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  • 私が思う民主主義のデメリット

    私が思う民主主義のデメリット

    こんにちは! あの世とこの世合同会社の代表社員、中山彰仁です!

    政治に対して不満を感じる人が少なくありません。

    たった一票の武器を持って選挙に行っても、大した影響力はありません。

    そこでふと、民主主義のデメリットついて、少しだけ考えてみました。

    民主主義において、主権は国民です。

    問題だと考えられるのは、主権者である国民が政治の素人ということです。

    あなたが働いている業界に関して、ずぶの素人がああしろこうしろ言ってくるとします。

    日々、胃を痛めながら働いているあなたにしたら、聞く耳を持つ価値がない提案が多いことでしょう。

    仕事に限らず、役に立たない助言や体験談を、頼んでもいないのにしてくる人間もいます。

    そんな素人たちの意見を採用するのでしょうか?

    あなたの職場が、そんな人間たちの意見によって左右されたら、たまったものではないでしょう。

    一企業の社長だって、一社員には想像がつかないような量の情報を得、重大な判断をしなければなりません。

    現場の声だけがその声の全てではありません。

    もちろん、現場の声の中にもしっかり反映されるべきものもあります。

    とはいえ、選挙権を持っていても、政治に携わったことがない人間が、わずかな情報で国政につい判断できるとは思えません。

    実際、受信する情報によってイメージ操作されたり、目先の利益に翻弄されている人間が多いでしょう。

    それもそのはず、魂には4つの種類があり、その中でももっとも魂の容量が少なく、扇動されやすい人々が半数近くいるのですから。

    一票には変わりはありません。

    それならば、もっとも人数が多い人々を扇動し、票を得ることが最善だと考えるとことができます。

    なんだか、現代版の衆愚政治みたいです。

    真偽は定かではありませんが、投票結果をある程度改ざんすることもできるみたいですから、出来レースみたいなものでもありそうです。

    では、どんな政治が理想なのでしょうか?

    一つの案として、魂の適材適所を満たしている人事を私は考えます。

    大昔の神権政治のように、無我無欲で霊能力を持つ魂1-1が神託を受け取り、その内容を基に魂1や魂2が指示を出します。

    その指示を高い精度で実動していくのが、魂3:武士/武将の人々

    魂1〜3のサポートをするのが、魂4

    といったところでしょうか。

    魂の数字が小さいほど偉いという訳ではありません。

    あの世とこの世の歯車が噛み合い、私たちが今世の宿題を果たすのに最適な政治が実現するには、真の意味で最適なのかもしれません。

    魂の適材適所が進み、一人でも多くの方々が悔いなく生きられる世の中に近づいたら幸いです。

    お問い合せは《こちら》から

  • 新千夜一夜物語 第34話:令和とパラダイムシフト

    新千夜一夜物語 第34話:令和とパラダイムシフト

    青年は思議していた。

    第99代目の内閣総理大臣に任命された、菅義偉についてである。
    某新聞社のアンケートにて、彼の他に岸田文雄と石破茂の2名が有力候補となっていたが、魂の属性の観点から判断して、今回の人選は望ましい結果なのだろうか。

    一人で考えても埒が明かないと思い、青年は陰陽師の元を訪れるのだった。

    『先生、こんばんは。本日は菅義偉について教えていただけませんか?』

    「今回の自民党総裁選のことじゃな」

    そう言いながら、青年の質問に、陰陽師が応じる。

    「はい、4選の目もあると言われていた安倍首相の辞任に基づく、自民党の総裁選のことです」

    「そういえば、令和の“ねじれ”によって、残念ながら安倍晋三が辞任する流れになってしまったのう」

    『え、令和ですか。安倍元首相の辞任と令和が何か関係あるのでしょうか』

    そう言い、大きく眼を見開く青年を片手で制し、陰陽師は続ける。

    「話がそれてしまったの。今回のそなたの質問は総裁選の話なわけじゃから、令和の“ねじれ”については後で話すとして、総裁選の話をするとしよう。じゃが、そなたの質問に答える前に、以前政治家に適した魂の属性について説明したと思うが、そなたは覚えておるかな?」

    陰陽師に問われ、青年はしばし黙考した後に、口を開く。

    『転生回数期が2期で十の位が4、すなわち240回代の魂3:武士・武将、あるいは転生回数期が1期で十の位が4か7、すなわち340回代か370回代の魂1:王侯・僧侶の人物と記憶しています』

    青年の言葉に対し、陰陽師は小さくうなずいてから口を開く。

    「そうじゃな。与党、さらに言うと首相になれる資質を持つ人物の魂の属性はあらかじめほぼ決まっているのと同じ様に、野党に所属している国会議員の魂の属性もほぼ決まっておると話したのじゃが、それについて覚えておるかな?」

    『転生回数期が2期で十の位が3、すなわち230回代の魂3:武士・武将と、転生回数期が2期で十の位が“大山”の7、すなわち270回代の魂4:一般庶民です。もちろん、自民党を離党し、前民主党政権で首相となった鳩山由紀夫などは2(4)-3、すなわち240回代の魂3:武将ではありますが』

    青年の説明に陰陽師は満足そうにうなずいてから、紙に書きまとめていく。

    ・与党側の多く、首相の魂の属性:1(4)−1、1(7)−1、2(4)−3
    ・野党側の多くの議員の魂の属性:2(3)―3、2(7)−4

    『ところで、菅義偉と岸田文雄と石破茂は、それぞれどのような魂の属性でしょうか?』

    青年に問われた陰陽師は、鑑定結果を紙に書き記していく。
    陰陽師が手を止めると、結果を眺めた青年が口を開く。

    菅義偉SS

    『菅義偉はアンケートで最有力候補でしたが、転生回数が240回代の魂3:武将と首相になれる条件を満たしてしますね。それに、大局的見地が95(SS)で仁が90(S)とかなり高く、総合運もほぼ全ての数値が9で、加えて頭が1と、文句なしの結果と思われます』

    青年の言葉に対し、陰陽師は小さくうなずいて口を開く。

    「血脈の先祖霊の霊障の“17:天啓”の相とチャクラの6と7の乱れの影響によって、時折自分勝手な判断をし、周囲を振り回してしまう可能性が考えられることと、チャクラ4が乱れていることで、安倍晋三のように体調を崩さぬか、ちと気になるところではあるが」

    『そういえば、菅義偉は70歳を超えていて高齢ですので、健康面では気をつけていただきたいですね』

    「そなたの言う通りじゃが、それを言ってしまうと二階俊博は80歳を超えているわけじゃから、まだまだ老骨に鞭を打って頑張ってもらわねば、という考え方もあるにはあるがの」

    『なるほど、政治の世界には、定年などという概念はないのですね…』

    真剣な表情でそう言う青年に対し、陰陽師は小さく笑って見せてから続ける。

    「本来であれば安倍総理の任期は2021年9月末までなわけじゃから、暫定的に彼の後を継ぐ期間は約一年となる。ゆえに、菅首相がさらに3年続投できるかどうかは、彼がこの一年でどこまでの実績を残せるかにかかっておるわけじゃな」

    陰陽師の言葉に青年は小さくうなずいて見せ、再びスマートフォンを操作した後、口を開く。

    『菅義偉は、“令和おじさん”の愛称や、おやつに3,000円のパンケーキを食べるなど、政治以外の面でもメディアに注目されていましたが、高校を卒業した後に上京し、都内の段ボール工場に住み込みで働くものの、一念発起してアルバイトをしながら受験勉強をし、同級生に比べて二年遅れで大学に入学するなど、苦労人という印象です』

    「そして、27歳に衆議院議員の小此木彦三郎の秘書となり、39歳から横浜市会議員を2期務めた後、45歳で衆議院議員に当選と、政治の世界ではその才覚を遺憾なく発揮してきたようじゃな」

    陰陽師の言葉に青年は感心した様子でうなずいた後、再びスマートフォンを操作して口を開く。

    『“菅総理には菅官房長官がいないという問題がありますが”と言われるくらい、安倍前首相からは評価されていたようですね』

    「魂の属性だけでなく、実務的な面から判断しても、今の自民党の中では、首相に相応しい人物と言うことができるじゃろうな」

    陰陽師の言葉に納得の意を示すように大きくうなずいた後、青年は問う。

    『ところで、他の2人の魂の属性はいかがでしょうか?』

    岸田文雄SS

    そう言い、青年は再び鑑定結果が記された紙を眺めた後に続ける。

    『岸田文雄は、転生回数が340回の魂1:王侯・僧侶ですから、魂の種類だけで見れば首相に適しているとは思います。しかしながら、大局的見地と仁が80(A)と菅首相に比べて低いですし、人運が7ですから、この数値はトップに立って政党をまとめる人物にとっては致命的でないかと思われます』

    そう言い、青年は再びスマートフォンを操作してから、重々しい口調で続ける。

    『それに、暴力団元幹部の人物との握手写真が流出するというスキャンダルがあり、世間の目からすると良くない印象をあたえているのもちょっと気になります』

    「たしかに、頭が2であることも含め、首相の器というにはちと厳しいようじゃな」

    画像3

    『次は石破茂ですが、彼は転生回数が240回代の魂3:武将で、首相に適している魂の属性ではありますが、岸田文雄と同様に頭が2で人運が7であり、大局的見地と仁の数値を鑑みるに、菅首相には素質では及ばないと思われます』

    「また、親中・親韓派であることから、米中を主軸として昨今の国際情勢を鑑みるに、彼が首相になった場合、安倍元首相が築いてきたアメリカとの友好関係にヒビが入りかねないという危惧もある」

    陰陽師の言葉に青年は真剣な表情でうなずいた後、口を開く。

    『彼の人気の理由は、人柄や志や思想が評価されているというよりも、“党内野党”と言われる政権批判というか反骨精神みたいなものが、反安倍政権の意見を持つ人々から支持されていただけではないかと思うのですが』

    「昨今のメディアが親中・親韓に傾きつつあることを考えると、幾ら3位だったとはいえ、一定数の党員票はメディアの影響という見方もできるじゃろうな」

    陰陽師の言葉を聞いた青年は、腕を組み、苦い表情で口を開く。

    『つまり、メディアが魂4を煽るような報道を意識的に行い、党員票が石破茂に集中するように仕向けたというわけですね』

    「仮に党員票が完全な形で総裁選に反映されていたとしたら、トップにはなれなかったとしても、岸田氏には勝っていた可能性が高かったことから考えると、そういう結論になるじゃろうな」

    『たしかに』

    一つ頷いた後で、青年は続ける。

    『ところで、この3名以外で、魂の属性から注目している人物はいらっしゃいますか?』

    青年の問いに対し、陰陽師は湯呑みの茶を一口飲んでから、重い口を開く。

    「強いて挙げるなら、我が国初の女性首相という意味合いも含め、稲田朋美じゃな」

    初耳だったのか、青年は手早くスマートフォンを操作し、リサーチを始める。
    その間、陰陽師は彼女の鑑定結果を紙に書き足していく。

    稲田朋美SS

    『稲田朋美は弁護士出身ですし、顔つきから魂2−4という印象を持っていましたが、転生回数が大山の370回代の魂1:王侯・僧侶なのですね。総合運は菅首相と同じですし、大局的見地が90(S)と高いことからみても、たしかにバランスはよさそうですね』

    「とは言え、令和のような激動の時代には、やはり魂1が望ましく、彼女は頭が2であることから、今の時代に即したトップではないのかもしれないがの」

    陰陽師がそう言った後、青年はスマートフォンの画面を見ながら口を開く。

    『ネットで見るかぎり、彼女はさまざまな問題発言や問題ある行動を起こしていたようで、自衛隊の南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の日報問題をきっかけに防衛大臣を辞任しています』

    「彼女にはそうした面があることから、現時点では力量不足であると言っておるわけじゃが、将来的には、首相となるポテンシャルを秘めているも間違いない。仮に菅首相がもう一期総理大臣を続けるようなことがあれば、その間に実力をつけて、4年後、101代総理大臣に就任する可能性も皆無ではないじゃろう」

    『なるほど。僕なんかには想像もつかない話で、正に目から鱗です』

    そう言い、頭を下げる青年を横目に、陰陽師は続ける。

    「仮に彼女が首相に就任したら、米中戦争が勃発した際に自衛隊を派兵してしまう可能性は飛躍的に高まるはずじゃ。さらに言えば、戦争でアメリカが勝利した暁には、その功績をもとに自衛隊が正式に軍隊とする可能性もじゅうぶんあり得るじゃろう」

    陰陽師の言葉に青年は目を見開き、おそるおそる尋ねる。

    『そうなると、いよいよ憲法9条の改憲となるわけですね。自衛隊が軍隊になると、また日本が戦争に巻き込まれる可能性が高まり、物騒な世の中になりそうです…』

    「ということは、そなたは憲法9条の改憲に対して反対なのかな?」

    陰陽師にそう問われ、青年はしばらく黙考してから口を開く。

    『不勉強で恐縮ですが、憲法9条を改生してしまうと、日本は戦争に巻き込まれやすくなってしまうのではないかと危惧しています。この世が地上天国ではないことから、戦争そのものがなくなることはないと理解していますが、昔のような大規模戦争が少なくなっているとは言え、日本が戦争に加わることに対して賛成することは難しいです』

    「なるほど」

    そう言い、陰陽師は湯呑みの茶を一口飲んだ後に続ける。

    「実は、安保法制には、たしかに“専守防衛”、“不戦の誓いを基調とした平和憲法”という側面も存在するのじゃが、別な角度で見ると、現行の憲法には、第二次世界大戦で軍部の暴走を許した日本国に対し、その軍事力に恐れをなした戦勝国側が、二度と同じ事態を引き起こさせないようにと、軍隊の保持を禁じたという側面が存在する。それが、憲法9条の基本的な“趣旨“でもあるわけじゃが」

    真剣な表情で黙ってうなずく青年を横目に、陰陽師は続ける。

    「戦後70年という時間が経過した結果、憲法9条をめぐる状況は、大きな曲がり角に差しかかろうとしている。アメリカ・イギリスを中心とした戦勝国側が、軍隊の保持を認めただけでなく、国連決議による国連軍派遣といった事態に際し、日本に対して金銭のみならず汗を、汗のみならず血を流すことを求め始めたという世界情勢に基づく構造変化が起きているのじゃ」

    『つまり、今まで日本は経済支援で主に対応していましたが、今後は軍事面でも加勢するよう、まさかの国連から求められているということでしょうか?』

    青年の問いに対し、陰陽師はうなずいて見せてから口を開く。

    「“イデオロギー”から“経済”へと世界が大きなパラダイムシフトを始めたとはいえ、問題解決の手段として戦争がこの世から簡単に一掃されない以上、我が国も自衛隊といった目的のはっきりとしない機関(それさえも憲法による規定がないのだが)ではなく、たとえ“防衛軍”といった名称であっても、正式に軍隊を呼称すべき時期に差しかかっていることだけは間違いあるまい」

    陰陽師の説明に対し、青年はうなずいてから意見を述べる。

    『正当防衛のための軍事力の延長という意味でしたら、自衛隊が防衛軍となることに納得できます』

    「この世に“職業の選択の自由”が存在する以上、警察官/消防士といった職業が、他の職業に比べ、生命の危険にさらされる可能性が高くなることは言うまでもない以上、自衛隊に明確な称号と権利を付与することこそが、“命を賭して”職務を遂行している自衛隊員に対する最大のオマージュと考えることもできるわけじゃしな」

    『たしかに。大規模な災害時に人命救助にあたるのは自衛隊ですし、警察官や消防士と同等かそれ以上の社会的評価と待遇を得てもおかしくは、ないと思います』

    青年の意見に対し、陰陽師は小さくうなずいてから口を開く。

    「繰り返しになるが、安保法制とは新たな侵略戦争に道を開く法案ではなく、国連安保理事会の決議が戦争という手段以外の解決策を見出せなかった場合において、世界第三位の経済大国としての義務を果たすための法案なのだ、という認識を国民一人一人がもう一度考え直す時期に来ているのではないかと、ワシは思う」

    『おっしゃる通りですね。軍隊を持つイコール、戦争をしかけて軍事的に侵略する、ということになるとは限りませんからね』

    「それにじゃ、昔のような武力による争いだけが戦争ではなく、スパイやハッキングによる情報戦争や、経済政策によって相手国に損失を与える経済戦争のように、戦争の手段が変わってきておる」

    『そう言えば、先日、米国が“違反商品保留命令”を発令し、中国製の衣服やコンピューター部品などの品目の輸入を禁止しましたが、大きな貿易相手国である米国にそうした対応を取られると、中国は経済的に大打撃を受けますね』

    「もちろん、最終的に雌雄を決するのは武力による戦争となるのじゃろうが、既に米中戦争の前哨戦は始まっていると言えなくもないわけじゃし、今回のコロナ禍においても、金を使ってWTOを丸め込もうとせず、問題が明らかになった時点で、あらゆるデータを開示していればまた違った展開になっているかもしれぬわけじゃからの」

    陰陽師の言葉に対し、青年は暗い表情で顔を伏せながら口を開く。

    『なるほど。以前説明していただきましたが、そもそも戦争とは、二国間の利害の不一致・衝突が話し合いのレベルを超えた段階で想定される最終行動/意思表示(※第4話参照)ですから、一般庶民が知らない水面化で戦争の準備が着々と進んでいるわけですね』

    「もちろん、米中双方の持つ核兵器で、地球全体が何度も吹っ飛ぶ時代じゃ。そう簡単に戦火を交えることもないじゃろうが、現在の経済/IT分野における小競り合いは、新しい形の戦争と呼ぶこともあながち間違いではないのじゃろうな」

    『令和の問題をひとまずこちらに置いておくとして、そしてこの世が地上天国ではなく“修行の場”という問題もこちらに置いておくとして、この世から“争い”がなくなることはないのでしょうか?』

    「仮にこの世から軍事的な意味での戦争がなくなったとしても、夫婦間の対立やイジメもといった、人間同士の争いがなくなることはないじゃろうし、そのような争いを通じて魂が磨かれるという側面がある限り、この世から人間同士の争い、戦争がなくなることはあるまい」

    『戦争が必要な理由など僕には皆目検討がつきませんし、それを世直しと言っていいのかどうかさえ、僕にはよくわかりませんが、いずれにしても、令和の“ねじれ”によって米中戦争が起き、結果として自衛隊が軍隊になる流れに向かってしまっているとおっしゃるわけですね』

    「目先の事象だけで見るとそなたの言う通りなのじゃが、ワシがみるかぎり、令和の“ねじれ“には、もっと大きな意味があるようじゃ」

    『とおっしゃいますと?』

    「冒頭に安倍元首相の辞任について触れたが、年号が令和になったことで“ねじれ”が起こり、世の中で様々な方向修正が起きておる」

    『新元号が令和でなければ、安倍元首相は体調不良にならずに総理大臣を続けていたということですね』

    「そなたはたかが年号と思うかも知れんが、令和という年号がついたことで、日本のみならず、その影響が世界中に伝播し始めてしまった。新型コロナウイルスによる経済崩壊、生活スタイルの変更などといったパラダイムの変換によって、世の中が大きく動き出したことは間違いないじゃろう」

    陰陽師の言葉に対し、青年は腕を組み、眉間にシワを寄せて口を開く。

    『元号が令和になったことでコロナ禍が起きたのが事実だとするなら、別の元号にする方がいいのではないかと思うのですが…』

    「そう言いたくなる気持ちもわからんではないが、表面的に見れば、今のところ悪い現象ばかりのように見えるかもしれん。しかし、実際には、本来のあるべき世界に戻るために、令和という年号が選ばれ、その結果、今のような“ねじれ”が生じたと考えた方が実態に即しておるじゃろうな」

    『それは、どういう意味でしょう。令和の“ねじれ“は、改悪というより、むしろ改善に向かっているとおっしゃっているのでしょうか』

    青年の言葉に対し、陰陽師は小さく頷き、続ける。

    「令和単体でみると、地震、火山の大爆発といった地球の内部からの問題よりも、今回のコロナのような疫病、天変地異、それに伴う凶作、戦争、果ては宇宙からの隕石落下といった災厄が目白押しということになるのじゃが、そもそもの原因とそれらの厄災の役割という、もう少し巨視的な物差しで令和の問題をみてみると、その原因を産業革命にまで遡らせるべきであるようなのじゃ」

    『産業革命。そんなに昔にねじれが起こったと…』

    「その通りじゃ」

    小さく唸ったまま固まる青年を見ながら、陰陽師が言葉を続ける。

    「端的に言うと、現代のあらゆる文明は、18世期半ばから19世期前半に始まった産業革命に端を発しているということができる」

    『はい』

    「もちろんそのすべてを否定するわけではないが、たとえば、クローンの問題や、IP細胞などの出現によって、がんにかかったとしても、他人の臓器などを移植せずに、自らの細胞を使って病気を根治させることが、もはや夢物語でないところまできておる」

    『そうですね。このままいけば、不死とまではいわないとしても、寿命が今までの倍になることぐらいはじゅうぶん予想できますよね』

    「仮にこの世の目指すべき方向性が、“地上天国の実現”であるのであればそれでもいいかもしれんが」

    『この世が“修行の場”である以上、そして400回の輪廻転生という宿題がある以上、そのような方向性は、断固として、阻止すべきだと・・・』

    「端的に言うとそういうことになるわけじゃ」

    陰陽師は、一つ頷いた後で、言葉を続ける。

    「つまり、令和の“ねじれ”とは、産業革命によってもたらされた物質文明、“体主霊従”の世界を、令和の“ねじれ”により、“霊主体従”というあるべき姿に戻すことを意味しており、実際、人知を超えた力がそのような方向性ですでに動き出しておるようなのじゃ」

    『にわかには信じられない話ですが、いずれにしても、捉え方によっては、令和で起きている世間一般では不幸と思われる出来事は、地球にとっての好転反応だとおっしゃるわけですね』

    青年は腕を組み、眉間にシワを寄せながら、そう言葉を絞り出す。

    「端的に言うと、そなたの言う通りじゃ。そしてさらに言ってしまえば、コロナ禍によって引き起こされるであろう出来事を鑑みるに、“体主霊従”から“霊主体従”の世の中に戻るには、それくらいの方向修正が必要なのじゃろう」

    『なるほど』

    陰陽師の言葉に、小さく頷くと、青年は言葉を続ける。

    『ところで、“体主霊従”と“霊主体従”、よく耳にする言葉ではありますが、具体的にはどのように違うのでしょうか?』

    青年の問いに対し、陰陽師は紙に文字を書きながら口を開く。

    「“体主霊従”は科学を中心とする、唯物論者の考えや意見が主流な現在の物質主義の世の中のこととなる。一方、“霊主体従”とは“霊”、すなわち魂や見えない存在の影響を大きく受ける、あの世の理屈が主流となる世の中のこととなる。もちろん、魂磨きの修行の場として、後者の方がふさわしいのはわかるかの」

    陰陽師の言葉に対し、青年は大きくうなずいてから口を開く。

    『つまり、魂7(唯物論者)の人間が主導権を握っている世界から魂3(霊媒体質)の人に主導権が移っていくイメージですね。以前、血脈の先祖霊の霊障が顕在化し始めたのも、日本の元号が令和になったからだとお聞きしましたが、“霊主体従”の世の中に向かうにつれ、先祖霊の影響力が強くなったということでしょうか?』

    「塞がれているパフォーマンスの数字と霊障によって引き起こされる、特に心身の不調の顕在化を鑑みるに、そなたの言う通りであろう」

    『と言うことは、令和のねじれによって、コロナ禍は言うに及ばず、これからも様々な厄災が想定されるだけではなく、最悪、戦争も起こりえるというのですね…』

    「そうなってほしくはないが、その可能性は極めて高いじゃろうな」

    青年の言葉に小さく頷きながら、陰陽師は言葉を続ける。

    「そして、そのような激変の時代じゃからこそ、冒頭に述べたように、頭1の人間が世をまとめるべきで、そのような意味では、菅首相には後任となる人物が育つまで頑張ってもらいたいと個人的には思っておるわけなのじゃ」

    『産業革命以前の“ねじれの解消”、それによる“霊主体従”の世の中へ回帰した後、頭1が世をまとめることで、どのような世界になるのでしょうか?』

    「それについて話し始めると長くなるから今夜はパスするが、いずれあらためて、そなたの意見も拝聴しながら、ゆっくりと議論をすることとしよう」

    『起承転結、お話を伺うかぎり、産業革命以降のおよそ250年分のねじれをまずは戻し、さらに本来の流れで進むはずだった250年、合計500年分の遅れを取り戻すために、かなり手荒い“軌道修正”が必要だというお話はじゅうぶん納得できます』

    そんな青年の言葉に頷きながら、陰陽師は口を開く。

    「それ故、出口なおの“お筆先”や日月神示で言うところの、“大掃除”が今度こそ、本当に起こるかも知れんわけじゃ」

    そう言い、陰陽師は壁時計に視線を向ける。
    それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

    『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

    そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

    「気をつけて帰るのじゃぞ」

    陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。

    世の中が大きく動いている中、自分はどう動くべきだろうか。
    このままの方向性で科学が進み、この世から病気が一掃され、永遠の命を手に入れるのも悪い未来ではなさそうだが、この世を“地上天国”ではなく、“魂磨きの場”、“修行の場”とする限り、たしかに今の方向性は間違っているのかもしれない、そんな考えが青年の頭をちらっとよぎった。しかし…。
    今の自分の使命は、そんな荒唐無稽な未来に想いを馳せて一喜一憂するのではなく、目の前の出来事を一つ一つ丁寧にこなし、魂磨きの修行に励もうと青年は決意するのだった。

  • 新千夜一夜物語 第31話:東京都知事選2020と魂の属性②

    新千夜一夜物語 第31話:東京都知事選2020と魂の属性②

    青年は思議していた。

    国会のテレビ中継における、与党と野党のやり取りについてである。
    いずれの党も国民による選挙にて同じ条件で選ばれているはずだ。しかし、重箱の隅を突くような、さして重要とも思えない問題を責めてみたり、回答する与党側の言葉尻を捕らえてみたり、挙げ句の果てにはヤジや怒号が飛び交う時もある。

    ひょっとしたら、同じ国会議員であっても、与党と野党とで、魂の属性に違いがあるのだろうか。
    独りで考えても埒が開かないと思い、青年は陰陽師の元を訪ねるのであった。

    『先生、こんばんは。今日も政治家の魂の属性について教えていただけますでしょうか?』

    「前回に引き続き、政治の話じゃな。して、具体的にはどういったことを聞きたいのかな?」

    『大きく分けると、与党側の人物と野党側の人物の魂の属性の違いを教えていただきたいです』

    そう言い、青年は、野党側の人物が話の大筋に関する議論ではなく、言葉尻を捉えた批判ばかりしていることや、国会のテレビ中継で繰り広げられるやり取りについて自分なりの私見を述べた。
    青年の話に耳を傾けながら、東京都知事選2020の立候補者の鑑定結果の紙を並べていく。
    青年が並べられた鑑定結果をざっと眺めるのを横目に、陰陽師は紙に何かを書き記していく。

    「実は、与党、さらに言うと首相になれる人物の魂の属性はあらかじめほぼ決まっているのと同じ様に、野党に所属している衆議院議員の魂の属性もほぼ決まっておるのじゃよ」

    そう言い、陰陽師はメモに両者の特徴を書き上げた。

    ・与党側の多く、首相の魂の属性:1(4)ー1、2(4)ー3
    ・野党側の多くの議員の魂の属性:2(3)―3、2(7)ー4

    『なんと! プロのスポーツ・芸能・芸術の世界が“2−3−5−5…2”の魂の属性を持つ人物の独壇場であるのと同様、政治の世界でも魂の属性による法則性があったのですね!』

    前のめりになりながら、興奮気味にそう言う青年。そんな彼を陰陽師は片手で制しながら、口を開く。

    「“2−3−5−5…2”の厳然たるルールと違い、排除命令が出るわけではないのじゃが、多くの政治家を鑑定してみると、野党の政治家の大多数は、たとえ2-3であっても、転生回数が“数奇な運命”である230回代の魂3:武士階級あるいは、転生回数が第二期(240/270回代)の魂4:一般庶民階級と決まっているのじゃが、これらの人物は、国会議員にはなれるものの、覇権を取ることはほぼないに等しい、と言うことができる。実際、戦後、社会党から片山哲、村山富市という総理大臣が2人だけ誕生しているが、そのいずれも2(7)-4じゃ」

    陰陽師の説明を聞き、青年は納得顔で何度もうなずいてから口を開く。

    『魂1−1すなわち転生回数が第一期(300回代)の魂1:聖職者・王侯階級は階級の名の通り、国のトップに立つのにふさわしいと納得することができます。確か、安倍晋三も魂1−1だったと記憶しています』

    「政治家には様々な資質が求められるが、その中でも最も重要なのは、自分の意見を明確に相手に伝えるディベート能力じゃ。そのような意味では、芸能人のように転生回数が小山である240回代の魂3:武士・武将階級が適任なのじゃろうが、その中にはオールラウンダーである魂1−1の人物も入るのかもしれんな」

    『230回代の魂3:武士・武将階級の場合、国会議員になれる原動力は、政治という特殊な方面に向かう“数奇な運命”のなせる業ではあるものの、力量・才能という意味では、残念ながらトップまで上り詰めることはできないのですね』

    「国会議員の場合、世襲議員を除き、かつては本業があったわけで、その分野で突出した業績はあったのじゃろうが、首相になるという意味では、総合力に欠けているのかもしれんな」

    『なるほど』

    青年は、一つ頷いた後で、質問を続ける。

    『では、魂2-4の場合は、どうなのでしょう』

    「もちろん、選挙は選ぶ人がいて当選できるわけじゃから、魂2−4の場合は、現政権の大衆受けしやすい問題点/失政を代案なしに批判してみたり、多くの魂4が共感しやすい政策をベースにした公約を掲げることによって、それを頼りに一点突破を図る傾向が強いようじゃな」

    『たとえば、財源なき減税問題や、具体的な解決策のない環境問題とかですね』

    「後者の問題は少々高尚すぎるとしても、ともかく庶民である魂4の生活に直結したこまごまとした問題を、その時々のトレンドに合わせて持ち出してくることだけには、長けておるようじゃな」

    陰陽師の言葉を聞いて青年は腕を組んで小さく唸り、やがて口を開く。

    『批判は誰でもできますし、大局的見地に欠けた魂2−4が掲げる公約は、今回の都知事選をみていても、東京都が抱える問題のほんの一部分に対応しているとしても、全体からみたら些末な問題に終始しているような気がします』

    「その通りじゃな。仮に魂2−4の人物が東京都知事選に当選してしまい、彼なりの公約を実現したとしても、他に取り組むべきだった大きな問題は後回しになって取り返しがつかない状況に陥らないとはかぎらぬわけじゃからのう」

    『今回の立候補者でいうと、その典型は宇都宮健児と平塚正幸と押越清悦ということが言えそうですね』

    そう言い、青年は鑑定結果を手元に寄せて続ける。

    宇都宮健児SS

    『宇都宮健児の場合は、同じ2-4ではあっても、転生回数が“大山”の270回代で全体運も9であることから、日本弁護士連合会会長に就任できたのも納得することができます。ただ、そもそも頭が2ですし、大局的見地と仁が70点と、他の立候補者達に比べてかなり低いという理由からも、適任ではないと判断しました』

    「彼については、ワシも同感じゃな。魂2−4は学力が突出する特徴があることから高学歴、さらには難易度の極めて高い弁護士試験に合格することも可能なわけじゃが、持ち前の偏狭な正義感が相まって、弁護士資格取得後、社会派弁護士の道を歩む人物は少なくない。さらに、社会でそれなりの影響力を得た後、共産党や社会民主党、現在の両民主党の後押しを受け、政界に進出してくるパターンはめずらしいことではない」

    『なるほど。ということは、感情的な言動をしたり、しょうもないヤジを飛ばしたりする人物が野党に多い理由は、魂2−4の比率が多いからなのでしょうか』

    「もちろん、与党の議員の中にも15%くらいは魂2−4がいるわけじゃから、すべての事柄を“魂2−4”のせいにしてしまうのはどうかと思うが、大筋では、そなたの言う通りかもしれんな」

    『なるほど。少人数とは言え、与党の議員の中にも、魂2−4の人物はいるのですね。気をつけます』

    「で、彼の公約はどういったものなのかな?」

    陰陽師にそう問われ、青年は手早くスマートフォンを操作し、公約を読み上げた。

    『弱者の救済を中心とした、魂2−4らしい内容ですが、彼の公約の一部である、韓国関連の内容は、東京都知事の役割を越えている気がします。もしも、本当に慰安婦像を国会議事堂の前に設置するなら、それこそ税金の私的流用になるんじゃないかと思います』

    「それ以前の問題として、そもそも、外交は国政の役割じゃからのう」

    『つまり、都知事を目指す人物が公約で掲げる内容ではないのですね』

    そう言い、青年は唇をとがらせながら黙考する。しばらくした後、再び口を開く。

    『ちなみに、歴代の東京都知事で魂2−4の人物はいるのでしょうか?』

    「戦前まで遡って詳しく調べたわけではないが、戦後では、何をおいても美濃部吉じゃろうな」

    陰陽師の言葉を聞き、青年はスマートフォンを操作して美濃部亮吉について調べ出す。
    青年が美濃部亮吉の政策について理解するのに時間がかかると判断したのか、陰陽師はいつもの笑みで語りかける。

    「1967年、社会党、共産党の公認を受け、東京都知事選挙に社会党・共産党推薦で立候補、自民党・民社党推薦の松下正寿立教大学総長、公明党推薦の阿部憲一渋沢海運社長を破り当選すると、3期12年も東京都のトップとして君臨、四選不出馬を表明した後は、その余勢を駆い、1980年(昭和55年)参議院議員選挙に出馬し、当選するわけじゃが、彼は基本的にマルクス経済学者であり、正に時代が生んだ政治家ということができるのじゃろう」

    『なるほど』

    「彼の父親である達吉は、天皇機関説で知られる憲法学者じゃし、彼自身も1938年(昭和13年)人民戦線事件で検挙され法大教授を辞任していることだけをみても、筋金入りの革新派ということができるわけじゃが、そんな彼の行なった老人医療費無料化、高齢住民の都営交通無料化などの無料化政策は一定の成果を上げたものの、無料化の弊害として能率の極端な低下を招いたり、東京都主催の公営競技廃止によって都の財源をなくしてみたり、“バラマキ福祉による都財政破綻”といった批判を受けたという側面も併せ持つ」

    「なるほど、老人医療費無料化、高齢住民の都営交通無料化などの無料化政策あたりは、いかにも魂2−4ぽい政策ですね」

    陰陽師の言葉を聞き、青年は宇都宮健児の公約を確認し直した後で、口を開く。

    『宇都宮健児の公約の中にも医療機関などへの補償や主に学校に関する無償化はありますし、“カジノ誘致計画は中止する”と掲げていることから、彼が当選したら、今後の東京都も美濃部亮吉が都知事だった時代と同じような状況になる可能性がありそうですね』

    「実際のところはその時になってみなければわからぬが、その可能性は低くないじゃろうな」

    『以前(※第13話参照)話題となりました、衆愚政治の扇動家である、転生回数が“大山”の270回代で魂4だったクレオンのようにならないことを願います』

    そう言い、青年は眉間に皺を寄せながら、別の鑑定結果を陰陽師の前に差し出す。

    平塚正幸SS

    『平塚正幸は“コロナはただの風邪”を選挙ポスターのキャッチフレーズに使い、ひんしゅくをかっているようです』

    青年の言葉を聞いた陰陽師は微笑んだままだが、心なしか困った様子がにじみ出ている。

    『大局的見地が65点とかなり低いですし、天命運に“2:諸事万般”と“14:偶発的人的トラブル”の相があることと、第5チャクラが乱れていることから、そのような表現を用いてしまったのも納得できてしまいます』

    「彼にしてみれば、公約にもっと深い意図を込めていたのかもしれぬが、いかんせん言葉のチョイスが悪すぎるようじゃの」

    押越清悦SS

    『押越清悦の公約は、オリンピックと新型コロナと集団ストーカーの三つがメインで、短期間では重要かもしれませんが、長期的な内容ではないと言えます』

    「そうじゃな。次は、野党側に多くいる、魂2(3)―3の立候補者についてみていこうかの」

    陰陽師の言葉に青年はうなずいて見せ、鑑定結果を並べていく。

    市川浩司SS

    石井均SS

    『市川浩司と石井均は全体運が9で大局的見地と仁が共に80点で頭が1ですが、転生回数が“数奇な運命”の230回代のため、僕なりの推奨者リストからは除外しました』

    「政治という総合力が必要とされる仕事ではなく、本人が得意とする分野でなら大いに活躍できるのじゃろうから、今後の彼らなりの人生に期待というところじゃな」

    竹本秀介SS

    関口安弘SS

    後藤輝樹SS

    桜井誠SS

    牛尾和恵SS

    『次の竹本秀介と関口安弘は、全体運が9ですが、転生回数が“数奇な運命”である230回代であることと、大局的見地と仁の数字を踏まえ、除外しました。後藤輝樹と桜井誠は頭が1でしたが、全体運が8でしたし、牛尾和恵も全体運が8という理由で除外しました』

    そう言い、青年はスマートフォンと鑑定結果を再度見比べ、とある二人の鑑定結果を陰陽師の前に差し出す。

    沢しおんSS

    西本誠SS

    『この二人は今回の都知事選とは別で気になりました』

    「というと?」

    『沢しおんは職業が作家、西本誠はラッパー(歌手)でして、“2−3−5−5…2”のルールに抵触しているのではないかと』

    「“2−3−5−5…2”のルールだけでいえばそなたの言う通りじゃが、当人にとって何がメインの生業かということが問題となってくるわけじゃから、それだけでは確定的なことは言えんな」

    『そうでしたね。ちなみに、沢しおんは2018年から作品を二つ出版していますが、プランナーやディレクターをしているため、排除命令によって命を落とすことはなさそうです。また、西本誠も銀座のクラブでボーイをしているみたいなので、同様に大丈夫そうです。とは言え、天命運に“5:事故/事件”の相があるので、気をつけてもらいたいとは思いますが』

    「そなたの言う通りじゃな。して、他の魂の種類の候補者はいるかの?」

    陰陽師の問いに対し、青年は鑑定結果を一枚選別して卓上に出す。

    長沢育弘SS

    『長沢育弘は立候補者の中では唯一、転生回数が“大山”の170回代ですが、職業が薬剤師であることに納得できます。ただ、彼は出馬会見をしていない上に公式ウェブサイトもないことから、具体的には何の活動もしていないようです』

    「出馬した理由がいまいちわからぬし、そこまで真剣でないのであれば、引き続き薬剤師として活躍してもらえたら、とは思うがの」

    『そうですね。最後は魂の属性が“2−3−5−5…2”、スポーツ・芸術・芸能を生業にできる二人です』

    そう言い、青年は二枚の鑑定結果の紙を並べる。

    『服部修はJ-ROCKバンド“ZEPHYR”の元ドラム奏者で現在は音楽塾の代表で、山本太郎は元俳優と、魂の属性に適した職業に就いていました。また、全体運が9で転生回数が“小山”の240回代ですから、力量としては東京都知事に就任できる器だとは思います。ただ、大局的見地と仁の点数が高くないことと、頭が2なので、除外しました。政治家ではなく、むしろ本業で返り咲いていただけたらと思います』

    「そなたの言う通りじゃな。して、その二人の公約はどのような内容かの?」

    『服部修も立花孝志と同様、ホリエモンが掲げた“東京都への緊急提言37項”に沿っています。山本太郎は主に、オリンピック中止、都民に一律10万円給付など新型コロナウイルスで疲弊した都民生活の底上げ、都職員を三千人増員という内容です』

    「なるほど。前回も話したと思うが、魂の属性に限らず、立候補者が公約を実現できるかどうかを見極めることは重要じゃ。山本太郎のようにパフォーマンスが上手だったり、耳障りが良くて都民にとってメリットが大きいような公約を掲げて票を集めるのはかまわんが、それをどこまで実行できる力があるかが問題なわけじゃからな」

    陰陽師の言葉に対し、青年は無言で首肯する。そんな青年の様子を確認し、陰陽師は続ける。

    「さらに言うと、たとえ公約を実現できたとしても、それが偏狭な正義感から掲げられた内容で、東京都が抱えている大きな問題を改善するものでなければ、問題がさらに大きくなってしまう危険性があるのは、先程も話した通りじゃ」

    『そういう意味では、特に魂1〜3の人物には、面倒くさがらずに、公約や候補者が発する言葉の意図までよく吟味した上で、投票していただきたいと思います』

    「その通りじゃな」

    そう相槌を打ちながら、陰陽師はスマートフォンを見て時刻を確認する。

    「いつの間にか時間じゃ。気をつけて帰るのじゃぞ」

    『いつも遅い時間までありがとうございます』

    そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げる。
    陰陽師はいつもの笑顔で手を振り、青年を見送る。

    帰路の途中、青年は自身ができることについて考えていた。
    主に、多くの立候補者が掲げている、弱者への補償についてである。
    同じ人間である以上、見捨てるようなことはしたくない。だが、政治が一部の人々の為だけに動いてしまったら、結局その他の人々を蔑ろにすることに繋がってしまうのではないか。
    転生回数が“数奇な運命”の230回代である自分が政治に携わるのは、望ましくないだろう。
    けれど、せめて自分の家族や手の届く範囲の人々が困っている時は、負担にならない範囲で可能な限り助けていこうと決意するのだった。

  • 新千夜一夜物語 第30話:東京都知事選2020と魂の属性①

    新千夜一夜物語 第30話:東京都知事選2020と魂の属性①

    青年は思議していた。

    2020年7月5日に控えた東京都知事選についてである。
    プロのスポーツ・芸能・芸術の世界を生業にできる魂の属性があるならば、政治家にも適した魂の属性があるのかもしれない。
    今回の東京都知事選の立候補者の魂の属性を鑑定することで、何かヒントを得られるかもしれない。

    そう思い、青年は陰陽師の元を訪れるのだった。

    『先生、こんばんは。今日は政治家の魂の属性について教えていただいてもよろしいでしょうか?』

    「ほう、そなたが政治家とはめずらしい。して、誰か気になる人物がおるのかな?」

    『はい。東京都知事選の選挙が迫っています。そこで、立候補者の鑑定をお願いいたします』

    「そういえば、そろそろ選挙じゃったな。で、誰のことを知りたい。順に、名前を挙げていってくれるかの」

    陰陽師の言葉に青年は頷いて見せ、スマートフォンを見ながら立候補者の名前を挙げていく。
    陰陽師は青年が読み上げる名前に耳を傾けながら鑑定し、結果を紙に書き記していく。
    青年が真剣な表情で21枚に及ぶ鑑定結果をじっくり眺めているのを見守った後、陰陽師は再び口を開いた。

    「ところで、そなたの見立てでは、どの立候補者が適任と思うかな?」

    陰陽師にそう問われ、青年は居住まいを正した後、口を開く。

    『実際に当選するかどうかはともかくとして、僕なりの基準で上位5名を挙げるとするならば、

    1:小野泰輔(おの たいすけ)
    2:込山洋(こみやま ひろし)
    3:立花孝志(たちばな たかし)
    4:内藤久遠(ないとう ひさお)
    5:齊藤健一郎(さいとう けんいちろう)

    と、なるのではと考えています』

    「なるほど」

    青年の答えに陰陽師は微笑みながら小さく頷き、口を開く。

    「ちなみに、どういった判断基準でそう考えたのかの?」

    『実績や公約というよりも、あくまで鑑定結果をベースとしてですが、

    ・魂の種類が1〜3のいずれか
    ・全体運が9であること
    ・大局的見地と仁のスコアが高いこと
    ・頭が1であること

    という基準で選んでみました』

    「なるほど。では、その上位5名の解説に入る前に、大本命である前東京都知事の小池百合子の鑑定結果を見るとしよう」

    青年は小さくうなずき、小池百合子の鑑定結果の紙を陰陽師の前に差し出す。
    青年は、鑑定結果を再度眺めた後、口を開く。

    小池百合子SS

    『小池百合子は転生回数が“小山”である240回代の魂3:武士階級ですね。全体運が9で、先祖霊の霊障がなく、パフォーマンスが60%と低くないですし、防衛大臣を務めていたこともあり、東京都知事をやり遂げる素養はじゅうぶんにあったと思います』

    青年は一息つき、続ける。

    『ただし、頭が2で大局的見地と仁が共に70点とやや低いことから、僕の見立てによる上位5名からは除外しました』

    「なるほど」

    一つ頷いた後で、陰陽師がおもむろに口を開いた。

    「ところで、彼女について、他に気づいたことはあるかの?」

    陰陽師にそう問われ、青年はスマートフォンで小池百合子の過去を調べた後、口を開く。

    『政治とは関係ありませんが、彼女はエジプトに留学していた21歳の頃に、日本人留学生の男性と結婚し、離婚したとのことです。これは、恋愛運が7とやや低いことと、天命運に“8:異性”の相が出ていることが関係していると思われます』

    「それ以外にも、彼女の場合、2016年の都知事選に立候補する際、自民党を離党した後に自民党東京都連に推薦を依頼しておきながら、自ら取り下げてみたり、2000年には自由党分裂に際して小沢一派と決別してみたり、という過去がある。他にも日本新党、新進党、自由党、保守党、自由民主党と5つの政党に所属し、それ故、“政界渡り鳥”とも呼ばれておる側面もあるしの」

    『それは、人運が7とやや低いことと、天命運に“14:偶発的人的トラブル”の相があることから、人間関係が切れやすいと考えることもできるのでしょうか。2016年に都民ファーストの会の代表に就任し、せっかく“風”が吹いたにも関わらず、入党希望者の“選別”で味噌をつけた挙句、2017年東京都議会議員選挙が終わった直後に党の代表を辞任したという過去もあります』

    「いつも言うように、鑑定結果の数値だけでその人物の行動を一概にこうだとは言い切れぬが、彼女の場合、たしかにそのような側面があるのは否定できんじゃろうな。しかし、それとて、今世はそうやって人間関係を整理していくことで先に進むという課題が彼女に課せられていると考えるべきなのじゃろう」

    『なるほど』

    「彼女が大本命であるのはその通りじゃが、選挙は水物じゃ。よって、今回の都知事選も箱を開けてみるまではわからぬ。カイロ大学卒業に関する経歴詐称疑惑によって都民の印象は少なからず悪くなっておるじゃろうし、緊急事態宣言解除後の東京における新型コロナの感染者数がそれなり以上の勢いで再浮上してもおる。今後、感染者数三桁が選挙当日まで続くようなら、選挙戦に一定以上の影響をあたえるかもしれんな」

    『新型コロナによって番狂わせが起き、別の人物が当選しやすい状況にもなっているわけですね』

    「まあ、大勢は動かぬとは思うが、それでも影響がまったくないわけでもないじゃろうな」

    青年の言葉に陰陽師は小さくうなずいて見せ、続ける。

    「また、彼女は東京オリンピックが開催される時の東京都知事になりたがっていた説もあることから、来年の東京オリンピックの開催が確定されていない以上、東京都知事に固執する動機がなくなったという考え方もできなくはあるまい。今までの彼女の行動を見ていると、仮に今回の都知事選で彼女が当選したとしても、今年の秋に衆議院が解散することとなった場合、また自分に有利な風でも吹けば、衆議院議員選挙に出馬するために自ら都知事の椅子を投げ出す可能性すらなくはないじゃろう」

    『なんか、目的のためには手段を選ばない感じですね。そういった、自分優先のところが頭2らしいと言えるのかもしれませんが…』

    陰陽師は湯呑みの茶を飲んだ後、口を開く。

    「魂の属性からみた小池百合子に関しては、そんなところじゃな」

    『ありがとうございます。次は、小野泰輔(おの たいすけ)をお願いします』

    鑑定結果を眺め、青年は何度もうなずいた後に口を開く。

    小野泰輔SS

    『転生回数が“小山”である240回代で魂3:武士階級、全体運が9であることは小池百合子と同じですが、彼の場合、頭が1ですし、大局的見地が90で仁が80とかなり高いことから、一番適していると判断しました』

    「国会議員も含め、元々政治家は、2-4を唯一の例外として、240回代で魂3という属性を持っていることが基本なのじゃが、彼の場合、2008年に母校である東京大学のゼミの蒲島教授が熊本県知事へ出馬した際に選挙を手伝い、その時の優秀さを評価され、教授の推薦によって熊本県の政策調整参与に就任する。そして、2012年6月には当時全国最年少かつ熊本県政史上最年少の38歳で、熊本県副知事に起用されたという経緯がある」

    『そんなに若くから頭角を現していたわけですね。公務の経験もある若手(どちらかと言えば)ですし、将来性も考えれば今回の立候補者の中で最も適任と考えられます。ちなみに、熊本県副知事に就任した後、彼は“くまモン”の著作権を県が買い取り、利用許諾を受けた場合は無償で使用できるようにしたとのことです!』

    やや興奮気味に語る青年を片手で制し、陰陽師は口を開く。

    「政見放送などを見る限り、スピーチにはまだまだ頼りなさを感じるものの、彼は東京維新の会の支部だけでなく、日本維新の会の本部推薦も得ておるし、ワシの見立てでも将来的に国政でもそれなりのポジションに就けるポテンシャルがある男じゃ。できることであれば、このような男が東京都知事として腕を振るってくれれば、面白いのじゃが」

    『やはり、そうですか。ちなみに、彼の主要政策ですが、

    1:コロナ禍の困難を乗り切る
    2:コロナに負けず持続的に成長する“新しい東京”を創造する
    3:財政危機を乗り越えるための徹底した行財政改革
    4:誰もが安心・安全で心やすらかに暮らせる東京へ
    5:“身を切る改革”として自身の知事報酬・期末手当・退職金を一律50%カット

    となっており、政策も現実的だと思いました』

    「その通りじゃな。先ほども言った通り、コロナの問題がどう推移するか、そして、同じく今回のコロナ騒動で女性層を中心に一気に名を挙げた吉村洋文大阪府知事の応援演説によって、ひょっとしたら大番狂わせが起きるかもしれんからな」

    『次の込山洋(こみやま ひろし)ですが、魂2の人物ですね』

    そう言い、青年は鑑定結果を陰陽師の前に差し出し、続ける。

    込山洋SS

    『彼は全体運が9で、大局的見地と仁が共に80点と高い数字です。また、頭が1であることも踏まえ、二番目に適任と考えました』

    「彼は転生回数が230回代で“数奇な運命”に該当するが、どんな経歴を持っているのかな?」

    陰陽師の言葉に青年はうなずいて見せ、スマートフォンを操作して該当するウェブサイトを見つけると、口を開く。

    『2006年〜2014年にコンサルティング会社を経営し、主に営業や接客接遇、心理、うつ病対策などの顧客カウンセラー業務に従事。2015年4月から、渋谷ハチ公喫煙所の清掃活動を1年間継続、2019年5月からは新橋SL広場喫煙所でも清掃活動をしていたようで、立候補前は介護士でした』

    「なるほど、いかにも魂2:貴族階級(軍人・福祉)らしい経歴じゃな」

    『東京都知事選2016と2019年港区議会議員候補の際に、マック赤坂の付き人をしていましたが、今回はマック赤坂の後継者としてスマイル党の推薦を得て自ら出馬したとのことです』

    「で、公約はどういったものかの?」

    『22個ありますが、そのうちのメインの5個を抜粋しますと、

    1:ゴミ、たばこのポイ捨て、路上喫煙は罰金10万円、完全密室型喫煙所の設置
    2:介護離職率の減少、介護福祉士年収480万円、介護施設の増設
    3:動物殺処分の実質ゼロ、アニマルポリスの設置
    4:高齢者、障碍者支援拡充、都内全域のバリアフリー
    5:都知事・議員報酬半額、都職員の報酬見直し

    などがあり、いかにも魂2らしい、福祉向けの公約が多い印象です』

    「うむ。実務的な提案はしておるものの、選挙の公約としては今一つインパクトに欠けるきらいはあるが、たしかに、そのようじゃな」

    『次は、賛否両論ありそうな、立花孝志(たちばな たかし)ですね』

    青年は鑑定結果を陰陽師の前に差し出しつつ、続ける。

    立花孝志SS

    『NHKから国民を守る党の党首の頃から物議を醸し出していた彼ですが、メディアで取り上げられる一面とは裏腹に、鑑定結果では良い人の印象があります。転生回数が“小山”である240回代の魂3:武士階級ですし、全体運は9、大局的見地は80点、仁は75点と高い方で、意外や意外、頭が1なので3位としました』

    「前回(※第29話)も説明したように、人間は多面体であってメディアに映し出される彼の言動は意図的に切り取られた一部に過ぎん。ワシがみる限り、立花孝志は人格的にとてもしっかりした人物であり、人間としての力量もパワーも小池百合子より上といっても過言ではないくらいじゃ」

    鑑定結果を再度眺めた青年は、小さくつぶやく。

    『NHKの政見放送で“NHKをぶっ壊す!”と言ってしまったり、常人には理解できないような言動をとるのは、天命運に“17:天啓”の相によって天から降りてきた何かを、持ち前のパワーで実行してしまうところにあるのかもしれませんね』

    「その可能性もないことはないのじゃろうが、彼の場合、彼を応援してくれる人物が多くなかったことから、過去に楠木正成が山賊を集めてゲリラ戦を繰り広げたように、政治で言うところの浮動票、魂4の票をうまく集めたといえよう。反面、魂1〜3の人物からすると、寄せ集めの集団という印象があるのは否めないのは、そなたの言う通りじゃが」

    『なるほど。余談ですが、彼は8年間もパチプロで生計を立てていた時期があるようで、そういった意味では、金運が9というのも納得ですね』

    「せっかく、それなり以上の器をもって生まれてきておるんじゃ。そんなことで、運を使い切ってほしくないがな」

    『それもそうですね』

    そう言って小さく笑う陰陽師の言葉に小さく頷く青年を横目で見ながら、陰陽師が口を開く。

    「して、彼の公約はどういったものなんじゃ?」

    『今回の彼の公約ですが、ホリエモンが掲げた“東京都への緊急提言37項”をベースに、

    1:NHKをぶっ壊す!
    2:既得権益をぶっ壊す!
    3:コロナ自粛をぶっ壊す!
    4:森友事件で悪者にさせられている籠池夫妻を救います!
    5:検察権力の不正を許しません!

    となっています。NHKに対する方針は終始一貫しているようですね。検察権力の不正に関しては、闇が深そうですが』

    「その件については、話題が逸れてしまうから、また別の機会に話すとして、次の人物に話題を移すとしよう。ところで、次の人物は頭が2のようじゃが、そのような人物が何故四番手なのかな?」

    陰陽師の問いに青年は小さくうなずき、鑑定結果を差し出しながら口を開く。

    内藤久遠SS

    『たしかに、内藤久遠(ないとう ひさお)は頭が2ですが、日本の人口の中で7%しかいない魂1:聖職者・王侯階級であり、霊能力持ちではない(―9)であることから、公務員・政治家に適性があるだろうと判断しました。全体運は9ですし、大局的見地が75点、仁が80点と低くない数字であることも判断材料としました』

    「なるほど。ちなみに、330回代である“数奇な運命”に該当するような経歴はあるのかの?」

    陰陽師に問われ、青年はスマートフォンを手早く操作し、画面を見ながら口を開く。

    『彼は元陸上自衛官で、基本的に魂2が多くを占める自衛隊を経た後に政治家を志すのは、“数奇な運命”になるのではないかと』

    青年の言葉に陰陽師は小さくうなずき、口を開く。

    「で、彼の公約はどういった内容かな?」

    『“コロナは検査を増やす。オリンピックはIOC・JOCに従う”とし、

    1:命を大切にする都市
    2:環境先進都市
    3:防災都市
    4:食料自給率向上
    5:東京一極集中による都市の過密と地方の過疎の緩和

    の5本柱を掲げており、各々に具体的な案も提示しています』

    そう言い、青年はスマートフォンを陰陽師に渡す。陰陽師は微笑みながら画面を見つめ、やがて口を開く。

    「彼の任期中にその全てを実現できるとはとても思えぬが、長期的なビジョンをしっかりと掲げておるようという意味では、前の人物より、公約としてはインパクトは確かにあるようじゃな。しかし、ツールド関東甲信越の開催については、ちとわからぬが」

    『それは彼の趣味の延長なのかもしれませんね。魂3、パーソナルコンピューターの僕には魂1、スーパーコンピューターである彼の真意はわかりかねます』

    「いや。同類のワシでも、よくわからんぞ」

    「仮に、趣味の延長だとしても、たしかに、都知事選の公約にすべきことなのかという点では、たしかに問題ですよね」

    苦笑しながら両手を上げる青年を横目に、陰陽師は鑑定結果の紙を取り寄せる。

    覗き込むように鑑定結果を眺めた後、青年は口を開く。

    齊藤健一郎SS

    『齊藤健一郎(さいとう けんいちろう)は、大局的見地と仁が共に75点で、どちらも小池百合子より5点高いということを除き、ほとんど彼女の魂の属性が同じです。よって、5位は上記の二人と判断します』

    「彼が小池百合子と違う点は、“魂の性質・親近性”の下段の数字が3であることと、公務の経験がないことじゃな」

    陰陽師の解説に対し、青年はあごに手を当て、しばし黙考した後に口を開く。

    『たしか、下段の数字が1に近いほど裏表がない性格となり、9に近づけば近づくほど、腹に一物があったり、二枚舌であったり、性格が荒くなる傾向があるということだったと思います。つまり、小池百合子は下段の数字が1ですから、公約を有言実行する性質があり、齊藤健一郎は言動不一致が起きる可能性があるということでしょうか?』

    「“魂の性質・親近性”の下段の数字については、そなたの解釈もまったく見当外れではないが、ふたりの7(1)と7(3)の違いは後ろの5つの数字をみるかぎり、気性の粗さの違いと理解した方がいいじゃろうな。よって、小池百合子は4年前に掲げた公約をほぼ達成できなかったのに対して、齊藤健一郎の場合、時流や世論を考慮して柔軟に動きを変えられる可能性を秘めている、と考えることも可能なのじゃろう」

    『なるほど。魂の属性がどうであれ、実際の言動としてどのように現れるかは実に複雑なのですね。人間は多面体、ということをあらためて感じました』

    「ちなみに、彼の公約も立花孝志と同様、ホリエモンが掲げた“東京都への緊急提言37項”に沿ったものなのかの?」

    陰陽師の問われた青年は、手早くスマートフォンを操作し、口を開く。

    『そうですね。彼はホリエモンの提言をそのまま掲げています』

    そう言い、青年は他に見落としたことがないか、再度鑑定結果に目を通す。
    そんな青年の様子を微笑ましく眺めながら、陰陽師は口を開く。

    「そう言えば、今回の立候補者21名の中に、魂3:武将階級が一人もいなかったな」

    『そう言えば、そうですね。東京都知事としては、武将タイプの人物の方が向いているのでしょうか?』

    「東京がいくら首都と言えども、所詮は地方行政の選挙なわけじゃから、どうしても武将でなくてはならんというわけでもないのじゃが、“令和”という年号と、その帰結の一つである新型コロナウイルスによってパラダイムシフトが起きている昨今、世の中を変えようと立ち上がる武将が一人くらいはいるのではないかと思い、意外に感じただけじゃよ」

    そう言い、陰陽師は書類を一枚一枚手にとって見比べ、再び口を開く。

    「いずれにしても民主主義政治では、選ばれた立候補者は掲げた公約を実現できるかどうかが、評価の分かれ目となる。いくら耳障りが良く、都民にとってメリットが大きい公約を掲げたところで、それを実行できるかどうかじゃからな」

    『たしかに。今回の任期だけで判断するかぎり、小池百合子が公約を実現したとはなかなか言えないですからね…』

    「さらに言うと、仮に掲げた公約のいくつかを実現できたとしても、それらが偏狭な正義感から掲げられた公約で、東京都が抱える根本的な問題を改善するものでなければ、ほとんど意味はないしの」

    『たしかに、耳障りだけよくて、実は内容のないテーマを公約で掲げて票を集めるのは自由ですが、それが大多数の東京都民のためになるかどうかは別ですからね』

    青年は手元にあった鑑定結果を一まとめにし、陰陽師に手渡してから続ける。

    『僕も含め、多くの人にとって政治はわかりにくく、興味を持ちにくい分野ではあると思いますから、街頭パフォーマンスや身近な問題を公約に掲げる候補者に票が入るのは仕方がないとは思います。だからこそ、特に魂1〜3の人物には、面倒くさがらずに、公約や候補者が発する言葉の意図までよく吟味した上で、投票していただきたいと思います』

    「たしかに、そなたの言う通りじゃ。現在の選挙システムがベストかどうかはともかく、多数決が民主主義の基本である以上、一人でも多くの魂1~3が、たかが一票なぞと考えず、大局的見地に立った自分の一票を投じてくれることを願うだけじゃな」

    青年の言葉に対し、陰陽師は微笑みながらうなずく。そして、時計に目をやり、再び口を開いた。

    「もうこんな時間か。気をつけて帰るのじゃぞ」

    『今日も遅い時間までありがとうございました』

    そう言い終えると、青年は立ち上がり、深々と頭を下げる。
    陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。

    帰路の途中、青年は現行の選挙システムについて思案していた。
    投票率の低さと、候補者を選ぶための啓蒙や教育を、なんとかできないものだろうか。
    しばらく小さく唸りながら歩いていたものの、都民の義務としての責任ある一票は投じるとしても、自分の天命は法律に関わるものではないことに気づき、自分がなすべきことに集中しようと気持ちを改めたのだった。