワシが調べたかぎり、おびただしい数の作詞を、AKBを筆頭としたグループに提供しておるようじゃが、そちらの方がもっと気にかかるな」

『つまり、歌の歌詞であったとしても、詩である以上、2-3-5-5…2ルールに抵触するわけですね?』

「その通りじゃ」

『ということは、先程の“ラストアイドル”の問題よりも、こちらの方がある意味、根深い問題だと?』

「さよう」

しばらく思案にふけてから、青年は再び口を開く。

『天命運に“4:病気/怪我”もあることですし、秋元康がつんくのように大病を患わないことをただただ願うばかりです』

無言でうなずく陰陽師に対し、ふたたび青年は問いかけた。

『ちなみに、先生が今までに鑑定した中で、一番印象に残っている芸能人はどなたでしょうか?』

陰陽師は湯呑みに注がれた茶を一口のみ、口を開く。

「強いて言うなら、辛坊治郎かな」

『辛坊治郎といえば、今はあちこちでTVに出ているようですが、たしか元々はアナウンサーだったかと』

「テレビであれラジオであれ、アナウンサーも立派に2−3−5−5・・・2のルールに含まれる職業ゆえ、3(9)-3である彼がいるべき場所ではないのじゃが、経歴が極めて特殊なことから、踏鞴(たたら)を踏みかねない状態ながら今日まで決定的な排除命令を受けていないということもできるのじゃが」

陰陽師の答えに対し、青年は少し驚いた表情で言った。

辛坊治郎

「ざっと彼の経歴について調べてみたのじゃが、彼は大学4年次の就職活動で埼玉県庁の上級職試験に合格し、住友商事から内定を受けた。しかし、大学就職部の掲示板でフジテレビのリポーター・司会者(アナウンサー)募集に受験し、受験者1,300人から3名に絞られた7次選考の最終面接で落ちたが、12月に大阪の読売テレビから突然電話があり“フジテレビの最終で落ちたそうだが良かったら弊社を受けてみないか”と誘われて受験して合格した」

『ある意味、すごい強運ですね』

「読売テレビに入社後は地方リポーターを8年間担当し、1997年、アナウンサーから報道局に異動した。その後は報道部チーフプロデューサーへ就任し、同職と並行する形で“報道特捜プロジェクト“のキャスターや、関西ローカルの”元気モンTV””あさイチ!”でコメンテーターなどを担当しておる。2003年7月からそれまで特番だった『たかじんのそこまで言って委員会』がレギュラー昇格となり、やしきたかじんとともに司会を担当。2010年8月に、翌月末で読売テレビを退職して10月からシンクタンクの研究員になる旨が報道され、自身がキャスターを務める『朝生ワイドす・またん!』で記事を取り上げ本人も公表。退職後は自身が設立したシンクタンクである大阪綜合研究所へ移籍し、退職後も番組出演を続ける」

『3(9)―3の“大々山”にふさわしい、多才な経歴ですね』

「その後も、2016年4月から放送を開始した「直撃!コロシアム!!ズバッと!TV」で司会進行に大抜擢され、読売テレビ以外の番組で初めてレギュラーに選ばれた辛坊治郎の場合はさらに事態が重く、もはやグレーゾーンというよりはブラックゾーン真っ只中という感があった」

『そんなに活躍しても決定的な排除命令が出されなかったことが、意外といえば意外です』

感嘆の声を上げる青年に対し、陰陽師は小さく首を振ってから答える。

「ところが事態はそれほど楽観的ではないんじゃ」

『とおっしゃいますと?』

「まず手始めに、彼は2012年12月19日、大阪市内の病院で、十二指腸の腫瘍(後に初期の十二指腸癌と判明)を摘出している」

『それはさすがに排除命令に抵触した感じがします・・・』

「そして極めつけは、2013年6月に、全盲のヨットマン岩本光弘を補助し、福島県いわき市の小名浜港から2カ月の予定でアメリカ合衆国のカリフォルニア州サンディエゴを目指すも、6月21日に(国籍不明の潜水艦だという説が根強くあるが)クジラと思われる生物と衝突してヨットが浸水し、漂流。7時45分に118番通報したものの、10時間近く救難艇で漂流し、18時14分にようやく海上自衛隊の救難飛行艇に救助されておる」

度重なる辛坊治郎の事故話を聞き、青年は言葉を失う。
そんな青年を横目に、陰陽師は続ける。

「彼がいまだこの世の最終的な“排除命令”を受けていない理由として考えられるのは、大阪府を中心とした近畿地方の政治・経済・文化、およびアジア・太平洋地域における環境・観光・民族文化・経済開発についての研究・調査・およびそれを基とした講演活動などを行なっていたり、メディア研究の経験をもとに、様々な大学で客員教授を務めているからじゃと思われるのだが、いずれにしても細い塀の上を歩いているようなものじゃから、いつどうなるかは何とも言えん」

『つまり、政治関係のキャスターだけでなく、それ以外の分野にも携わっているから、ということでしょうか?』

「さよう。一般番組のMCなどに手を出すことなく、現在キャスターを務めている日本テレビ系“ウェークアップ!ぷらす”のような、自分の専門分野ともいえる番組に限定して活躍をすれば、排除されずに済むかもしれんがの」

『そう願うばかりです』

陰陽師の言葉に、深くうなずく青年。しばらく沈黙を守ったのち、ふたたび口を開く。

『ちなみに、辛坊治郎以外に排除命令に該当するアナウンサーはいらっしゃるのでしょうか?』

「いや、ワシが鑑定した古今東西の数百人におよぶアナウンサーの中では、2-3-5-5・・・2以外のアナウンサーは辛坊治郎以外、いまだ存在しておらぬ」

『なるほど。それだけの数の方々をみられているとすれば、問題のある人間はほとんどいないのでしょうね』

青年の言葉に対し、陰陽師は小さくうなずいて続ける。

「実際、入社試験と霊能力を持たない面接官の数回にわたるスクリーニングだけで、古今東西のアナウンサーのほぼすべてが2-3-5-5・・・2であるという事実は、この世が偶然の結びつきだけでできてはいない、顕著な証左の一つなのじゃろうな」

『辛坊治郎の経歴を鑑みるに、彼を採用しなかったフジテレビは“カミゴト”として“見る目があり”、彼にわざわざ声をかけ最終的に採用した読売テレビは“見る目がなかった”と言えそうですね』

「そうじゃな。万が一、辛坊治郎にこれ以上の厄災が降りかかる事態が起こるとすれば、そもそも彼をこの世界に引き摺りこんだ読売テレビこそ、最大の責任者と言えなくもないからのお」

青年は腕を組みながら苦笑し、口を開く。

『読売テレビの今後が気になるところです・・・』

「ところで、そなたは西川史子なる人物を知っておるかの?」

『はい、整形外科医でありながら、ちょこちょこTVに出ている方ですよね?』

「さよう」

青年の言葉に小さく頷きながら、陰陽師は言葉を続ける。

「実は、彼女も辛坊治郎同様、かなり危険な道を歩んでおるひとりなんじゃ」

『ということは西川史子も、2-3-5-5…2ではないと?』

「もちろん彼女は医者なわけじゃから、3(9)-3の可能性が高いことはおぬしもわかるじゃろうが、詳しい話をする前に彼女の鑑定結果を出そう」

西川史子

鑑定結果を見た後、青年は口を開く。

『西川史子は晩婚かつ結婚後しばらくして別居し、結局は離婚になったと記憶していますが、天命運に“8:異性”の相があることと恋愛運が3と低すぎる結果から納得できます』

「話を聞く限り、そなたの言う通りじゃな」

『彼女は元々が医者ですので、つい最近までレギュラーであったサンデージャポンで医学の話題がある時に限り、呼ばれていたようです。その後、飯島愛の芸能界引退に伴い、レギュラーとして出演し、結婚前は高飛車なキャラクターを活かしていじりキャラとして出演していましたが、いざ自身が結婚した後の結婚生活は散々だったため、いじられキャラに転落していました』

「つまり、排除の圧力がとみに高まっていたというわけじゃな」

青年はスマートフォンを操作していた手を止め、口を開く。

『調べたところ、西川史子は2020年3月22日にサンデージャポンを卒業したようですね』

「卒業も排除命令の一つと思われるが、ワシが知る限りでは病気を患っていたと思うが、そのあたりの情報はあるかの?」

陰陽師の問いに青年はうなずいて見せ、スマートフォンを操作して口を開く。

『2016年、2017年と胃腸炎で入院していたそうですが、こうした出来事も排除命令の一つかもしれませんね』

青年の言葉に対し、陰陽師は小さくうなずいて口を開く。

「今回は胃腸炎で済んだが、今後はどうなるかわからん。ちなみに、西川史子がサンデージャポンを卒業した経緯についてはわかるかの?」

しばらくスマートフォンを操作したのち、青年は口を開く。

『今後も芸能活動を続けたい、テレビが大好きでたまにはゲストとして呼んでもらいたいと言っていたことから、本人の意思ではなさそうですね』

「であれば、排除命令に抵触した可能性が高いじゃろうな。彼女の場合、あくまでも医師に基軸を置きながら芸能活動をしていたために命までは取られずに済んだと思われるわけじゃから、今後その比重をさらに医学側にかけて、細々と芸能活動を続けるのであれば、これ以上の問題を避けることができるかもしれんがのう」

陰陽師の言葉を聞き、青年は納得顔で何度もうなずきながら答える。

『先生のおっしゃる通り、どうしても芸能界に未練があるというのであれば、無事でいられる形で活動を続けていただきたいものです』

「話題に挙がったからついでに話をしておくと、サンデージャポンでの西川史子の前任であった飯島愛も3(9)―3じゃったんじゃ」

青年は目を見開き、手早くスマートフォンを操作した後、口を開く。

『飯島愛は2007年3月に“夢や目標が見出せず、芸能界で生き残っていくことは不可能”として引退表明をしていますが、腎臓病(腎盂炎)が原因とも言われています』

「彼女は3(9)−3ゆえ、本来は理科系で医者にもなれたはずじゃが、彼女が医師を目指そうと思った時には、年齢的に遅すぎたのかもしれん。他にも、精神的にいろいろあったようじゃしな」

陰陽師の言葉に青年はうなずいて見せ、口を開く。

『飯島愛は2008年12月17日前後に自宅で肺炎によって亡くなり、24日に親戚の女性によって発見されたとのですが、室内の暖房が点いたままだったため、遺体は腐乱していたようです』

「“日本のモンロー”とも言わしめた彼女としては、筆舌に尽くしがたい最期というわけじゃな。西川史子も、あのまま番組の出演を続けていたら、ひょっとしたら同じ様な結末を迎えていた可能性もなきしもあらずなわけじゃから、不思議な縁といえば不思議な縁ということができるじゃろうな」

陰陽師の言葉を聞き、青年は視線を落とし、重々しく口を開く。

『飯島愛、西川史子と続いたことから、サンデージャポンには3(9)―3枠があるような気がしてきましたが、今後のレギュラー出演者の魂の属性はどうなることやら・・・。今後は排除命令に抵触する人物が採用されないことを願うばかりです』

「ワシも同感じゃ。あるいは、西川史子の後釜となる人物が3(9)−3になったとして、今度は番組のプロデューサーが身代わりとなって何らかのペナルティを負ってしまう可能性も考えられるしな」

そう言うと、陰陽師は壁時計に目をやる。
それに気づいた青年は、スマートフォンで現在時刻を確認する。

『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

「気をつけて帰るのじゃぞ」

陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送る。

帰路の途中、スポーツ・芸能・芸術の世界に縁がある人との関わりを、少しずつでも増やしていこうと思う青年だった。