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  • 旦那に内緒でお祓いを依頼していたことがバレた件。旦那は先週、副社長になりました。

    こんにちは!あの世とこの世合同会社、代表の中山彰仁です!

    最近は、不可思議な領域からの采配によってか、面白い体験をしているお客様が増えているように感じます。

    というのも、令和に入り、体主霊従から霊主体従の世の中にパラダイムシフトしました。

    簡潔に言えば、物質主義から見えない世界の影響力が増し、産業革命より前の、中世の状態に戻された。

    その揺り戻しによってコロナ禍を始めとし、様々な出来事があったと思われます。

    実際、私も含め、昨年は全体的に運氣が落ちたと言えそうな、非常に大変な一年でした。

    ただ、今年の3月頃から落ちた運氣が元に戻りつつあり、さらに7月頃から運氣が上がってくるそうです。

    今回は、旦那さんだけでなくご家族の分までお独りでご神事を依頼してくださった女性の体験をご紹介します。

    《お客様の不可思議な経緯》
    ・精神疾患と診断されたことをきっかけに退職し、昨年からハローワークに通う

    ・ハローワークで訓練校申込の説明を聞いた帰りに、現在通っている学校の校長がたまたまいた

    ・さらに、なぜか校長から90分もの熱弁を受け、しかも、ちょうど申し込みの〆切が間近で入学する流れに

    ・精神疾患のリハビリも兼ね、2023年の4月から職業訓練校に通い始める

    ・今までの職歴とは畑違いの専門分野であるため、ついていくので精一杯だが、訓練校の内容と関係がある大手会社に勤めている知人から、リファラル採用に興味があるなら紹介してもいいと言われる

    ・40歳の自分にもまだ正社員として復職できる可能性があるかもしれないと感謝の気持ちでいっぱいになる

    といった、良い出来事が起きたと思いきや、お客様が旦那さんのために内緒でお祓いを依頼していたことがバレてしまいました

    陰陽師にお祓いを依頼し、お祓いが終わった後はメールで返信がきます。

    依頼してから数分以内に返信がくることがほとんどです。

    5年ほど前から、旦那さんのために念や雑霊/魑魅魍魎を内緒で祓ってもらっていたが、お客様がたまたま旦那さんにスマホの画面を見せていた際にメールの返信が届いた旨の画面が表示されてしまった。

    旦那さんは科学や現実的な価値観を持つため、お祓いや霊障について受け入れるとは考え難い男性です。

    お客様は心中では焦ったものの、念やお客様自身はお祓いを受けていることについて、小出しに旦那さんに伝えていたからか、意外にも旦那さんは、自分のお祓いを依頼していたことを受け入れたようです。

    よかったです・・・。

    さて、そんな旦那さんもご神事を済ませていますので、今年に入って様々な恩恵を受けたようです。

    《旦那さんについて》
    ・2023年6月21日に副社長になる

    ・昇進の際、自動車(クラウンクロスオーバー)を経費で社長から頂いた

    ・旦那さんを推しにしているような人が増え、副社長になった時に取引先などからお祝いされ、”あなたのような人になりたい“と言われるようになった

    ※他にも外資向けにプレゼンをするなど、様々なおめでたい出来事があったようですが、割と個人を特定しやすい情報であるため、割愛します。

    また、実は、お客様と旦那さんは魂の種類が異なる組み違い夫婦のため、特にコミュニケーションにおいて苦労することが多かったようです。

    ですが、鑑定では珍しくNGではなかったため、そのことを知っているお客様のたゆまぬ努力の成果だと私は思います。

    《夫婦の関係性について》
    ・日を追うごとに喧嘩が減り、頑固だった旦那さんが素直に謝ることが増えてきた。

    ・お客様自身もだいぶ優しい言葉使いをできるようになった。

    お客様とよく電話や対面で旦那さんとのやり取りをどうしたらいいかの相談を受けました。

    私の魂の種類は3:武士で旦那さんと同じであるため、旦那さんのことが多少はわかり、言葉遣いや質問の仕方についてお伝えしたことを、昨日のことのように覚えています。

    他にも、シロアリと雨漏りによる被害が今の物件に顕著に現れてきたため、引越する予定だが、大家とあまり仲がよくなかったこともあり、7月以降の運氣が上がるタイミングに合わせ、ご夫婦にとってベターな物件へ引っ越すという天の采配ではないかと、私は思いました。

    《実母について》
    ・入院中だったが、外出できるように

    ・現在面倒をみている姉妹が不当な要求を突きつけるなど、昨年は大変な状況で、家族会議があるほどだった

    ご自身だけでなく、旦那さんや親族の神事も依頼してくださったお客様は多くありません。

    お独りで親族分の費用を負担することは、経済的にも精神的にも大変だと思います。

    ですが、こうした出来事をお聞きしていると、神事の効果や不可思議の領域からの影響を改めて実感します。

    ただ、運氣が上がるとしても、未来は私たちの選択によって変わります

    ですから、ただ口を開けて運氣が上がることを期待して待つのではなく、全ての神事を済ませて霊的なパフォーマンスを100%にし、さらに中長期的な人生の分かれ道においては、どの選択が適しているかを鑑定で明らかにし、7月頃から上がる運氣に乗れるようにしましょう。

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  • 新千夜一夜物語 第38話:陰陽師/霊能力者の条件

    新千夜一夜物語 第38話:陰陽師/霊能力者の条件

    青年は思議していた。

    見えない存在とのやりとりを断言的に話す人物は、眷属や魑魅魍魎の影響を受けている可能性が高いことから、そうした人物が発信する情報には注意すべき、ということについてである。
    では、陰陽師/霊能力者の条件とは、どのような内容なのだろうか?

    一人で考えても埒が明かないと思い、青年は陰陽師の元を訪れるのだった。

    『先生、今日は陰陽師/霊能力者の条件について教えていただけませんか?』

    「今日もまた、壮大なテーマじゃな。して、その質問をするにあたり、どのような経緯があったのかな?」

    『陰陽師や霊能力者という言葉は巷に溢れかえっていますが、実際のところ、先生のような陰陽師/霊能力者との違いが、いまいち理解できないのです』

    「なるほど。その質問に答える前に、確認ではあるが、そなたは霊能力についてどのような理解をしておるのかな?」

    『まず、霊能力者は、鑑定結果の属性表の現世における具体的な性格/ソフトに続く因子が(±1〜9)となります。そして、霊能力は古来の分類では6つ、天眼通力、天耳通力、自他通力、運命通力、宿命通力、漏尽通力があり、先生たち陰陽師/霊能力者の間では、天眼通力、天耳通力、自他通力、漏尽通力の存在を認める人物が多い反面、運命通力、宿命通力の存在については懐疑的な意見を持つ人物がかなり多い、と以前にお聞きしました」

    青年の説明を聞いた陰陽師は、小さく頷いた後に口を開く。

    「“運命通力”と“宿命通力”に対し、懐疑的な意見を持つ人物が多い理由については、理解しておるかな?」

    『未来は地球上にいる80億人の人間たちの一瞬一瞬の選択の積み重ねと、地震、津波、気温の急激な変動といった天変地異などが複雑に絡み合っているからで、大まかな道筋はついているとしても、確定した未来は存在しないから、と認識しています』

    「その通りじゃ」

    小さく頷きながら、陰陽師は霊能力の詳細を紙に書き記していく。

    ・宿命通力:その人がどういう天命を持って生まれてきたのか、何故こういう運命になったのかという、前世・今世・来世のことがわかる能力。

    ・運命通力:運命を予知する能力で、以前こういうことがあったとか、この先こういう時期にこういうことがあるであろうということがわかる能力、簡単に言えば、人間の過去世や未来が見える能力。

    ・天眼通力:相手が何をしているか、将来はどうなるか、それらを神様が霊眼で見せてくれる能力。

    ・天耳通力:耳で神の意図がキャッチできたり、心霊と話ができたりする能力。

    ・自他通力:読心術のことであり、相手の思っていることがすぐ読めるという能力。“黙って座れば、ピタリとあたる”という易者などが、その典型的な例。

    ・漏尽通力:人の悩み、苦しみ、人生上の様々な問題を(今世の宿題と抵触しない程度に)解決する能力のことで、漏尽とは漏れなく尽くすという意味となり、人間の問題点、苦しみを漏れなく尽くして解決し、幸せに導く能力。

    青年が書いた内容を読み終えた頃合いに、陰陽師は口を開く。

    「一つ加えておくと、この世が修行の場であるという前提からすると、最後の“漏尽通力”も“幸せに導く能力”という点に問題があることを覚えておくようにの」

    『たしかに。人間の問題や苦しみを解決することは、多くの新興宗教が目指している“地上天国”を目指すことに繋がりかねませんからね』

    納得顔で頷く青年に微笑みかけ、陰陽師は続ける。

     

    陰陽師について

    「さて、話を戻すが、平安時代あたりにおける陰陽師の定義とは、天文学、暦のエキスパートのこととなり、現代で言うところの、科学者や文部大臣のような存在じゃったと考えてもらうといいじゃろう」

    『なるほど。陰陽師と言うと、どうしても霊能力/超能力者というイメージがつきまとうのですが、天文学や暦といった理科系のエキスパートだったのですね。たしかに、三国志で有名な諸葛亮孔明も軍師とか祈祷師というイメージが強いですが、赤壁の戦いにおいて、地形図と天候を把握して東南の風が吹くことを知っていたという説を聞いたことがあります』

    「諸葛亮孔明の話はさておき、960年40歳で天文得業生(陰陽寮に所属し天文博士から天文道を学ぶ学生の職)であった安倍晴明は、村上天皇に占いを命ぜられておることをみてもわかるように、占いの効能は、当時の貴族社会で広く認められていたようじゃ。また、993年2月に一条天皇が急な病に伏せった折、安倍晴明が禊を奉仕したところ、たちまち病が回復したことや、1004年7月には深刻な干魃が続いたために清明が命を受けて雨乞いの五龍祭を行なったところ、雨が降ったという逸話も残っておるところからも、そのような効能の一端を窺い知ることができる」

    陰陽師の説明を聞いた青年は、スマートフォンで自分なりに調べてから口を開く。

    『雨乞いは天文学の知識でもできそうですが、病気平癒に関しては、まさに“霊能力”のなせる業だと思います。それに、979年当時59歳だった安倍晴明は、那智山の天狗を封じる儀式を行なったようですが、天狗が魑魅魍魎(※第36話参照)に含まれることを考えると、先生が日々行なってくださっている“お祓い”に近いことはできたのではないかと』

    陰陽師は手元にあった属性表の束をめくり、その中の一枚を青年の前に差し出す。

    安倍晴明SS

    安倍晴明の属性表を見た青年は、驚きの声を上げる。

    『安倍晴明はやはり“霊能力者”で、しかも(±1)と最上位なのですね! ただ、先祖霊の霊障に“17:天啓”があることと、精神疾患に“14.邪神2(第七感=近い未来がわかる。しかし邪神をふくめ霊障である以上、どうでもいいことはわかったとしても、人生の大事な分岐点では常に嘘の情報をあたえられ、結果人生を転落していく)or口撃、人的な問題で諸事が前に進まず”のみがあることを踏まえると、これらの合わせ技によって、人生の大事な分岐点で、眷属や邪神に唆されたり、占術の結果を誤解した可能性があるのですね』

    「以前にも説明したとおり、精神疾患の項目に関しては、チャクラの異常が1~7のすべてに出ているために40点中39点分が塞がれているというよりも、たとえば第7チャクラだけで39点分塞がれている方が、その一点が重篤であるのと同様、13番がなく14番だけということは、それだけ14番が重篤なことを示しているわけじゃな」

    腕を組んで小さく唸る青年を横目に、陰陽師は続ける。

    「とは言え、彼は晩年、左京権大夫、穀倉院別当、播磨守などの官職を歴任し、位階は従四位下にまで昇ったようじゃが、発揮されていたパフォーマンスが40%の状態でも彼がそこまでの地位にたどり着けたのは、まさに属性表の数値のなせる業というわけじゃな」

    陰陽師の言葉を聞き、青年は再び属性表に目を通す。

    『おっしゃる通りだと思います。では、属性表や当時の実績から、安倍晴明は先生のような陰陽師/霊能力者の条件を満たしていたと考えても問題ないのでしょうか?』

    青年の問いに対し、陰陽師は小さく首を左右に振ってから口を開く。

    「いや、それはまた別の話になる。仮に彼が霊的なものごとに対するソリューションを持つ人物であっても、ワシの考えに賛同するとは限らぬし、現世利益や私利私欲のために能力を行使せず、本物の“カミ”の意向を把握していたかどうかには大いに疑問が残るからの」

    『なるほど。真の“霊能力者”であるかどうかは、霊能力の強さなどの属性表の結果だけでは決まらないということですね』

    陰陽師の言葉に一つ頷いた後で、青年が言葉を続ける。

    『ところで、最近、メディアで話題になっている陰陽師がいるのですが、彼なんかはいかがでしょうか?』

    「ふむ。鑑定するまでもなく怪しげな人物のようじゃが、その前に、そなたなりの見解はどうなのじゃ?」

    いつもの笑みでそう問いかける陰陽師に対し、青年は苦笑を浮かべながら口を開く。

    『頭2の魂2−4で霊媒体質(−1)、霊障と天命運に“17:憑依”の相があり、第6・7チャクラが乱れているのではないかと』

    そう答えた後、青年はその陰陽師の名前を陰陽師に告げる。
    陰陽師は指を小刻みに動かした後、紙に鑑定結果を書き記していく。

    橋本京明SS

    属性表を見た青年は目を見開き、口を開く。

    『やはり、チャクラの乱れは6のみでしたか。SNSを通じていろんな人物の属性表を見て思うのは、肩書きや経歴を誇張気味で発信している陰陽師や霊能力者は、基本的に、頭が2で魂2−4の人物が多いように感じます』

    「全員が全員、頭が2の魂2−4とは限らぬものの、そなたの見立て通り、確率的に頭2の2―4が多いと思って差し支えはないじゃろうな」

    『僕としては、一人でも多くの方に、魂磨きの修行の重要性に早めに気づいていただきたいと思っているのですが、彼のような人物の言葉を信じ、今日もモチベーションを保って仕事に励んでいる人たちがいることは、悩ましい限りです』

    「そなたの言うこともわからぬではないが、結局は、本人たちが信じるに値すると判断した力や見えない存在を信じるのはしょうがないことじゃし、信じた結果から学ぶこともまた、修行の一つなのじゃろうて」

    陰陽師の言葉に対し、青年は真剣な表情で首肯し、口を開いた。

    『ちなみに、この人物ですが、彼の祖父が陰陽師で、霊に対する魔の祓い方を教わったことをきっかけに、学童の頃から占いの学問を始めたようです。魂2−4が学業に突出するという特徴と、転生回数が数奇な運命を歩みやすい230回代であることを鑑みると、まさに学問としての占いは、彼にとって得意分野だったのかもしれません』

    「たしかに、2―4の占い師が多いのも、そのほとんどが2(3)-4であるのも、統計学的な事実じゃからな」

    陰陽師はいつもの笑みを浮かべて小さく頷いた後、口を開く。

    「ちなみに、霊能力に関して、忘れてはならぬ原則がある」

    『とおっしゃいますと?』

    そう言い、青年は背筋を伸ばす。

    「それは、“霊能力”は基本的に一代限りという大原則じゃ。仮に、その子孫たちが初代の“霊能力者”の人物の儀式の型や智恵を代々伝承したところで、それらの形式的な儀式が、様々な霊的な問題にたいして全く用をなさないことは、伝統的な宗教を見れば一目瞭然じゃ」

    『つまり、陰陽師/霊能力者の何代目の子孫と謳っているからと言って、本人に霊能力があるとは限らないということですね。ちなみに、この陰陽師は様々な占術を用いて占いをしているようです』

    そう言い、青年はスマートフォンを操作して占術を告げていく。

    「まあ、その人物が、何を種本にして占いをしようと、自由じゃが」

    そう前置きをしたうえで、陰陽師が口を開く。

    「一口に暦と言ったところで、その暦自体も、世界規模でこれまでに何度も変わっておるし、大きな視点で見れば、地球もその他の星々も、宇宙の同じ場所に存在しているわけではない。また、先ほども言ったように、未来は我々人間一人一人の行動と地球の活動によって変化することから、未来予知に関する鑑定自体、ワシに言わせるとあまり意味がないということになる」

    『そうでしたね。仮に占いで望ましい未来が出、それが的中してその時は幸せだったとしても、その幸せが、実は、さらなる不幸の始まりとなる可能性もありますし、その逆もまた然りなわけですから、未来のことを考える暇があるなら、瞬間瞬間の選択で悔いが残らないように行動する方が大事なのですよね』

    「その通りじゃ」

    青年の言葉に陰陽師はいつもの笑みをたたえて頷いた後、口を開く。

    「他に、誰か気になる人物はおらんのかな?」

    『テレビ番組に出演していた霊能力者として、この人物はいかがでしょうか?』

    「どんな人物かの?」

    青年はスマートフォンを操作し、その霊能力者の経歴を挙げていく。

    『彼は18歳頃から心霊現象に悩まされてから、1年間寺で修行した後、2年間の滝行を経て憑依体質を克服したと書かれています。その後、霊視アドバイスを続ける中で、別荘の心霊現象に悩んでいた小説家の相談に乗ったことで、その小説家の縁でメディアに出演することになったと。その後は、テレビ番組にレギュラー出演するだけでなく、霊視によってゲストの部屋の中を言い当てるなどして番組を盛り上げていたようです』

    黙って耳を傾ける陰陽師の様子を察し、青年は続ける。

    『ただ、彼の番組をきっかけに中学生が飛び降り自殺をしてしまったり、とある女優の死んだ父親を霊視して語ったところ、実はその父親は存命だったり、合成された偽物の心霊写真を本物だと断言してしまうなど、彼の霊能力に対する疑惑や批判の声もそれなりにあったようです』

    陰陽師は指を小刻みに動かし、紙に鑑定結果を書き記していく。

    江原啓之SS

    内容を一通り眺めた青年は、小さく息を漏らしてから、再び口を開く。

    『残念ながら、この人物はいわゆる“霊能力者”ではありませんでしたか。彼は、イギリスに渡ってアカデミックなスピリチュアリズムを学び、短大でスピリチュアリズム授業を行うなど、現実面での活動もしっかりしていたようですが、少し残念です』

    「修験道での修行や滝行によって憑依体質を克服したと言っておったが、霊障と天命運に“17:天啓”の相が残ったままじゃし、言うまでもないことじゃが、修行によって霊能力が身につくことも、霊媒体質が変わることもない」

    陰陽師の言葉に対し、青年は頷いてから、口を開く。

    『血脈の霊障に“3:精神”と“4:病気”の相もありますから、以前にお話を聞かせていただいた、前世の記憶を語る少年(※第24話参照)に近いケースなのかもしれませんね』

    青年の言葉に対し、陰陽師は小さく頷いてから、続ける。

    「ワシが知る限りでは、彼はオペラ歌手もやっているようじゃが、自身の公演の中で歌を披露してみたり、他のプロの歌手と共演という形を取っていることから、 “排除命令”に抵触しないグレーゾーンでも活動しているようじゃな」

    陰陽師の言葉を聞き、青年は再び属性表を眺めから、口を開く。

    『オペラ歌手以外にも、一般社団法人の理事長や、作家やタレント、スピリチュアルカウンセラーと活動が多岐にわたっているので、魂の属性が、プロのスポーツ・芸能・芸術を生業にできる2−3−5−5…2(※第23話参照)ではありませんが、ギリギリセーフなのでしょうね』

    「かなりきわどいところを歩いているが、今までのところ、ぎりぎりセーフと言えなくもないのじゃろうな」

    『よくわかりました。それにしても』

    二つの属性表を手に取り、青年は眉間にシワを寄せながら口を開く。

    『先ほどの陰陽師もそうですが、メディアで話題になる人物は、先生のような陰陽師/霊能力者の条件にあてはまる人物は、ほぼいなそうですね』

    そう言い、暗い表情で視線を落とす青年を励ますように、陰陽師は微笑みながら声をかける。

    「そう落ち込むでない。そもそも、見えない世界の話じゃから、陰陽師/霊能力者が行使している能力が本物か偽物かを判定することは難しい。また、どの人物が仮に本物だとしても、多くの新興宗教のように地上天国を目指すという方向性が正しいのか、現代医学の西洋医のように、病気だから治すのが善(最終的に不老不死を目指す)という考え方が正しいのか、という問題もある」

    『なるほど。安倍晴明は病気平癒や雨乞いをしていましたが、それらが“本物のカミ”の意向に沿っていたとは限らないのですね』

    「その通りじゃ。仮に陰陽師や、既存の新興宗教の開祖が、たとえそれなりの霊能力を持っていたとしても、彼らがどのような“理念/哲学”をもって、教義や宗教を確立させたのかということの方がはるかに重要なのじゃよ」

    陰陽師の言葉を聞いた青年は、記憶を辿るように視線を巡らせ、黙考する。
    そんな青年に対し、陰陽師は励ますような笑みを向けて言葉を発した。

    「何か気になることでもあるのかの? どんなことでもかまわぬから、とりあえず話してみるがよい」

    そんな陰陽師の様子を見て安心したのか、青年は小さく頷いてから、口を開く。

    『以前、“邪神”は既存/新興の宗教が新たに作り出した“神(もどき)”とお聞きしましたが、新興宗教の信者たちが教祖を神格化することによって、死後、教祖が邪神となってしまうこともあるのでしょうか?』

    「その場合の“邪神”は信者側の問題であるわけじゃから、本人とは直接関係はないが、教祖本人が死後も崇めてもらおうとこの世に執着し、地縛霊化しているケースは十分に想定できるじゃろうな」

    『なるほど。邪神と霊障の関連で思ったのですが、新興宗教の信者をご先祖に持つ霊媒体質の子孫の場合、霊障の12と13、すなわち、邪神1と2の相がかかりやすいのでしょうか?』

    「その可能性は高いじゃろうな。困った時の神頼みという話も、今よりも霊主体従であった時代には、極めて自然な行為だったはずじゃろうから、そのような新興宗教の信者たちが、教祖の死後、教祖を神格化し、魂磨きの修行という本来の道筋から離れてしまった結果、死際に、この世になんらかの執着を残して地縛霊化してしまうことも大いにありえたはずじゃ」

    『なるほど。何だか恐ろしい話です』

    そう言い、身をすくめる青年にいつもの笑みを浮かべ、陰陽師は続ける。

     

    令和の生き方とは

    「“本物のカミ”よりも“似非神様”ばかりが注目され、求められるのは、“カミ”がすがるものではなく、感謝するものという基本をわきまえないことに起因しておるとワシは思う。ゆえに、この世は魂磨きの修行の場であり、地球人全員が幸せになることも地上天国を目指すことも違うということを、一人でも多くの人に伝える必要があるわけじゃな」

    『たしかに』

    陰陽師の言葉に対し、真剣な表情でうなずいた後で、青年は口を開く。

    『ただ、物事に行き詰まった時に、自分の力で乗り越えるのではなく、他力本願になってしまうのは、人間誰しもが持つ弱さである以上、そのような姿勢はある程度はしかたないものと考えるべきでしょうか』

    「もちろん、特に霊媒体質の人物の多くは、霊障によって余計な重荷を背負っていることから、本来なら乗り越えられる試練をパスできないことも大いにあり得る。そのような人物に対し、根本的な解決策を提示することなく、現世利益を叶えた後の代償を無視したまま目の前の人物の“弱さ”を食い物にする宗教が幅を利かせていること自体は、大いに問題じゃと思う」

    『令和のねじれによって、“体主霊従”から“霊主体従”に方向修正した要因の一つとして“コロナ禍”が生じたと僕は認識していますが、世の中が混沌として不安になりやすい時代だからこそ、なおさら氣をつけなければいけないわけですね』

    「その通りじゃ。ワシのみるところ、2021年は、地球規模でますます“ねじれ解消の動き/霊主体従化”、すなわち、世界レベルの混乱が深まっていく可能性が極めて高い」

    青年は驚きに目を見開き、しばらくうろたえてから、ようやく口を開く。

    『新型コロナウイルスの中には、変異して感染力が高まり、猛毒化しているとも聞きますから、コロナ禍が落ち着くどころか、さらに激化する可能性もあるということでしょうか』

    「そのあたりは、ワクチンの効能と接種のスピードとの兼ね合いが肝となっていくのじゃろうが、このコロナ禍自体は、まだまだ続くとみた方がいいじゃろうな。それと、幸か不幸か、たまたまこの時期に転生している人々の“現世的に見た”勝ち負けがはっきりしてくる可能性も極めて高く、2020年以降の勝ち負けが、今世の宿題の達成度とほぼイコールと言う側面も決して無視することはできないと思う」

    青年は思案顔で腕を組んだ後、口を開く。

    『そうなると、現世利益を叶えてくれる眷属や邪神を崇めてたり、現世利益を叶えることにフォーカスした占い師や霊能力者に助言を仰ぐほど、むしろ現世利益の獲得が遠のくという、矛盾が生じるわけですね』

    「何を信じるかは各人の自由じゃが、ワシが他の新興宗教団体の教祖や霊能力者と異なる点は、大まかに言って二つある。一つ目は、この世は修行の場という前提のもと、現世利益にコミットしないこと。そして、二つ目は、ワシを教祖として神格化しないことじゃ」

    陰陽師の説明に対し、青年は首肯して続きを待つ。
    青年の意図を察した陰陽師は、一呼吸置いてから再び口を開く。

    「一つ目に関して言うと、たとえば、神事によって“8:異性”の相を解消したからといって、その意味するところは、自分好みの異性と恋愛をし、その結果、結婚できるようになる、ということを保証しているのではなく、あくまで霊的な重荷を取り除き、素の状態になった人物が魂磨きの修行に励めるようにお膳立てすることに他ならない」

    『そうでしたね。僕のように恋愛運の数字が低い人物は、霊障が解消しても異性絡みのトラブルがなくなるわけではなく、女性と様々な問題を起こすこと自体が魂磨きの一環ということだったと記憶しています』

    苦笑しながらそう言う青年に対し、陰陽師は笑みを向け、続ける。

    「二つ目に関して言うと、ワシは、自ら交信する“カミ/セントラルサン”からの回答を受信したり、そのパワーをクライアントに“転送”する能力はあるものの、自らが完全な存在では決してない。つまり、一人の人間として、必ずしも褒められる人間とは限らないというのも重要なポイントとなる」

    陰陽師の言葉に対し、驚きの表情を見せながら青年は口を開く。

    『先生のお考えやお人柄を見知っている僕としては、尊敬できる人物だと思いますが、属性表の内容が我々と大きく異なる人物からしたら、また違った評価をされることもあるのでしょうね』

    「その通りじゃ。新興宗教の教祖よろしく、自らを“生き神様”などと規定すること自体、“カミ”を恐れぬおこがましい行為じゃし、陰陽師/霊能力者がその能力を行使するにあたり、“何が善であり何が悪なのか”という自分なりの判断基準を持つことが必要不可欠じゃ、とワシは思う」

    『地上天国を目指している新興宗教とは異なり、完全な存在である必要も、目指す必要もなく、各人が魂磨きの修行に生まれてきているわけですからね』

    青年の言葉に、陰陽師は軽く頷いていから、再び口を開く。

    「それに、本物の陰陽師/霊能力者は、その職責として、“カミ”とは“公平無私”なる存在であり、利害の異なる個々人のいずれにも加担することのない存在であることを、あらゆる機会をとらえ、一人でも多くの人々に伝える義務を負っているわけじゃ」

    『なるほど。そして、先生のような陰陽師/霊能力者は、あくまで霊媒、“カミ”の言葉の通訳者に過ぎず、しかも“本物のカミ”の言葉であるから、特定の人物のみに利益をもたらしたり、特別扱いするような内容にはならないと』

    「その通りじゃ。新興宗教の教祖は、自分のみが通信可能な“神”を共有したり、その“神”を偶像化し、信者/クライアントたちにそれを祈るよう強要しているが、それこそが“邪道”なわけじゃ」

    陰陽師の言葉に対し、青年は少し唸ってから口を開く。

    『眷属や邪神にすがることは“邪道”、せっかく現世利益が叶えられたとしても、崇めるのを止めた瞬間にしっぺ返しをくらい、得た物を失ってしまうとするなら、眷属や邪神は最初から存在しなければいいのに、と思います』

    「そなたの言いたいこともわかるが、そのあたりが“この世は修行の場”たる由縁で、魂2:貴族(軍人・福祉)に観音と不動明王の役割があるように、眷属や邪神にも、この世の善悪を超えた役割があるのじゃよ」

    『とおっしゃいますと?』

    「たとえ全ての神事を受けてパフォーマンスが100%になったとしても、眷属や邪神を頼ることをやめられない人はいるわけじゃし、日々の過ごし方によっては、他者の念や雑霊/魑魅魍魎を拾ってしまい、魂磨きの修行から遠のいてしまう人も少なからずおるのが、この世の常なのじゃよ」

    青年は腕を組み、しばらく黙考した後、口を開く。

    『つまり、魂磨きの修行も一本道ではなく、常に修行の道から外れないように“不動心”を養わなければいけないという、いつものお話に帰結するわけですね』

    「まあ、そういうことじゃ」

    青年の言葉に頷きながら、陰陽師が言葉を続ける。

    「そなたも、それなりにあの世とこの世の仕組みを理解してきたようじゃな」

    そう言い、頭を下げる青年を横目に、陰陽師は壁時計に視線を向ける。
    それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

    『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

    そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

    「気をつけて帰るのじゃぞ」

    陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。

    帰路の途中、青年は陰陽師の言葉を反芻していた。
    人生の目的が魂磨きの修行であるということは、現世利益を求めることとは似て非なるものである。
    だが、平成までの“体主霊従”の時代とは異なり、“霊主体従”の時代へと変化を遂げる令和の中で、今世の宿題を達成することが副次的に“現世的な成功”に結びつくとするならば、現世利益的なことに一喜一憂する必要もなく、今まで以上に真摯に生きていけばいい。
    そう、青年は決意するのだった。

     

  • 天命と転生回数②

    新千夜一夜物語第10話:天命と転生回数

    『今の時代、科学やITといった理系の分野の方が重要視されている気がしますが、200回以上の文系の人が世の中の影響に与えている分野というものは具体的にどのようなものがあるのでしょうか?』

    「もちろん、200回以上の人物にも一割くらいは数学者や医者といった理学系もおるわけじゃが、スポーツ選手・芸能人・芸術家などは当然のこととして、面白いのは板前やコックといった、いわゆる料理人じゃ。彼らは先程話した2(3)-3という例外を除き、皆2(7)-3という大山に位置しておる。三ツ星レストランのシェフは言うに及ばず、そこら辺にある大衆食堂のコックも皆この属性を持っているわけじゃな」

    『なるほど』

    「料理などは女の仕事ぐらいに思っておるかもしれんが、こと職業となると、動植物の尊い生命をいただくことになる食を司るということは、実は、非常に大事な、そしてとてもレベルが高い職業というわけじゃな」

    『確かに、料理人は文系の領域という感じがしますし、食物連鎖の頂点に立つ我々人間は、他の生き物の命をいただくことで命を長らえていますものね』

    意気込んでそう話す青年の言葉に小さく頷くと、陰陽師は言葉を続けた。

    「ところで、おぬしは日本の食文化の水準が高いということを聞いたことがあるかの?」

    『あります』

    「実は、食の有名人というのは今説明したように大山の270回台となるわけじゃが、日本人の“3:ビジネスマン階級”の割合が世界に比べて13%ほど高い」

    『ということは、20%に13%をたして、魂3の人が日本には33%もいるわけですか』

    「しかも、それだけではない。同じ魂3の中でも我が国の魂3は2期と3期が圧倒的なことから、日本の食文化のレベルが高いのもある意味当然といえば当然ということになる」

    『なるほど』

    「それだけではないぞ。この特徴は昭和40~50年代の、いわゆる、QC活動などにもいかんなく発揮された。全世界的にみて工場労働者は圧倒的に魂4が多いのじゃが、日本ではそうではなかった。流れ作業で働く彼らの中から様々な提案が生まれ、それが世界に名だたる生産技術の礎になっていったわけじゃ。産業革命を成し遂げたにもかかわらず、工場で働く労働者を監視するためにスーパーバイザーをつけ、そのスーパーバイザー達を見張るためにスーパー・スーパーバイザーをつけなければならなかったイギリスやアメリカと違い、日本の場合は、脳を持った働きアリが多数工場労働者の中に混在していたというわけじゃな」

    青年を横目で見ながら、陰陽師が話を続けた。

    「以前我が国の魂1にはほぼ1-1しかいないと言ったが、これなども上場企業のトップが2-3の武将という世界の常識からすれば非常識ということになり、これが欧米のトップダウンに対し、ボトムアップという日本独特の企業風土を生み出す源泉ともなっておるんじゃ」

    『つまり、魂の属性や転生回数の割合というものは国によって異なるものなのですね! 興味深いです!』

    「割合の違いは国にとどまらず、たとえば各県によっても異なったりする。一例を挙げるとすれば、京都などは人口の9割近くが2期(200回台)の“4:ブルーカラー階級”によって占められておる」

    『9割って、ほとんどじゃないですか!』

    「京都と魂の階級4の話は長くなるので、また別の機会に話すとして、もう少し転生回数と職業の関係について説明をしておくとしよう」

    陰陽師はグラスに注がれた水を飲み、口を開く。

    「たとえば、各省庁のキャリアの国家公務員の99.9%は2(7)−3じゃし、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教のいわゆるキリスト教三兄弟を等含め、伝統・新興の別なく宗教の開祖以外の坊主はそのほぼすべてが2(8)-3となる」

    『宗教の開祖のほとんどは1(7)−1すなわち、転生回数が300回台の“1:先導者”階級なのでしたね。僕は2(3)なのでスピリチュアルには縁があるものの、坊主になる天命ではないのですね』

    「端的に言うと、そういうことになるな。じゃから、くれぐれも何かに感化されて出家したり、仏道の修行を始めようなどと考えたりせんようにな」

    思い当たる節があったのか、青年は一瞬体を硬直させる。そんな青年の様子を見、微笑みながら陰陽師は口を開く。

    「もう一つ例を挙げると、1-1以外の第1期(301〜400回)の魂を持つ人間には、変人が多いという特色もある」

    『変人ですか・・・。大学4年生になると、進路も決まって卒業に向けて人それぞれ自由な行動を取っていくと思うので、なんとなくわかるような気がします』

    過去の自分の体験を思い出してか、青年は苦笑して頭をかきながら言った。

    「しかし、これらも魂の修行の追い込みの時期に指しかかっている第一期の人間の特徴を現世的に見るとそう見えるという意味に過ぎないことは先ほど説明した通りじゃ」

    『はい、きちっと了解しています』

    青年は、一つ頷いてみせた。

    『ところで、3期の人たちは大学生でいうと2年生ですよね。サークルにも単位の取り方にも慣れて、ある意味もっとも大学生活を満喫している時期とったところでしょうか?』

    「3期の人物は世の中に革新を起こす人が多いことも含め、現世的にみてもとても勢いがある。その結果、現世利益に走る傾向の人間が多い。その反面、少し失礼な言い方をすれば少し品がなかったり、世間から白い目で見られがちだったりもする」

    『猪突猛進みたいな印象ですね。欠点があるかもしれませんが、それを補って余りある世の中への影響力があるような』

    「もちろん、その前提として人間は多面体のようなものじゃから、転生回数という側面から見るとそのような理屈が当てはまるものの、たとえば頭の1/2から見ると一概に当てはまらなかったりする。それにじゃ、何度も言うが、これらの特徴を良し悪しで考えることは禁物じゃ。現世的にどのような特色を有していようと、それらはみな各々の転生回数で最適な魂の修行をするために必要な体験なのじゃからな」

    『そうですね。全く記憶にございませんが、僕にも3期だった人生があったんですもんね』

    突然、青年は難しい顔をして黙り込む。陰陽師は微笑みながら青年が口を開くのを待つ。

    『ところで、400回の輪廻転生を終え、魂の修行が完了した後、我々の魂はどうなるのでしょうか?』

    恐る恐る口を開く青年。

    「最後にその話をして今日は終わるとしようかの」

    陰陽師の視線を追って青年が時計を見ると、23時を過ぎていた。

    「魂の誕生から400回の輪廻転生を経ると、その魂は永遠の生命を取得して“セントラルサン”の元でそれぞれの職責を担う。この職責というのは鑑定結果のように四つの階級に分かれておる」

    『“セントラルサン”と永遠の命についてはよくわかりませんが、あの世でもこの世と同じく魂1~4という階級がついて回るのですね。ただし、それらは上下関係ではなく、あくまで役割の違いと』

    「というよりも、我々の魂は、それぞれ魂1~4に見合った職責を果たすために、“カミ“によって作り出されたと考えた方がわかりやすい。そもそも3次元でないわけじゃから、永遠の生命においてどのような職務があるのかはともかく、明確な目的をもって各々の魂が生み出され、400回という輪廻転生を経て独り立ちした魂が、“セントラルサン”の元でそれぞれの職責を担うという仕組みなわけじゃな」

    小さく頷く青年を横目に、陰陽師は話を続けた。

    「さらにじゃ、正しく理解しないとならないのは、あの世と“セントラルサン”がまったく別の世界/領域だという点じゃ」

    『永遠の世とあの世が違うということはなんとなくわかりましたが、それじゃあの世で我々は何をしているのでしょう?』

    首を傾げながら青年は言った。

    「まず基本的な問題として、あくまでもあの世で魂は誕生する。さらに大事なことは、400回の修業が終了するまで、魂の本体は常にあの世にいて、その“分け御霊”みたいなものがこの世とあの世を行き来するという点じゃ。また、あの世とこの世を機能面で分類すると、この世が魂の修行の場という、スポーツジムのような世界だとすると、あの世は修行を終えた魂の休息場所であるとともに次の転生に向けた計画を練る場所といった側面を持っていることになる」

    『なるほど。だから、あの世で28年間休んでから、ふたたびこの世に転生するのですね。トレーニングも休まずに続けていたら逆効果でしょうし』

    「もちろんあの世は3次元のこの世のように過去から未来に向けて時間が一直線に流れているわけではないから、一概に時間的な表現は難しいとしても、この世を基準とした計算ではそのようになる」

    さらに陰陽師は、言葉を続けた。

    「それともう一つ。伝統・信仰宗教が想定する“天国”とか“極楽浄土”という言葉には、“善“以外のものは存在しないイメージがあるが、実際の”セントラルサン“の存在する世界/領域はそうではない。同一の魂同士が集まっているあの世と違い、”セントラルサン“の存在する世界/領域では、たとえば、1-1-1-1-1という数字を持った魂1~4が同一チームを構成して、共通の職責をこなしている。同様に、1-1-1-1-2という数字をもった魂1~4は別チームとして他の職責を果たし、1-1-1-2-2という数字を持った魂1~4は魂1~4で、また別の職責を果たしているといったイメージとなる。このような検証に基づけば、血脈ではなく”霊統のご先祖“や”ソウルメイト“といった問題も、この分類に従うということになる」

    『ということは、魂の特徴を表す五つの数字は魂の誕生以来ずっと不変ということなのでしょうか?』

    「そのとおりじゃ。“イワナ”と“ウナギやナマズ”が一緒に生活するのが無理なように、五つの数字や鑑定結果が異なる人物同士が一緒にいると何らかの不調を感じるのは、魂のチームが異なることで生じているともいえよう」

    『ビジネスや恋愛・結婚の相性が魂の階級や属性で異なることも納得しました。鑑定結果の魂の諸々が近い人物の方が、相性が良いと認識しています』

    「他にも相性の良し悪しの条件はあるが、その傾向が強いことは間違いのない事実じゃ」

    陰陽師は時計を再び見、書類を片付け始めた。

    「それと、先述してきた五つの数字における1/2の“別”は、ともすれば“光が光たるためには影が必要”と捉えがちであるが、そのような“善と悪”の分類そのものが、“思議”(人間の考えが及ぶ世界)の世界の概念なのじゃ。そもそも、そのような“分類”そのものが、400回の輪廻転生を終えたあとの世界では、何の意味もないわけじゃからな」

    『未知なる世界の話ですね・・・“セントラルサン”や永遠の生命についてはまた今度聞かせてください』

    青年は深々と頭を下げる。陰陽師はいつもの微笑みで彼を見送るのだった。

     

  • 天命と転生回数①

    新千夜一夜物語第10話:天命と転生回数

    青年は鑑定結果と天職診断の紙を並べ、思索にふけていた。
    自分の天職がわかったものの、なぜあの三つだったのか。天職はどのように決まるのか? 魂の属性や輪廻転生の回数によって今世の役割や性質は変わるのだろうか? 

    次々と疑問が浮かんでくるものの、一向に納得できそうにない。
    居ても立っても居られなくなり、青年は再び陰陽師の元を訪ねるのだった。

    『先生、先日の続きをお願いいたします』

    「今日は輪廻転生の回数と今世の役割について、じゃったな」

    陰陽師は紙とペンをテーブルに広げ、続けた。

    「まず、転生回数と今世の役割というものは、そなたが思っているよりも厳格なものだということはよく覚えておいて欲しい」

    背筋を伸ばし、真剣な表情で青年は頷く。

    「転生回数の四つの数字の持つ意味じゃが、それらをそれぞれ大学生活に置き換えるとわかりやすいかもしれん」

    『大学生活ですか?』

    「うむ。転生回数が4期すなわち1回〜100回は大学一年生、3期すなわち101回〜200回は二年生、2期すなわち201〜300回は三年生、1期すなわち301〜400回は四年生といった具合にな」

    鑑定結果を取り出し、青年は口を開く。

    『と言うことは、僕は200回台なので、大学三年生に当たるというわけですね』

    「その通りじゃ。三年生といえば、ゼミに所属したり就職活動にむけていろいろ考える学年じゃから、物質的な話よりも精神世界や魂の年齢を見据えたことを考える時期とも言えよう」

    『そうですね。物質的なことよりは自然や宇宙といった精神世界の方に興味があります』

    「魂の年齢的にも半分を過ぎ、それなりにあの世とこの世の仕組みを理解しやすい時期に差し掛かっていたからこそ、今世は魂の修行の場という話も腑に落ちやすかったじゃろうな」

    首肯する青年。

    『とてもわかりやすかったです。ちなみに、僕は230回台ですが、10回台の数字にも違いはあるのでしょうか?』

    「もちろん。輪廻転生回数の100の位や魂の階級の1〜4に限らず、30回台は総じて魂の属性が3の人間にとっては心身ともに不安定となりやすいという特徴がある。そうした不安定な心身と向き合うことで、結果的に選ぶ職業がスピリチュアル系となる可能性が極めて高くなるわけじゃな」

    『確かに。僕も天職ベスト2位に気功師があったのもその一貫なのですね』

    「さらに言うと、鑑定結果の中には陰陽五行に基づいた長所と短所という項目があるのじゃが、その中の長所19.という項目である“不思議な経験”のスコアが高得点である可能性が極めて高い」

    『そうなのですね。ちなみに、僕の“19.不思議な経験”のスコアはどれくらいなのでしょうか?』

    「ちょっと待ちなさい。今、鑑定してみよう」

    陰陽師は半眼になって集中し、指を小刻みに動かし始める。青年は固唾を飲んで見守っている。

    「そなたのスコアは73点。どちらかというと高い方じゃな」

    『何点以上ですと高いということになるのでしょうか?』

    「明確な基準で言う“高い“は80点以上となる。ただ、100点満点であるため、100点に近くなるにつれて霊障による心身へのダメージは二次関数の曲線のように大きくなっていくことになる」

    『僕のこれまでの人生はそこまでぐちゃぐちゃではありませんでしたし、霊的な経験があると言ってもそこまでひどい霊障はありませんので、そのあたりの話はじゅうぶんに納得できます』

    頷きながら青年は言う。

    「この傾向は、意味するところはちょっと異なるが、実は魂の属性7(唯物論者)の人にもあてはまる」

    『とおっしゃいますと?』

    「端的に言うと、魂の属性3の人間のように霊的な問題はまず生じないものの、人生が一般の人間とはかなりずれているという意味では、“19.不思議な経験”の範疇に入るというわけじゃな」

    『なるほど』

    「具体的な例を挙げると、テレビの番組で、“客の来ない店”といった趣旨の番組があるじゃろう。職種は様々だとしても、彼らのほとんどは転生回数が230回台となる。本来調理人は武士・武将問わず2(7)(=270回台)の職業なのじゃが、一日に一人ぐらいしか来ない食堂を十年以上も経営している店主などは、例外的に2(3)(=230回台)なことが多い」

    『精神世界に興味を持たない属性の人たちでも、同様に30回台という輪廻転生の影響を受けているのですね。意外です』

    「魂の属性7の人たちの多くにとっては、このようなメカニズムを受け入れることは難しいかもしれんが、魂の修行という意味ではおしなべてそういうことになる」

    『ちなみに、他にも特徴はあるのでしょうか?』

    「芸能関係の仕事に就けるのは2−3−5−5・・・2で、さらに転生回数が240回台、数字で言うと2(4)−3の人間に限られるという話を前回したと思うが、それ以外にも魂には“山場”というものが存在している。“3:ビジネスマン階級”だけは、第3期の190回台、数字で言うと3(9)−3の時期に例外的な“大々山”があるのじゃが、それ以外の魂は、100回ずつに区切った各40回台が小山、そして70回台、数字で言うと、1~4(7)−3が大山という仕組みになっておるわけじゃ」

    『転生回数でそこまで決まっているのですね』

    興奮気味に青年は言う。

    「芸術家・芸能人やプロのスポーツ選手とお笑いタレントたちが畑違いの歌・楽器演奏や絵画・小説、伝統芸能といった芸能分野でも才能を発揮することができるのは、彼らが共通して2-3-5-5・・・2という数字をもっているからなのじゃな」

    『確かにそうですね。僕でも、お笑い芸人が本を出版したり、画家として有名になるケースをいくつか知っています』

    「転生回数についてもう少し補足をしておくと、世に言う文系と理系のうち、転生回数が少ない3期と4期は理系、後半になる1期と2期は文系という傾向が顕著となる」

    『大まかに文系と理系までわかるのですか! では、3(9)−3はどんな業界になるのでしょうか?』

    「3(9)−3はどちらかというと理系になるわけじゃから、ソフトバンクの創業者の孫正義や楽天の三木谷浩史のようなIT業界で革新的なことを行う人物はもちろんこれに該当するし、1(4)-1であるパナソニックの松下幸之助を唯一の例外として、現在の一部上場企業上位400社の創業者たちも、皆3(9)-3となる」

    「え、そうなのですか」

    「それだけではない。たとえば、医者もほぼすべてがそうじゃし、理系分野のノーベル賞を受賞する人物も皆この時期となる」

    『科学は人類の発展に大きく貢献しているので、転生回数が多い人たちなのかと思っていました』

    「200回以上が文系ということをふまえると、極端な言い方をしてしまえば、アインシュタインよりもお笑い芸人の方が魂としては上位ということもいえるわけじゃな」

    体を揺すりながら陰陽師が笑うと、青年もあまりに突拍子のない話につられて笑う。

    『輪廻転生100回台において3(9)−3が大々山ということは、彼らが芸能界で活躍することもあるのでしょうか?』

    「実は、先ほど厳格だと言った理由がそこにあるわけじゃが、一見無秩序に見えるこの世は、その実、各人が様々な宿題を抱えて転生してくる“魂磨きの場“としての機能として、見えない厳しいルールが多数存在しておるんじゃ。たとえば、3(9)−3、しかもその後5-5…2という番号を持った人物が何かの間違いで芸能界に迷い込んだとしても、この世からその時期はともかくとしても“排除命令”が出る仕組みとなっておる。しかもその“排除命令”はかなり強烈なもので、たとえば若くして不治の病にかかってみたり、精神に異常をきたしてみたり、事故に遭ってみたり、犯罪に手を染めてみたりと、かなり徹底している」

    『ということは、テレビやネットでよく見かけていた芸能人が、突然姿を消してしまうのはそうした理由なのでしょうか?』

    「業界が業界だけに複雑な事情があって一概には言えんが、その可能性は極めて高いじゃろうな」

    神妙な表情で青年は何度もうなずき、やがて口を開く。

    (続く)

     

     

  • 魂の属性②

    新千夜一夜物語第9話:魂の属性とこの世の善悪

    『ええっと、まず一番目の1/2は文字通りの“善悪”、別の言い方をすれば“執着”で、二番目の1/2は世の中に対して“厭世的”というか、“世の中に対し斜に構えている”性格かどうか。三番目の1/2は、他人に対しての“攻撃性”があって愚痴や文句が多いかどうか。四番目の1/2は、“人に受けた恨み/つらみを忘れず、執念深く覚えている”という性格かどうか。五番目の1/2は、“自己顕示欲”で、スポーツ・芸能・芸術を始め一般的な生活を営むにあたり必須な性格かどうか。おおまかに言うとこんな感じだったかと・・・』

    「細かい部分はさておき、大意は把握しているようじゃな」

    陰陽師が短く頷くのを見、青年は安堵のため息を吐く。

    「先日も言ったことじゃが、この1/2は世間でいうところの善悪ではないからの。あくまでその人が持っている性質というわけじゃから、全て1だから優れているとか、全て2だから迫害されるべきだとか、そういった意味ではないことをくれぐれもはき違えぬようにな」

    『前回ご教授いただいたように、これらの違いは、上下関係はなく、個性や性格の違いという感じで捉えています』

    真剣な表情で青年はうなずく。

    「そうであれば話を次に進めるとするが、そなたの場合、魂の属性3じゃから霊媒体質。中段と下段の1は“1・3・5・7・9”と五つの数字に分かれ、中段の1は霊媒体質の強さ、下段の1はそなたが魂1のグループに属性しているということを示しておる」

    『僕の場合、霊媒体質がもっとも強いグループなのですね。下段が1ということは、もっとも優れているグループという意味ではなく、あくまで1に所属していると』

    青年の言葉を聞き、陰陽師は満足そうに頷く。

    「次の魂の性質じゃが、上段の数字は4と7がある。ここもわかりやすく言うと性格のようなものを表しており、4の人物は温和で争いを好まず、周囲の意見に協調しやすい性格を有しているのに対して、7の人物は自分の主義主張をハッキリ表現する傾向が顕著じゃ」

    『僕の場合は4なので温和で同調しやすい性格なのですね。それなりに自覚があります』

    「下段の数字は“親近性”を示しておるのじゃが、1に近いほど裏表がない性格となり、9に近づけば近づくほど、腹に一物があったり、二枚舌であったり、性格が荒くなる傾向がある」

    『ということは、上段の数字が7で下段の数字が9ですと、世間一般でいう犯罪者タイプということになるわけなのでしょうか?』

    「いささか極端な表現ではあるが、そう理解してもらっても問題ないじゃろうな」

    『なるほど、了解です』

    「7(9)を世間一般でいう犯罪者タイプとすると、その対になる4(1)に近づくほどよさそうな印象を受けるじゃろうが、実はそう単純な話でもない。上段の数字が4であっても下段の数字が9の人物の場合、表面では同意している素振りを見せておきながら裏では言葉と裏腹の行動を取る可能性が高いのみならず、時には、世間を騒がすような重大事件を引き起こしたりもする」

    『つまり、誘拐事件や殺人事件ということですね』

    「そのとおりじゃ」

    『しかし、それでは4(9)であれ、7(9)であれ、どちらも悪者ということになるじゃないですか』

    「そう言ってしまうのとその通りなのじゃが、4と7の違いをもう少し具体的に説明すると、同じ事件を起こしても、4(9)の場合は、周りの人間がどうしてあの人がこんな事件を、と驚くに対し、7(9)の人間が同じ事件を起こした場合、周りの評価は、あの人ならそんなことをしでかす可能性は大いにある、といった具合になるわけじゃな」

    『なるほど』

    「一方これが9(9)あたりになると、周囲の評価は、あの人間ならいつかはこんな事件を起こすと確信していた、となるわけじゃな」

    納得顔で頷く青年を横目で見ながら、陰陽師は先を続けた。

    「話を4と7に戻すと、たとえば、4(5)と7(1)の人間の場合、その後ろに続く数字が1-1-1-1-2と共通しているため、基本的な性格の強さがほぼ等価ということもできるのじゃが、4(5)が何かの提案に対して同意を示したとしても、その実腹の中では真逆のことを考えている可能性があるのに対し、7(1)の場合は、納得できないことにははっきりとNOと言う反面、一度YESと言ったことには最後まで責任を持つといった傾向が強い」

    『つまり簡単に言うと、7(1)の人間の方が自分の主義・主張をハッキリしてくれる分、行動が荒いのかもしれませんがまだわかりやすそうですね』

    「じゃからこそ、一部上場企業の大方の社員や世を動かす多くの人間は、ここの番号が7(1)か7(3)になっているわけじゃがな」

    『なるほど』

    「繰り返しになるが、今までの説明はあくまでも各々の数字を持った魂がこの世でどう見えるかという話であって、それをもって魂や人間の優劣を決めるものではないということをよく理解してほしい」

    『了解しました』

    大きく頷く青年を横目で見ながら、陰陽師が話を続けた。

    「今まで説明してきた善と悪という概念についてより正確な認識を持ってもらうために、今度は別の例を使って説明しよう」

    『お願いします』

    陰陽師は紙に二つの図を描き、説明を始める。

    「例えば、そなたのように善側の人間を“清流に住むイワナ”、悪側の人間を“下流の沼地に生息するウナギやナマズ”と分類したとすると、両者が一緒に生活をすることには、生物学的に考えて無理があると思わんか?」

    『たしかに、おっしゃる通りだと思います』

    「実際、繊細な魂にとってはその影響は深刻で、たとえば、同じ2(転生回数)-3(魂の階級)-7(具体的気質/OS)-3(具体的性格/ソフト)、魂の属性が3(霊媒体質)の人間同士であったとしても、7(7)(魂の性質と親近性)-1-2-2-2-2(魂の現世における特徴)といった数字を持つ人間と一定の関係を持つだけで、潜在的に抱える精神性疾患が一気に顕在化/深刻化することさえある」

    『一定の関係を持つだけで、ですか。そういえば、相手が特に何かをしたわけではないのに、一緒にいるだけでイライラしたことがあるのはそうした理由だったのかもしれないわけですね』

    陰陽師は首肯して答える。

    「とはいえ、その事実をもって、イワナが“善”でウナギ/ナマズが“悪”だという意味では決してない。現世でこの五つの数字を分析するとそのような結果になるという話であって、それをもって各人/魂の優劣の基準となるわけではないことは先ほども説明した通りじゃ」

    『はい!』

    青年は大きく首を縦に振る。

    「転生回数と魂の善悪の説明をしたことじゃし、いよいよ転生回数と今世の役割について説明したいところじゃが」

    陰陽師は時計を見、青年もつられて時間を確認する。

    「今日はもう遅い。また次回に話すことにしよう」

    『今日も遅くまでありがとうございました。またよろしくお願いいたします』

    青年は席を立って頭を下げ、部屋を後にする。
    善悪というのは表現や見方であり、立場や性質の違いに過ぎないのだということを再び自分に言い聞かせ、青年は玄関の扉を開けるのだった。

    ご自分に先祖霊による障害があるかどうかか気になる方は、

    までご連絡ください。

  • 魂の属性①

    新千夜一夜物語第9話:魂の属性とこの世の善悪

    青年は苦悩していた。

    陰陽師から渡された鑑定結果の解読を試みるものの、基本的には数字で記載されているため独力での解読は不可能に近い。
    過去に解説を受けた部分を復習した後、青年は解読を諦めて陰陽師の元を訪ねるのだった。

    『先生、またわからないことがあってお邪魔しました』

    「ずいぶんと熱心に訪問するようになったの。つい先週は何もかもがどうでもよくなっていたはずなのに」

    体を揺らして笑う陰陽師に対し、青年は苦笑して応えた。

    『魂について僕が聞いていない部分がありましたら、教えていただきたいです』

    「そう言うことであれば、今回は鑑定結果の補足をしつつ説明していくとしよう」
    陰陽師は青年の鑑定結果の紙を取り出す。

    スクリーンショット 2019-11-30 12.06.39

    「まずは、頭の1と2じゃが、1は農耕民族型で2は狩猟民族型の子孫だと理解するとわかりやすいと思う」

    『はあ、1は農耕民族型で2は狩猟民族型の子孫でしょうか?』

    「その通りじゃ。まず、1の農耕民族だが、農耕民族の長所を演繹すると、自分のことより他人のことを優先する、協調性がある、世のため人のためなんて考えている、となる」

    『なるほど』

    「それに引き換え、2は狩猟民族の末裔ということから、物事を損得で考える傾向が強いので、結果、自己中心的な傾向が強いということになる」

    『それで、僕は1なのですね』

    「そうじゃ。時間の概念を理解し、長いスパンで受け継がれる本質を好む。気功や瞑想といった、道具を使わずに自浄作用の効果がある術とも相性がいい」

    『それでは、2の人は?』

    「全般的に、まず体が丈夫じゃ。そして、見た目が派手でわかりやすい事を好む。短期集中や道具との相性がいい。日本人の比率は、(頭の1):(頭の2)=3:7と、頭が2の人の方が多い。地球全体の1と2の比率が2:8じゃから、日本人は優等生と言うことができるじゃろうな」

    『では、次の2(3)は?』

    「ここが輪廻転生の回数となる。これは万人例外なく400回と決まっておる。で、そなたの場合は230回台じゃ」

    『それでも、半分以上終わっているのですね。といっても、まったく実感がわきませんが』

    頭をかき、苦笑する青年。陰陽師は微笑んで応える。

    「ここで大事なことは、人生にも年齢によって波があるように、魂にも波のようなものがある。あの世の仕組みがこの世の仕組みに反映されているわけじゃからな」

    『400回の転生回数を、魂の年齢と捉えればわかりやすい気がします』

    鑑定結果の数字を眺めながら、青年は口を開く。

    『ちなみにですが、転生回数と天職には相関関係みたいなものは存在するのでしょうか?』

    「天職診断は依頼者の魂をベースに鑑定を行うが、転生回数とも一定の程度の因関係がもちろん存在する」

    『やはり、そうなのですね』

    「それを理解するには他の部分の鑑定結果の意味を知っておくと話が早い。次は魂の種類の項目を説明しよう」

    陰陽師は次の数字を指しながら言った。

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    「魂の種類1〜4というのは、以前話したように4つの階級を表しておるのじゃが、そなたの場合は3(1)じゃからビジネスマン階級となる。そして、下の四角の上段の数字が2じゃから、武士というわけじゃな」

    『もし下の四角の上段の数字が3の人の場合は武将となるのですね』

    「その通りじゃ」

    『それでは、下段の数字はどのような意味を持っているのでしょうか?』

    「そこは“程度”の様なものを表しており、そなたはどちらも(1)じゃから、ビジネスマン階級としても武士としても最も位が高いということになる。位は1・3・5・7・9と五段階あるのじゃが、その意味するところは上下関係ではなく、担う役割が大きい、くらいに認識しておくとよい」

    『数字が低い方が、あえてわかりやすい言い方をすると位が高いのですね。誤解しないように気をつけます』

    陰陽師は首肯して応える。

    『次の“+2”ですが、これは何でしょうか?』

    「それは、”目に見えないことをどのくらい信じるか”を表しておる。+1~9という段階があり、こちらも1が最も信じやすいことを意味している」

    『僕は、2番目に目に見えないことを信じやすいグループに属しているわけですね』

    「そう言うことじゃな。逆に、霊障がない人や唯物論者/超現実主義は“+9”に近い」

    青年は何度もうなずいて納得の意を示す。

    「霊障がない人や唯物論者/超現実主義というのも、実は鑑定結果で表れておるんじゃ」

    『そうなのですね。育った環境や人生経験によるものだと思っていました』
    そう言い、青年は鑑定結果を食い入るように見つめる。

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    「ここでいう、魂の属性の一番上の段の数字が該当する。ここは5%ほどの例外があるものの、基本的には3か7しかない。以前にも少し触れたが、先祖霊の霊障がある、すなわち霊媒体質の人物は3となる。一方、先祖霊の霊障がなく、霊媒体質でもないために精神世界や気といった現代科学での証明が難しい存在を感じとることができない人物は7、簡潔にいうと唯物論者というわけじゃな」

    『そういうことがあるのですね! そもそも感じることができないなら、いくら論理的な説明をしても、目の前で通常では考えられない出来事が起きても信じられないのもわかる気がします』

    「もちろん精神世界や宗教に興味があるというのはまた別な問題になってくるのじゃが、少なくとも“感じる”という意味ではその通りじゃ。また、その比率は魂の属性3の人間の方が圧倒的に少なく、だいたい三七くらいの割合と理解して差し支えないじゃろう」

    『意外でした。そんなに差があるのですね。ちなみに、霊障がある人とない人とで、肉体的な違いはあるのでしょうか?』

    「主な違いは経絡とミトコンドリアと言われておる。7の人は3の人の経絡の半分しかなく、ミトコンドリアの機能も違う。その結果として、3の人は東洋医学と相性が良く、7の人は西洋医学と相性が良い。同じ病で同じ治療を受けても生還する人と助からない人がいるのは、3と7の違いである可能性が高い。7の人は先祖霊の霊障がない、すなわち見えない世界に対する感度がほとんどないため、気功といったエネルギーを体感することができず、その結果、効果が薄い。その代わり、18世紀の産業革命以来の物質文明の延長線上にある西洋医学の薬が効きやすいという特徴をもっておる」

    『ということは逆説的な言い方をすると、薬の副作用が大きく出る人は魂の属性が3の人ということでしょうか?』

    「そういう傾向は間違いなくあるじゃろうな。それ故、魂の属性を把握しておくことで、体調を崩した時に望ましい治療を選びやすくなるということになるわけじゃ」

    『僕は東洋医学、漢方や鍼灸や気功と相性がいいのですね。気功をやっていてよかったです』

    深くうなずく青年を見、陰陽師は微笑む。

    「次は、真ん中の段と一番下の段の意味じゃが、ここは次の“魂の性質”と前回触れた“魂の善悪”(執着)を交えて説明しよう。覚えておるかな?」

    突然の質問に、青年は慌てふためいた。

    (続く)

    ご自分に先祖霊による障害があるかどうかか気になる方は、

    までご連絡ください。

  • 言霊とお経

    新千夜一夜物語第7話:言霊とお経

    神事を受け、陰陽師の話を聞くにつれて青年は宗教にも興味を持ち始めた。彼なりに調べた後、祖母がよく唱えていたお経について、彼は後日質問することにした。

    『世の中には、お経を読んでいれば人生がよくなると言っている人もいます。僕も言霊の力を信じていて、お経もその延長ではないかと思っているのですが』

    「では、そなたはそのお経を読んでいる人は全員幸せと思っておるのじゃな?

    『もちろん、全員ではないと思います。中にはせかせかして疲れているような人もいましたし、勧誘してきた人の方が僕よりも不幸そうだと感じたこともあります』

    「そうじゃろう?」

    『ですが、“新訳聖書”(“ヨハネによる福音書”)の冒頭に、“はじめに言(ことば)があった。言は神とともにあった。万物は言によってなった。なったもので、言によらずなったものは何一つなかった”という一節を読んだことがありますし、バラモン教ではバラモンが賛歌や祝詞を唱えて神を動かしたという説もあります。そのような点から考えてみても、やはり、言霊の力は存在すると思います』

    「ほほう、今回はそれなりに勉強したようじゃな」

    『そりゃあ、少しでも幸せにはなりたいので、とりあえずできることはやってみようと思ったんです』

    「なるほど、それはなかなか感心な心がけじゃ。しかし、今の質問じゃが、いきなり結論を言ってしまうと、言霊にはたしかに一定の力が宿っていることは否定せんが、最終的に現実世界に影響を及ぼしているのは“身口意”の三つなので、言葉だけに捉われない方がいい」

    『今おっしゃった“身口意”とはどういう意味ですか?』

    「簡潔に説明すると、身とは行動、口とは言葉、意とは心のことじゃ。そなたが言った“はじめに言葉があった”という話も、わかりやすく“神”という概念がエネルギーとして存在していると仮定すれば、言葉を発する前に“世界を創造しよう”という心があったということを説明していることになる」

    『つまり、言葉が初めからあったわけではなく、まずは心が先にあったのですね。そういえば、先生はその人の名前がわからなくても鑑定ができるとおっしゃっていましたが、それは名前つまり、言葉よりも思考している存在というか、心、魂にアクセスしているからなのですね』

    「まあ、簡単に言うとそういうことになる」

    陰陽師は小さくうなずくと、言葉を続けた。

    「そしてそうだということは、夢を叶えたいと思ってご利益がある言葉を繰り返し唱えていても、何もせずに、家で引きこもっているかぎり現実が変わることはないということになる」

    『言われてみればそうですね』

    陰陽師の言葉に小さく頷く青年。そんな青年を笑顔で眺めつつ、陰陽師は言葉を続けた。

    「じゃから、お経に限らず特定のありがたい言葉を繰り返し唱えて幸せになっている人というのは、お経を唱える以外にも何らかの行動をしている人で、幸せそうに見えない人というのは“身”、つまり行動がともなっていない人ということもできるわけじゃ」

    『なるほどです。特定の言葉を繰り返し唱えるだけで幸せになるのであれば、全員が幸せになれるはずですもんね。でも、実際にはそうとは言い切れませんものね』

    「さらにもう一言つけ加えるとすれば、お経などを唱えることより、何か想定外のことが起きても慌てずに目の前の出来事に対処できるよう“不動心”を身につけておくことが大切となる」

    『おっしゃることはわかりました。でも』

    青年は反論を試みた。

    『お経が今も唱えられているからには、それなりの理由があると思うのですが』

    「ふむ。ところでそなたは“般若心経”と“法華経“を知っておるか?」

    『“法華経”は詳しくは知りませんが、“般若心経”を毎日唱えていました時期がありましたので、内容についてもそれなりに理解しているつもりですが』

    「この二つを唱えている宗派は大乗仏教に分類されておるのじゃが、小乗仏教と大乗仏教の違いについてはまた別の機会にゆっくり話すとして、その二つの大ざっぱな違いくらいは理解しておるのかな」

    『その二つについては、ブッダが開いたということ以外、授業で名前を聞いたくらいで詳しくはわかりません』

    「まあ、そうじゃろうな。大乗仏教圏である日本や中国では小乗仏教と大乗仏教の区別ができる人間などほとんどいないわけだから、それはそれで致し方ないとしても、“仏教”をブッダの説いた教えと定義するのであれば、“般若心経”も“法華経”もブッダの直接の教えとは何の関係もないということができる」

    『え?! 仏教なのだから、ブッダの言葉や教えを受け継いでいるのかと思っていましたが』

    「簡潔に説明すると、“般若心経”はブッタの死後880年ほどして龍樹という人間によって創作された経典なのじゃが、“法華経”を始めいわゆる“大乗仏教経典”はすべてこの“般若心経”を下敷きとしておることから、龍樹は“大乗仏教八宗の祖“とも呼ばれているわけじゃ」

    「ということは、“般若心経”も“法華経“もブッタの言葉を記録したものではないのですね」

    「その通りじゃ。そして“法華経“は端的に言ってしまうと、ブッダをそっちのけにして大日如来・観音菩薩・弥勒菩薩という新たに捜索した神を崇めておるということになるわけじゃよ」

    『しかし、肝心のブッダはいったいどこへ行ってしまったのでしょうか…?』

    「どこへ行ったのかという話は説明すると長くなるので別の機会に回すが、このような話は大乗仏教だけの話ではなく、多くの宗教にみられる現象で、たとえばキリスト教なども厳密に言えばキリストの言葉ではなく、彼の教えを広めた人間であるペテロ、初期のローマ法王の影響が色濃く反映されておる」

    『そうなると、信者の人々は本当の意味での宗教の大元を信じているわけではないのですね…』

    「まあ、そういうことじゃ。簡単に言うと、お経にせよ聖書にせよ、結局は誰かがその人にとって“これは素晴らしい”と感じた言葉を自分なりの解釈でありがたがって唱えているわけであって、例えるならそなたが自分にとっての金言をそもそもの意味など気にかけずに繰り返し唱えているようなものなんじゃよ」

    『でも、実際にその誰かの言葉を繰り返し唱えることで人生がよくなった人がいるのも事実と言えば事実ですよね?』

    「それは“こんなに熱心にお経を読んでいるから自分は大丈夫だ”という安心感であったり、そうやって得た安心感によって現実に立ち向かい、結果として困難を乗り越え自信のようなものが培われたからじゃろう。結果の良し悪しは別として、挑戦し続けている人の方が世間では成功しやすいのではないかの?」

    『確かに、そうかもしれません。でも、挑戦し続けているのに報われないのはどうしてなのでしょうか?』

    「それには大きく分けて二つの理由がある。一つは先祖霊による障害や天命運とチャクラの乱れが原因であるケース。もし仮に、神事を受けたにもかかわらず報われないとするならば、それはそもそも選択する人生の方向性が間違っているということになる」

    『神事が終わっていても、選択する方向性が間違っているということもあるんですね』

    「身近な例をあげると、大事なプレゼンや試験があるのに、徹夜で睡眠不足のまま挑んでも成果は出にくいじゃろう?」

    『それはもちろんそうです!』

    「そして先祖霊以上に大事なことは、少し話が戻るが結局のところ、お経そのものに効果があるかどうかよりも、読み手が“霊能力”持ちかどうかの方が大事なのじゃよ」

    『それは、“霊能力”持ちの人がお経を読んだから効果があったということですか?』

    「それもそうじゃが、たとえば魂の階級が “1:先導者”かつ“霊能力”持ちでない人間が、その昔賛歌や祝詞を唱えたら天候に変化が起きたという事実を知り、自分もこの賛歌や祝詞を同じように唱えれば天候に変化が起きると思い込み、現代のお経のようにご利益目的で使われるようになったのかもしれんな」

    『でも、実際には賛歌や祝詞を唱えても効果はありませんよね? 少なくとも、僕が唱えてもダメな気がします』

    「しかし、偶然、天候が変わるタイミングと重なって唱えたら、効果があると信じる人も出てくる可能性も否定はできまいな」

    『確かにそうですね。何も知らない人にとっては奇跡が起きたと思って当然だと思います』

    「しかし、実際は偶然であって必然ではないし宗教の開祖にかぎってはお経を唱えることで何らかの効果を期待できたのかもしれんが、誰もが同じ効果を期待できると断言するのはどうしても無理がある」

    青年はうつむき、表情を曇らせた。毎日口癖のようにお経を唱えていた祖母を思い出したのだろう。

    「また別の観点から話をすると、特定の言葉を繰り返し唱えることによって一種の自己暗示・催眠状態になることがある。その場合は本人の心身に対する何らかの働きかけがあることは否定できまい。その言葉がその人にとって幸せをもたらすと思っている言葉ならなおさらじゃな」

    『なるほどです。言霊の力もあるのでしょうけど、この言葉を唱えていれば幸せになれると信じて繰り返していれば、ほんとうに幸せになることもあるのでしょうか?』

    「そのあたりはケースバイケースじゃな。もしお経を読んでいても何の意味もないとか無駄だと内心で思っていたら、その人にはあまり効果がないじゃろう。しかし、お経を読むことで幸せになると信じ続ければ、また違った結果も出てこよう。つまり、お経を読んでいれば幸せになれるというのは正解でもあり、不正解でもあるわけじゃ」

    『お経が人々に幸せをもたらすのではなく、お経を読んでいる人の姿勢次第ということなのですね。でも、結局のところ、幸せになりたい人はどうしたらいいのでしょうか? 僕には“霊能力”はありませんし、ほとんどの人もそんなものは持ってないでしょうし』

    「“霊能力”持ちだから偉いとかすごいということではなくて、霊能力の有無もまた今世での役割の違いに過ぎないと考えたほうがよい。やみくもに“霊能力”を手に入れようとしたり現世利益的な意味での幸せを追い求めたりするのではなく、自分は自分なりに今世での魂の修行に取り組むのにベストな肉体、能力を与えられたのだということをしっかりと受け入れ、目の前のことを真剣にたんたんと取り組むことじゃな」

    『大事なのは過去の苦しさや未来への不安に囚われることではなく、今の目の前のことにたんたんと取り組むことなんですね』

    「そうじゃ。それを“即今・当処・自己”ともいう」

    『わかりました。ありがとうございます』

    スッキリして帰宅した青年は、まずは部屋に散らかっているゴミを捨てるのだった。

     

  • 霊脈と血脈

    新千夜一夜物語第6話:霊脈と血脈

    青年は困っていた。神事は全て済んだはずであるのになんだかんだ障害があり、絶好調とは言いがたかったからである。いずれにしても一人で考えていても答えが出ないと思い、陰陽師を訪問することにした。

     

    『すみません。先祖霊とチャクラと天命運の神事を全て終えたのに、まだ何か残っている感じがするんです」

    陰陽師に会うなり、そう青年は切り出した。

    「持病の腎臓かわかりませんが、原因不明の腰痛が続いているのですが・・・』

    「それは辛そうじゃな。どれ、鑑定してみよう」

     目を閉じて指を小刻みに動かし、鑑定を始める陰陽師。そんな陰陽師を青年は固唾を飲んで見守った。やがて陰陽師が口を開いた。

    「どうやらそなたの母方の曽祖父が地縛霊化しておるようじゃな。そしてそれがそなたの腰に影響を与えている」

    『でも先祖霊の神事で、僕に憑いていたご先祖様は全員救霊されたのではなかったんですか?』

    「霊脈の先祖という意味ではたしかにそうじゃ」

    「霊脈の先祖でしょうか」

    「そうじゃ。一口に先祖と言っても、子孫に受け継がれる先祖には、血脈と霊脈の二つがある」   

    『血脈は両親から受け継いだ体だと思いますが、もうひとつの霊脈は別なのですか?』

    「そうじゃ」

    陰陽師が小さく頷く。

    「ところで、そなたは何人兄弟かの?」

    『4人兄弟です。姉が二人と兄が一人います』

    「説明するのにちょうどいい人数じゃな。家族の名前を教えてくれんか?」

     青年は簡単な家系図を書き、両親と兄弟の名前を伝えた。

    「そなたの家族の魂の階級は“3:ビジネスマン”と“4:ブルーカラー”の二つに別れておる」

    『えっ、両親なのに、魂の階級が異なるなどということがあるんですか?』

    「そうじゃ。例えば、父親の魂の階級が“3:ビジネスマン”で、母親の魂の階級が“4:ブルーカラー”である場合、血液型のように3と4の魂の子供が生まれてくる可能性が極めて高い」

    『そうなのですね…。我が家の場合、両親が3と4なのでしょうか?』

    「そなたの家族は少し特殊じゃな。そなたの姉一人を除いて5人が“3:ビジネスマン”階級となる」

    『両親が二人とも階級が3なのに、姉は4なのですね。不思議です』

    「隔世遺伝という言葉があるように、霊脈にも隔世遺伝が存在する。つまり、そなたの祖父母か曽祖父母に階級が4の人がいたわけじゃな」

    『そういうことでしたか。つまり、僕に地縛霊化して憑いている母方の曽祖父は、霊脈ではなく、血脈の方なのですね』

    「そういうことじゃ」

    『母方の曽祖父が血統つまり僕の霊脈でないということは、唯一階級が4である姉の霊脈になり、本来は姉に憑くはずでは?』

    「それはじゃな、“霊媒体質”の強さが関係してくるので一概には断定できん。霊媒体質は先日話した“霊感”とほぼ同義と思っていい。確かにそなたの母方の曽祖父はそなたの姉の霊脈なのじゃが、姉よりもそなたの方が“霊媒体質”が強い場合にはそなたにかかることになる」

    『“霊媒体質”が強いと地縛霊が寄ってくるし、いつの間にか他者の念を拾って心身が不調になったりするのであれば、それは長所というよりも短所なんじゃないかと思えてきてしまいますが』

    「そう捉えることもできるが、ものは考えようということもできる」

    「そうでしょうか。たとえばどのような?」

    「そうじゃな、たとえば虫の知らせのように、よくないことを事前に感じ取って回避しやすいというメリットもある」

    『おっしゃる通り。一長一短とは正にこのことですね』

    青年は納得顔で頷いた。

    「それにじゃ。そなたに“霊媒体質”があるおかげで地縛霊化した先祖はそなたを通じてワシと縁が持て、その結果あの世に帰還できるわけじゃが仮にそなたの母方の曽祖父が地縛霊化したとして、子孫の全員が魂の属性が7すなわち“霊媒体質”でなかったらどうなると思う?」

    「さあ、どうなってしまうのでしょうか?」

    「直近の家族に魂の属性3の人間がいない場合どうなってしまうか以前説明したのじゃが、覚えておるかな?」

    『たしか、かかる子孫がいない場合、縁がある土地に憑いてしまうんでしたよね。ということは、この広い地球上で“カミゴト”ができる霊能力者がその土地を訪れる機会なんてほとんどないわけですから、よほど運がよくなければその先祖はほぼ永久に地縛霊のままなのですね…』

    「また、そういうことになるな。魂の属性が7の人物が魂の属性が3の人物と結婚し、魂の属性が3の子孫が産まれてようやくかかることができるわけじゃが、その場合、一斉に地縛霊化した先祖たちがその子孫に集まってくることになるので、その子孫が受ける霊障は必然的にきついものとなってしまう」

    『魂の属性が3の子孫が現れるのが後の世代になる分、各世代分のご先祖様が押し寄せてくるわけなのですね』

    「そのとおりじゃ。そなたのような“霊媒体質”持ちの人にとっては迷惑かもしれんが、地縛霊の立場から考えれば、こうしてワシの所にきて救霊する機会を与えてくれるそなたは、正に千載一遇の恩人というとこになるわけじゃ」

    『そうなのですね。自覚はありませんが、いずれにしてもご先祖様のためになっているのであれば、それはそれで嬉しいです』

    「同じ両親から産まれた子なのに性格などが兄弟で全然違う、というのは血統が同じでも霊脈がそれぞれ異なるからなのじゃよ」

    『我が家では姉だけが浮いているのがこれで納得できた気がします。では、地縛霊化している母方の曽祖父の救霊をお願いできますか?』

    「あいわかった。神事が終わったらすぐに連絡しよう」

     青年は深々と頭を下げ、退室した。胸が熱くなり、涙が溢れそうになったのは母方の曽祖父への想いからだろうか。