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  • なぜ外国人客はお店の負担になるのか?ーー追加料金の是非を考える

    なぜ外国人客はお店の負担になるのか?ーー追加料金の是非を考える

    こんにちは! あの世とこの世合同会社の代表社員、中山彰仁です!

    外国人からは通常料金より多く頂く。

    これは、人種差別になるのでしょうか?

    外国では他国の旅行客に対する金額は高めに設定されているときいたことがあります。

    もしそうなら、その国は人種差別が常識となっている国なのでしょう。

    ちなみに、他国が法律でそのように決めていることですから、その国の民ではない私がとやかく言うことは場違いです。

    日本の場合はどうでしょうか?

    例えば、私は外国人からは多めに料金を頂いてもしかたないと思っています。

    このことは、捉え方によっては人種差別になるかもしれませんが、そうではありません。

    私の場合、あくまでコストを意識しています

    そして、外国人に限らず、一部の日本人客に対しても同様です。

    ここまで具体的にしていれば、人種差別にはならないのではないか。

    そう思わなくもないです。

    さて、外国人は平均的な日本人客に比べて、お店側が被るコストが高くつきます。

    例えば、京都駅の飲食店を例に挙げてみましょう。

    外国人の多くはキャリーケースを持ち込んで入店します。

    京都駅に限らず、飲食店の多くが、店内のスペースになるべく多くの席を設置したいことでしょう。

    一人でも多くのお客さんに利用してもらう方がいいからです。

    ですから、キャリーケースを置くためのスペースを確保しているお店はそう多くないと考えられます。

    すると、キャリーケースを置く場所がありませんので、隣の席にキャリーケースを置き、他のお客が使えないようにします。

    つまり、外国人観光客一人のために二人分のスペースが必要になります。

    お昼や夕食時のピーク時にこのようなお客が増えると、単純計算すれば、お店の売り上げは半分になってしまいます。

    そうなると、お店側はキャリーケースを置く場合に、新幹線のように座席代として追加料金を請求してもおかしくありません

    余談ですが、日本人観光客と外国人観光客とでは、キャリーケースの数も大きさも異なる、ということを念の為付記しておきます。

    他にも、とある国の観光客は、ものすごく散らかし、汚して退店するそうです。

    とある老舗の飲食店で勤務している友人に訊いたところ、仮にそのお店の客が全員その国の観光客だとしたら、従業員の数を減らさないと回らないだろうとのことです。

    つまり、料理代が同じなのに、清掃などのコストのためにお店側の人件費がかかってしまいます。

    備品を壊すこともあるでしょう。

    大声で騒いで他のお客さんからクレームが入り、場合によっては常連客が来なくなるなど、副次的な被害も生じるかもしれません。

    もちろん、常連客だからといっ無理難題をふっかけたり、好き勝手にふるまってお店に不要なコストをかけていいわけではありません。

    そして、全ての外国人観光客がコストが高いわけでもありません

    ただ、統計的にそうした傾向があるため、これまでに生じた余計なコストを補う意味で、外国人観光客や一部の日本人客に対しては、追加料金があってもいいのではないか

    そう思ったのです。

    実際、外国人と日本人とで、魂の属性の傾向も異なりますし。

    というわけで、私もなるべく余計な負担やコストをかけないよう、お店側にとっても良い客であろうと思う次第です。

    それとは別に、京都にお越しの際はお声がけください😊

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  • 私が思う民主主義のデメリット

    私が思う民主主義のデメリット

    こんにちは! あの世とこの世合同会社の代表社員、中山彰仁です!

    政治に対して不満を感じる人が少なくありません。

    たった一票の武器を持って選挙に行っても、大した影響力はありません。

    そこでふと、民主主義のデメリットついて、少しだけ考えてみました。

    民主主義において、主権は国民です。

    問題だと考えられるのは、主権者である国民が政治の素人ということです。

    あなたが働いている業界に関して、ずぶの素人がああしろこうしろ言ってくるとします。

    日々、胃を痛めながら働いているあなたにしたら、聞く耳を持つ価値がない提案が多いことでしょう。

    仕事に限らず、役に立たない助言や体験談を、頼んでもいないのにしてくる人間もいます。

    そんな素人たちの意見を採用するのでしょうか?

    あなたの職場が、そんな人間たちの意見によって左右されたら、たまったものではないでしょう。

    一企業の社長だって、一社員には想像がつかないような量の情報を得、重大な判断をしなければなりません。

    現場の声だけがその声の全てではありません。

    もちろん、現場の声の中にもしっかり反映されるべきものもあります。

    とはいえ、選挙権を持っていても、政治に携わったことがない人間が、わずかな情報で国政につい判断できるとは思えません。

    実際、受信する情報によってイメージ操作されたり、目先の利益に翻弄されている人間が多いでしょう。

    それもそのはず、魂には4つの種類があり、その中でももっとも魂の容量が少なく、扇動されやすい人々が半数近くいるのですから。

    一票には変わりはありません。

    それならば、もっとも人数が多い人々を扇動し、票を得ることが最善だと考えるとことができます。

    なんだか、現代版の衆愚政治みたいです。

    真偽は定かではありませんが、投票結果をある程度改ざんすることもできるみたいですから、出来レースみたいなものでもありそうです。

    では、どんな政治が理想なのでしょうか?

    一つの案として、魂の適材適所を満たしている人事を私は考えます。

    大昔の神権政治のように、無我無欲で霊能力を持つ魂1-1が神託を受け取り、その内容を基に魂1や魂2が指示を出します。

    その指示を高い精度で実動していくのが、魂3:武士/武将の人々

    魂1〜3のサポートをするのが、魂4

    といったところでしょうか。

    魂の数字が小さいほど偉いという訳ではありません。

    あの世とこの世の歯車が噛み合い、私たちが今世の宿題を果たすのに最適な政治が実現するには、真の意味で最適なのかもしれません。

    魂の適材適所が進み、一人でも多くの方々が悔いなく生きられる世の中に近づいたら幸いです。

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  • あの世の観点から考える、日本人が特殊な理由

    あの世の観点から考える、日本人が特殊な理由

    日本人は優秀だったり特殊だったりと、様々な見解をみかけます。

    ヤップ細胞という言葉も耳にしたことがあります。

    今回はあの世、日本人の魂の傾向から考えてみたいと思います。

    魂には4つの種類があります。

    極端ないいかたをすると、4つの種類の差は、魂のスペックです。

    1はスパコン、2は汎用コンピューター、3はパソコン。

    といったように、同じパソコンであっても、スペックや使用目的が異なります

    そして、4はガラケーです。

    ここからさらに、大きく二つに分けて考えます。

    魂1〜3と魂4の間には、超えられない壁が存在します。

    例えば、パソコン側がワードやエクセル、アプリを用いて情報を伝えています。

    一方、ガラケーは基本的に文字がメインで、音声や動画はそこそこです。

    これだけOSが異なると、意思の疎通が容易ではありません。

    ですから、同じ仕事をしていても、差が出てしまうのです。

    そして、日本人はパソコン側が55%、ガラケー側が45%います。

    対して、他国ではパソコン側が40%、ガラケー側が60%となります。

    15%の差というのは、6人に1人の割合です。

    話を戻すと、日本人はマニュアルに沿ったり、法律や規則を遵守する人が多い傾向があると思います。

    言い換えれば、それらを遵守する能力があるということです。

    一方、外国人は自国での振る舞いやルールを、日本でも行なっています。

    郷に入っても郷に従えない

    もちろん、適応している観光客もいますので、一部の人は違います。

    そのように考えると、そもそも日本語が難しい言語だったり、日本のルールや暗黙の了解は難しい内容なのかもしれません。

    そして、それらを世間の常識として定着している日本人は他国に比べて優秀な人が多いのでしょう。

    もちろん、それらに適応できない日本人もいますので、全員が優秀とは限りませんが(笑)

    人間は平等ではありません。

    それぞれの魂に合った人生の目的、今世の宿題があります。

    役割が異なるだけで、あの世の魂という観点でみれば同じ立場です。

    ですから、能力や社会的地位や持っている物といった、現世利益で他人を評価しないようにしていきましょう。

    それぞれの魂が、それぞれのスピードで学んでいるのです。

    自分のことに集中していきましょう。

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  • 医と醫と毉

    こんにちは!あの世とこの世合同会社、代表社員の中山彰仁です!

    医と醫と毉は、全て同じ意味をもつ漢字です。

    字体としては、新→旧ですので、毉が始まりとなる説があります。

    いずれも、いやす、くすし、病気を治す、医者といった意味があります。

    ポイントは、下の部分の違いです。

    毉の下の部分は巫であり、霊能力先天的な能力を用いた治療行為だと思います。

    霊能力の分野は多岐に渡りますが、病氣治しもその一つです。

    私がお世話になっている陰陽師の先生は9段階中の最上段の霊能力を持つので、心身の不調を感じた際に依頼する、日々のお祓いだけでもその効果の絶大さを体験できます。

    ただ、先生のレベルの霊能力を持つ人物は、ブッダやキリストや安倍晴明といった偉人ベルになりますので、ほとんどいないことが容易にわかります。

    魂1−1の人物による恩恵ですね。

    そう考えると、怪我人や病人の対応をしているだけで一日が終わってしまうこともあったかもしれません。

    そこで、霊能力の恩恵に与れない怪我人や病人をなんとかするために研究されたのが、醫といえそうです。

    の下の部分は酉ですが、これにはあまざけやといった意味があるそうです。

    主に経験則に基づいた薬草など、後天的な集合知であり、東洋医学が近いでしょう。

    それらがあれば、霊能力者に頼らずとも怪我や病気が治りやすくなった。

    魂:3武士/武将、さらには転生回数が190回代の人物たちの恩恵ですね。

    ただ、薬草などがなければどうにもならないという制限があったと思います。

    それでも、霊能力以上に多くの人々に恩恵を届けることができるようになった。

    そんな氣がしています。

    現代の医は、客観的な分析でしょうか。人をみるのではなく、症状などを主に分析しています。

    西洋医学が主流でしょう。

    欠点としては、その時代の科学レベルで変わるといったところでしょうか。

    私のnoteの読者はご高承の通り、西洋医学は検査と外科と病原菌に対しては有効ですが、ほとんどの人が体験する未病に対しては不得手です。

    病氣にならないことが大事なのに、病氣になったらお医者さんとお薬、といった価値観が蔓延しているように思います。

    つまり、病氣になっても構わないという感じでしょうか。

    病にかかるのは日常生活に何らかの要因があるからであり、これ以上悪化しないように生活習慣を改める必要があります。

    ですが、薬で何とかすればいいという価値観になると、根本的な解決になりません。

    その延長として、病が原因で命を落とす人が増えたのではないか。

    最近は、そんなことを考える時もあります。

    産業革命以降、体主霊従の時代になり、医学が牛耳ったでしょう。

    令和になり、霊主体従の時代に戻ったため、醫と毉の影響力が強まる傾向が考えられます。

    時代が変われば価値観も変わります。

    いつまでも旧い価値観に固執していると、どうなるのでしょうね。

    病院ではどうにもならない、原因不明の症状にお悩みの方は、ご相談ください。

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  • なぜ医者は患者の話をきかないのか

    こんにちは!

    あの世とこの世合同会社の代表社員、中山彰仁です!

    医者の態度が悪い、みたいな話を耳にしたことがあります。

    ですが、私がお世話になった病院ではそんなことはなかったので、人によるのだと思います。

    実際、西洋医学は臓器や器官を主な対象としているので、仕方ない。

    むしろ、最適な対応だとさえ思うことがあります。

    というのも、症状によっては早急に処置しないといけないため、無駄なくヒアリングしないといけない。

    また、原因をなるべくピンポイントで特定しないといけない。

    話を聞きながら原因の予測をしているため、頭をフル回転させている。

    しかも、記録を残さないといけないので、PCの画面に集中しなければならない。

    つまり、問診中、医者は氣を抜けない状態であることが予想されるため、さらに患者の目を見て、患者の要領を得ない話を聞くとことを求めるのは酷ではないかと思います。

    もう一言加えるのであれば、高齢化に伴って患者数が増えているため、患者一人にかけられる時間も限られてくるでしょう。

    一日にどれくらい患者の話を聞いているのかわかりませんが、すごい精神力だと思います。

    それもそのはず、医者に多い魂は転生回数が190回代の魂3:武士/武将の傾向が多いからです。

    400回ある人生の中でも特に勢いがある時期ですので、医師は基本的に体力も精神力も突出していると予想されます。

    ただ、転生回数が200回未満の魂は勢いがある分、人情の機微の理解や他人への配慮がどちらかといえば得意ではない時期といえそうです。

    寝食も忘れて研究に没頭する科学者をイメージすればわかりやすいでしょうか。

    ですから、魂的にも、医者が患者の話にあまり耳を傾けないことにも納得できます。

    自分が知りたい情報を取得することを最優先、あるいは特化していると思ってもいいかもしれません。

    良い意味で突き抜けているのかもしれません。

    一方、東洋医学では、患者の臓器や器官だけでなく、心理的な面や社会的な面も含めて心身の不調と向き合うため、傾聴する傾向が高いでしょう。

    こう書くと東洋医学の方が良さそうだと思うかもしれません。

    ですが、東洋医学は未病にも対応できますが、大怪我や感染症などには向いていません。

    また、改善するのに時間がかかる傾向があります。

    検査や外科、急性の症状には病院、それ以外の未病は東洋医学といったように、症状に合った機関に相談するのが大事ということでしょう。

    ちなみに、氣功師でも陰陽師の弟子でもある私は、見えない存在も含めて多角的に話を聞いています。

    ・物
    ・土地
    ・交友関係
    なども含めてヒアリングしないといけません。

    大変で時間がかかりますが、西洋医学でも東洋医学でも対応できない問題に対しても対応できますので、とてもやりがいを感じています。

    患者の人生が充実するために、西洋医学、東洋医学、霊能力、全てを適材適所に活用していけたらと思っています。

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  • 新千夜一夜物語 第62話:将棋とチェスの名人に共通する魂の属性

    新千夜一夜物語 第62話:将棋とチェスの名人に共通する魂の属性

    青年は思議していた。

    オリンピック以上のプロのスポーツ・芸能・芸術を生業にできる人物は、魂の属性が“2−3−5−5…2”に限られるというルールがあるなら、将棋やチェスといった、盤上での競技におけるプロの棋士にも、何らかの霊的な共通点があるだろうか。

    独りで考えても埒が明かないと思い、青年は陰陽師の元を尋ねるのだった。

    『先生、こんばんは。本日は将棋の棋士たちの魂の属性について教えていただきたいと思い、お邪魔いたしました』

    「あいわかった。そなたが気になった棋士の名前を教えてもらえるかの」

    『まずは、最年少記録や歴代一位の記録を持つ、藤井聡太と羽生善治についてお願いいたします』

    そう言い、青年は二人の略歴を口頭で伝える。

    《藤井聡太》
    2016年に史上最年少(14歳2か月)で四段昇段(プロ入り)を果たし、そのまま無敗で公式戦最多連勝記録(29連勝)を樹立した。その後、最年少一般棋士優勝・タイトル獲得、史上初の10代九段・二冠・三冠・四冠など多くの最年少記録を持っている。

    「どれ、みてみよう。少し待ちなさい」

    そう言い、陰陽師は、紙に鑑定結果を書き連ねていく。

    《羽生善治》
    ・1985年に中学生でプロ棋士となり、1989年、初タイトルとして竜王位を獲得。1996年2月14日、将棋界で初の全7タイトル(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖)(当時のタイトル数は7)の独占を達成。
    ・2017年12月5日、第30期竜王戦で15期ぶりに竜王位を獲得し、通算7期の条件を満たして永世竜王の資格保持者となり、初の永世七冠(永世竜王・十九世名人・永世王位・名誉王座・永世棋王・永世王将・永世棋聖)を達成。さらに名誉NHK杯選手権者の称号を保持しており、合計8つの永世称号の保持も史上初。
    ・2018年度(2019年)の第68回大会で優勝し、同大会優勝回数を11回に更新の上、一般棋戦(タイトル戦以外のプロ公式戦)の通算優勝回数が大山康晴を超え史上最多の45回となった。
    ・通算優勝回数152回、公式戦優勝回数144回、タイトル獲得99期、タイトル戦登場136回、同一タイトル戦26回連続登場(王座)、同一タイトル獲得通算24期(王座)、一般棋戦優勝回数45回は歴代単独1位の記録である。また、非タイトル戦優勝回数53回、非公式戦優勝回数8回、最優秀棋士賞22回、獲得賞金・対局料ランキング首位23回も歴代1位である。

    陰陽師が書いた二枚の属性表を見比べ、青年は口を開く。

    『やはりと言いますか、二人の属性表の数字は共通点が多いですね。特に、この二人の転生回数が290回代ということで、以前、“9”という数字には例外/矛盾という意味を持ち、“世の変革者”、収束、まとめるなどの役割を持つ傾向があるとお聞きしました』

    そう言い、青年は紙にペンを走らせる。

    《転生回数の“十”の位と“一”の位の数字が持つ意味》
    9:大々山、例外/矛盾、世の変革者、収束、まとめる
    7:大山
    4:小山
    3:数奇な運命、爆発、拡散、アップダウンが激しいなど
    1:雑味がなく、本来持って生まれた能力を100%発揮しやすい

    陰陽師が無言でうなずくのを見、青年は言葉を続ける。

    『将棋では古くから脈々と定石が受け継がれており、日進月歩、多くの棋士たちが最善の一手を研究しています。そうした棋譜を収束してまとめた結果として、真剣勝負の最中に相手の考えを看破し、好手や妙手を閃くという意味では、転生回数の290回代は文系の中での“大々山”と考えれば納得できます』

    「そのように考えることもできるじゃろうが、何事も例外があることと、あくまで現時点での検証の結果であるため、今後の検証によっては解釈が変わる可能性があることを覚えておくように」

    陰陽師の言葉に対し、青年は真剣な表情で大きくうなずく。

    「その前提を踏まえた上で補足しておくと、転生回数の200回を境に文系と理系に分かれ、転生回数が200回以下と若い第三期と第四期の魂は理系の傾向が、200回を超える第一期と第二期の魂は文系の傾向があることは、以前にも説明した通りじゃ」

    そう言い、陰陽師は紙に解説を書いていく。

    <各期と輪廻転生回数>
    第一期/老年期……301~400回(61~80歳)
    第二期/円熟期……201~300回(41~60歳)
    第三期/青年期……101~200回(21~40歳)
    第四期/幼年期……1~100回(0~20歳)
    ※人生を80年と仮定した場合。

    手を止めた陰陽師が言葉を続ける。

    「して、棋士にもピンからキリまでいると思うが、今度はさきほどの二人のような名人級以外で、他に気になる棋士はいるかの?」

    陰陽師にそう問われた青年は、スマートフォンを手早く操作し、口を開く。

    『棋士であると同時に投資家としても知られている桐谷広人と、将棋ソフト不正使用疑惑騒動を起こした、三浦弘行はいかがでしょうか』

    そう言い、青年は二人の略歴を口頭で伝える。

    《桐谷広人》
    ・1975年に四段昇段を果たしプロ棋士となった。当時まだ珍しかった、研究派の棋士で「コンピューター桐谷」の異名をとった。
    ・観戦記なども手掛け、囲碁・将棋チャンネルの「桐谷広人の将棋講座」及び「名勝負の解説」では師匠・升田幸三の将棋の解説も務めた。
    ・2000年には現役勤続25年表彰を受けた。第55期順位戦でフリークラスに陥落、復帰できないまま10年が経過したため、2007年3月末に引退した。通算成績は327勝483敗。
    ・“財テク棋士”として著名になり、現在では、財テクに関する雑誌“ダイヤモンドZAi”や“日経マネー”にも、個人資産家として登場する。2006年時点で桐谷は、株式を約400銘柄、時価3億円分を保有し、そのうち1億円が優待銘柄という。
    ・株主優待を活用することで生活費はほとんど現金を使わない。また、将棋棋士としての戦術思考を投資の世界でも十分に発揮し、人並み以上の優れた記憶力で、手元に届いた数多くの商品券の使用期限を全て頭の中で把握している。
    ・なお、将棋棋士としても投資家としてもテレビ番組に出演しており、テレビCMにも出演している。
    ・タカラトミー「大車輪てつぼうくん」(2014年)
    ・「ヤマハミュージックジャパン“クラビノーバ”CVP-700シリーズ」『音楽を、もう一度。』(2015年)

    《三浦弘行》
    ・将棋ソフト不正使用疑惑騒動の発端は、三浦の対局中の離席(特に久保利明との対局で30分以上離席したと久保利明が勘違いした事)や指し手の傾向(特に渡辺明との対局で三浦が局後の感想戦で示したコンピュータ将棋風の指し手)などを怪しんだ一部の棋士の告発によって、三浦がスマートフォンを利用してコンピュータ将棋ソフトを対局中に不正使用したのではないかとの嫌疑がかけられたことである。
    ・一部の棋士による疑惑の告発、日本将棋連盟による三浦の出場停止処分とそれに伴う竜王戦挑戦者変更、第三者委員会の調査による疑惑の解消と三浦の名誉回復、連盟理事5名の引責辞任・解任、これを契機とするルール改定が騒動の主たる内容である。
    ・日本将棋連盟の聞き取り調査に対して三浦は疑惑を否定したものの、調査のために休場することとなり、最終的には休場届の未提出を理由として連盟から出場停止処分が下された。三浦は第29期竜王戦挑戦者に決定していたが、出場停止に伴い挑戦者が丸山忠久に交代するという異例の事態となった。

    陰陽師は小さくうなずき、無言で紙にペンを走らせる。

    合計4人分の属性表を見比べた青年は、何度もうなずいてから口を開く。

    『このお二人は、転生回数が第二期で十の位が“4”の“小山”の時期に相当する魂3:武士ですので、先ほどの二人との大きな違いは、転生回数にありそうですね』

    「どうやらそのようじゃな」

    青年は三浦弘行の属性表の一部に視線を向け、再び口を開く。

    『それにしても、実際の真偽はさておき、不正疑惑騒動が起きてしまった要因の一つに、三浦弘行の人運の“6”という低さが関係している可能性は考えられるのでしょうか』

    そう言い、青年は“6”が持つ傾向について、紙に書き出していく。

    6:「不幸(そのもの)」「不幸な選択」「不実」「攻撃性」「サド的気質」

    「一つの出来事には様々は要因が複雑に絡み合って生じていることから、その一点のみで判断することはできぬが、その可能性も否定できないじゃろうな」

    陰陽師の言葉に対し、青年はうなずいた後、口を開く。

    『最後に、“二歩の人”として有名な橋本崇載を鑑定していただけますでしょうか』

    「よかろう。少し待ちなさい」

    そう言い、陰陽師は鑑定結果を書き足していく。

    新たな属性表を眺めた青年は、首をかしげながら口を開く。

    『彼も転生回数が290回代ですので、藤井聡太や羽生善治のような名人になれる素質はあったように思われますが、彼の転生回数の一の位の数字が“1”である一方、名人と呼ばれる二人の転生回数の一の位は“4”ですので、この違いも関係していると考えられるのでしょうか』

    「人間は多面体であるため、転生回数に限らず、属性表の一部のみを見て判断してはならぬが、少なくとも、転生回数に限って言えば、そのように考えることもできるじゃろうな。して、橋本崇載の戦績や略歴はいかほどなのじゃ?」

    青年は再びスマートフォンを操作し、口を開く。

    《橋本崇載》
    ・1994年9月奨励会試験では、2位で入会。試験対局の成績は7勝2敗だったが、その2敗はいずれも反則負けだった。
    ・第24回(1998年後期)より三段リーグ入り。参加2期目の第25回では、暫定2位の成績(12勝4敗)で最終日を迎えたが、2連敗を喫し6位に終わった。
    ・2004年度のNHK杯テレビ将棋トーナメントに出場した際、金髪のパンチパーマという髪型に、紫色のワイシャツを着用しており、その奇抜な出で立ちが話題となった。そのトーナメントを勝ち進み迎えた羽生善治戦(2005年1月放送)におけるテレビ視聴率は、通常のそれと比べて3倍になったといわれている。
    ・2008年度の第49期王位戦でも予選から挑戦者決定リーグ入りし、タイトルホルダーの渡辺明竜王、A級在籍棋士の丸山忠久他を破り最上位者となり、挑戦者決定戦に出場したが羽生善治に敗れ初のタイトル挑戦には至らなかった。
    ・第34期棋王戦では予選を勝ち抜き本戦に出場。そこでも当時王位のタイトルを保持していた深浦康市に勝利するなど快進撃を続け、準決勝に進出したが、タイトル挑戦には至らなかった。
    ・2009年度、第50期王位戦挑戦者決定リーグでは、タイトルホルダーの久保利明棋王、A級在籍棋士の佐藤康光、三浦弘行、井上慶太を破り最上位者となり、2年連続挑戦者決定戦に進出したが木村一基に敗れ、またも初のタイトル挑戦には至らなかった。
    ・シード権を獲得して臨んだ第35期棋王戦では、2年連続で準決勝に進出。しかし準決勝でも敗者復活戦1回戦でも敗れ、またしてもタイトル挑戦には至らなかった。
    ・2014年度、第64回NHK杯戦でベスト4進出するも、準決勝で二歩の反則手を指して敗退した。“二歩の人“として話題になる。
    ・タイトル挑戦・棋戦優勝・将棋大勝受賞歴がないのに、順位戦A級に昇給したのは、彼が史上2人目である。

    「なるほど」

    青年は再び属性表を眺めた後、口を開く。

    『彼には、血脈先祖の霊障と天命運に“2:仕事”の相がかかっていますが、彼の戦績が転生回数に見合わない要因の一部になっていると考えられるのでしょうか?』

    そう言い、青年は“霊障”について、紙に書き足していく。

    ・霊脈先祖の霊障:今世の宿題に対して逆接な“重し”、すなわち、人生の方向性が今世の宿題と逆方向に働く
    ・血脈先祖の霊障:今世の宿題に対して順接、すなわち“無用な重し”となって顕在化する

    陰陽師は小さくうなずいた後、口を開く。

    「少なからず、“2:仕事”の相は関係している可能性が考えられよう」

    青年は視線を落として小さくため息をつき、口を開く。

    『“唯物論者”である彼には霊脈先祖の霊障がかかっていないことから、棋士の道に進むことは、今世の彼の課題から大きく外れているとは限らないものの、棋士という狭き門をクリアできたのに実力を発揮できないのは、個人的に残念に感じます』

    「ちなみに、今の彼はどうしておるのじゃ?」

    『ウェブ上の情報を見る限り、今は棋士を引退し、YouTuberになっているようです』

    「なるほど」

    『彼には霊障がかかったままですので、YouTuberに転身しても、本来の実力が発揮されないかもしれません。そう考えますと、彼と何かしらのご縁があって、神事を申し込んでいただき、霊障を解消して活躍していただきたいと願わずにはいられません』

    「その機会があればいいがのお」

    陰陽師の言葉に対し、青年は首肯した後、口を開く。

    『以上で僕が気になる棋士は終わりですが、属性表における棋士の共通点は、いくつかあるようですね』

    五人の属性表を見比べた後、青年は口を開いた。

    ・2−3武士
    ・基本的気質O Sと具体的性格ソフトの数字が共に“7(1)”
    ・欄外の枝番が“1”
    ・全体運が9
    ・ビジネス運が9
    ・同一指向性が85以上
    ・トンチンカン度が40以下
    ・頭の回転の早さが80以上
    ・物事の本質を見極める力が80以上
    ・自己顕示欲の数字が“2(5)”
    ・人運が7以下
    ・「自己中」度が70以上

    『記録保持者の二人と他の三人における、転生回数以外の違いとしては、頭1/2とインターフェイスがあります。前者たちは頭1―3でインターフェイスの一桁目の数字が“3”である一方、後者たちは、頭1−7や頭2、インターフェイスの一桁目の数字が“6〜7”です』

    陰陽師が無言でうなずいて続きを促しているのを確認し、青年は言葉を続ける。

    『つまり、あえて極端な言い方をしてしまうと、名人と呼ばれる強さを持つ人物には、性格や気質が温和だったり、落ち着いている傾向があるのでしょうか?』

    「対局中に頭に血が上ったり、気分にムラがあっては重要な局面で冷静な判断ができないという可能性を考慮すれば、その傾向があると考えられるじゃろうな」

    『なるほど。ちなみにですが、駒を用いるという意味では将棋と似ている、チェスの世界ランキング一位の人物、マグヌス・カールセンの鑑定もお願いできますでしょうか?』

    「もちろんじゃとも。どんな人物かの?」

    青年は口頭で、マグヌスのチェス歴を伝える。

    《マグヌス・カールセン》
    1999年にノルウェーの国内選手権に8歳7ヶ月で出場。
    2004年に当時史上3番目の若さである13歳4カ月でグランドマスターになった。
    2010年1月に初めて世界ランキング1位になった。(史上最年少、19歳32日)
    2013年11月22日、世界チェス選手権で世界王者となる。なお22歳11か月での王者はガルリ・カスパロフ(22歳6か月)に次ぐ史上第2位の若さであった。
    2014年5月のレーティングでは歴代最高記録となる2882をマークした。2019年8月にも2882をマークしている。

    陰陽師は紙に鑑定結果を書き足していく。

    全員の属性表を見比べた後、青年はやや目を見開きながら、口を開く。

    『彼もチェスにおいて、世界ランキング1位という最年少記録を持つものの、転生回数は290回代ではないのですね』

    そう言い、青年は棋士たちと彼の属性表の相違点を書き連ねていく。

    ・物事の本質を見極める力が40と低い
    ・トンチンカン度が85と高い
    ・同一指向性が60と低め
    ・大局的見地が60と低め

    『将棋もチェスも頭脳戦の極地のように思われますので、これだけ違いがあることが意外に感じますが、チェスでは“取った相手の駒を再利用できない”という、将棋とのルールの違いが関係している可能性が考えられるのでしょうか?』

    「その可能性はじゅうぶんに考えられるじゃろうな」

    『やはり、そうでしたか。ちなみに、将棋とチェスでは局面の数が異なると言われています』

    そう言い、青年はそれぞれのゲーム中に現れる局面の数を紙に書き出していく。

    オセロ:10の60乗
    チェス:10の120乗
    将棋:10の226乗
    囲碁:10の360乗

    『将棋よりもチェスの方が局面の数が少ないという点に限って考えれば、チェスにおいては、マグヌス・カールセンの属性が適している可能性は考えられるのでしょうか』

    「そのように考えることもできよう」

    『ちなみに、将棋界にはチェスファンが多く、羽生善治は国内トッププレイヤーとして活躍しているようで、2022年には藤井聡太もチェスの大会に参加する予定です。実際、彼らはチェスでも世界ランキングの上位に入れる素質はあるのでしょうか?』

    青年の問いに対し、陰陽師はそれぞれの適性(言い換えれば強さ)を紙に書き足していく。

    《チェスの適性(言い換えれば強さ)》
    マグヌス:100
    藤井聡太:90
    羽生善治:90

    《将棋の適性(言い換えれば強さ)》
    藤井聡太:100
    羽生善治:95
    マグヌス:60

    鑑定結果を見た青年は、納得顔でうなずきながら、口を開く。

    『“大は小を兼ねる”ではありませんが、やはり将棋の名人であるお二人もチェスの適性が高いようですね。その一方、マグヌス・カールセンはさすがの100点ではありますが、将棋の強さがだいぶ下がっていますので、彼の魂の属性と各スコアはチェス向けだということがわかります』

    「どうやらそのようじゃな」

    陰陽師の言葉に対し、青年はうなずいた後、口を開く。

    『ところで、棋士たちとマグヌス・カールセンに共通している項目の中で、次の二つが気になりましたが、どのような理由が考えられるのでしょうか?』

    そう言い、青年は紙に書かれた共通点の二つを丸で囲む。

    ・人運が7以下
    ・「自己中」度が70以上

    「その二つに関して説明すると、スポーツを含め、対戦型の勝負事をすることが今世の課題に含まれている人物は人運が低く、“自己中”度のスコアが高い傾向がある」

    『なるほど。“長所と短所は表裏一体”ではありませんが、一般的には望ましくないと思われるそれらのスコアが、勝負事においては活かされることもあると考えられるということでしょうか?』

    青年の問いに対し、陰陽師はうなずき、口を開く。

    「その通りじゃ。ただし、あくまで鑑定結果は、各々が転生前に自らに課してきた“今世の課題”を果たすためにベストな数字である。ゆえに、それぞれの数字を単独で注目して人物評価をすることは禁物じゃ。そのことをじゅうぶんに理解した上で己の傾向をじゅうぶんに理解し、目の前の出来事に真摯に取り組み、日々、魂磨きに励むことが肝要なのじゃよ」

    そう言い、陰陽師は壁時計に視線を向ける。
    それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

    『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

    そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

    「今日もご苦労じゃったな。気をつけて帰るのじゃぞ」

    陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。

    帰路の途中、青年は藤井聡太と羽生善治とマグヌス・カールセンの属性表を見比べていた。

    日本では、どんな面においても満点に近い方が望ましい、という認識があるように思われる。

    言いかえれば、優秀な人物というのは、一部の例外をのぞき、全てのスコアが満点に近い人物なのだろう。

    そう考えると、マグヌス・カールセンよりも藤井聡太と羽生善治の方がこの世の基準でトータル的に考えれば優秀なのだろうが、チェスの適性(言い換えれば強さ)はマグヌス・カールセンの方が高い。

    つまり、優秀な人物を目指したり、優秀な人物ばかりを求めるのではなく、結局は各々が自分の傾向や適性を把握し、今世の課題を果たせる環境に身をおくこと、すなわち”適材適所”が重要なのかもしれない。

    過去の自分のように、己の傾向や適性よりも世間が求める優秀さを目指すあまり、疲弊してしまっている人は少なくないと思われる。

    そうした人々が神事を済ませてパフォーマンスが100%になり、自身の魂の属性をよく理解した上で、今世の課題を果たす方向に人生を舵取りし、悔いのない日々を過ごしてもらいたい。

    そのためにも、”天職”ランキングと”運気を下げずにもっとも稼げる職業”ランキングが自分にとって共に一位である、“啓蒙活動”に尽力しよう。

    そう、青年は思議したのだった。

    《合わせて読みたい》
    第23話:この世のルールと芸能界
    神事について

  • 新千夜一夜物語 第61話:ジョーカーと無敵の人

    新千夜一夜物語 第61話:ジョーカーと無敵の人

    青年は思議していた。

    2021年10月30日に、服部恭太氏が京王線の車内で70代の男性の右胸を刺して重傷を負わせ、さらに電車内で放火した件についてである。彼の犯行によって17人が重軽傷を負い、彼は殺人未遂として現行犯逮捕された。

    また、彼は映画“バットマン” に登場する悪役である“ジョーカー”に憧れて犯行に及んだとも述べていたことから、この事件は“ジョーカー事件”とも呼ばれているようだ。

     彼と“ジョーカー”には、霊的に何らかの共通点があるのだろうか。
    そして、こうした事件を起こす人物は“無敵の人”とも呼称されているが、“無敵の人”にも何らかの共通点があるのだろうか。

    独りで考えてもらちが開かないと思い、青年は陰陽師の元を訪れるのだった。

    『先生、こんばんは。本日は、ジョーカーと“無敵の人”について教えていただきたいと思い、お邪魔いたしました』

    「あまり聴き慣れない言葉じゃが、“無敵の人”とはどういった人物のことをさすのじゃ?」

    『“ひろゆき”氏による造語ではありますが、簡潔にお伝えしますと、無敵の人とは、“社会的に失うものが何も無いために犯罪を起こすことに何の躊躇もない人”のようです』

    「なるほど。して、ジョーカーとの共通点は?」

    《映画“JOKER”における、アーサー・フレックスのセリフ》
    “僕に失う物なんてなにもない。僕を傷つけるものなど、もう何もない。僕の人生は喜劇にすぎない。”

    『アーサーのセリフは劇中のものではありますが、似ていると言えば似ていると思われます。そのため、ジョーカーと“無敵の人”には、霊的にもなんらかの共通点があるのではないかと思った次第です』

    「そなたが知りたいことについてはわかった。して、具体的にどんな人物の鑑定をすればいいのじゃ」

    『まずは、ジョーカーとジョーカー事件を起こした服部恭太氏の鑑定をお願いします』

    「さっそくみてみよう。少し待ちなさい」

    そう言い、陰陽師は鑑定結果を紙に書き出していく。

    両者の属性表を見比べた後、青年は口を開く。

    『両者の属性は共通点が多いですね。ちなみにですが、服部氏はジョーカーに憧れたと述べていたようですが、魂の属性が近いことから、親和性を持っていると考えられるのでしょうか?』

    「その可能性は考えられるじゃろうな」

    陰陽師の言葉に対し、青年は小さくうなずき、口を開く。

    『ジョーカーは映画“バットマン”シリーズの最大の敵で、犯罪の首謀者として描かれています。属性表を見る限り、転生回数の十の位が“小山”である“4”の魂3:武将であり、しかも一の位が“雑味がなく、本来持って生まれた能力を100%発揮しやすい”傾向がある“1”であることを考慮すると、納得できます』

    「そなたの見解に付言するとすれば、 “バットマン”シリーズは回を重ねるごとに脚本家が変わることもある。その結果、魂の種類や転生回数などの大まかな部分は変わらぬものの、脚本家の演出によっては細部の数字は変わることがある。つまり、今回の鑑定結果は最新の映画である“JOKER”のものであることを覚えておくように」

    青年は小さくうなずき、口を開く。

    『かしこまりました。いずれにせよ、今回の属性表だけから判断しても、ジョーカーが“悪の権化”といった側面があると考えられるのでしょうか』

    「そうじゃな。他のシリーズのジョーカーの鑑定をしていないゆえ、一概には言えぬものの、そうした側面は間違いなくあると考えられる」

    陰陽師の言葉に対し、青年は小さくうなずいてから、再び属性表を見比べる。

    『ジョーカーはビジネス運と人運が、服部恭弥氏は人運が“1”ともっとも低い数値ですが、それぞれの運が非常に悪く、仕事と人間関係において数多のトラブルを体験することが今世の課題に含まれている傾向がある、と考えても問題ないのでしょうか?』

    そう言い、青年は総合運について紙に書き足していく。

     総合運が9点満点として、なおかつ9点の項目の運がある場合、その項目で苦労することは今世の宿題に含まれていない傾向がある。そして、8点の場合は、霊障とは関係なく“何らかの問題を抱える”ことになり、7点以下になってしまうと、“かなり大きな問題を抱える”結果となる傾向がある。また、全体運が1点下がる毎に、それ以外の項目は、全体運9点の場合と比べて、さらに1点ずつ下がる傾向がある

    「その傾向はあるじゃろうな。ちなみに、映画“JOKER”ではどんな不運な出来事が描かれておるのじゃ」

    『映画での演出ではありますが、次のようです』

    ・アーサーがピエロの格好で店の看板を持ちながらセールの宣伝をしていると、不良の若者たちに看板を奪われ、しかも暴行を受ける。後日、彼は派遣会社から看板を壊したことと、仕事を放棄したことを責められ、まともに話も聞いてもらえなかった。
    ・アーサーは同僚ランドルから護身用にと半ば強引に拳銃を受けとるが、その拳銃を小児病棟の慰問中に落としてしまい、上司からクビを宣告される。しかも、同僚ランドルは保身のために嘘を吐いた。
    ・アーサーが地下鉄に乗っていると、1人の女性が酔っ払ったスーツの男3人に絡まれていた。彼は見て見ぬふりをしようとするも発作が起きて笑いが止まらなくなり、気に障った3人から暴行を受けると、反射的に拳銃を取り出して全員を射殺してしまう。
    ・不運が続くアーサーの心のよりどころは、同じアパートに住むシングルマザーのソフィー・デュモン。彼はソフィーとは挨拶をする程度の関係で、度々ソフィーの後をつけ、その姿を眺めていた。地下鉄殺人の犯人を支持する市民の様子に彼は気分を上げ、ソフィーと仲を深める。しかし、実際は、彼はソフィーとの仲を深めることなどできておらず、これまで過ごした2人の日々は全て彼の妄想だった。
    ・ランドルはアーサーが地下鉄殺人の犯人であることに感づいており、拳銃の出所について証言の口裏合わせをするため来訪した。その際に、アーサーは隙をついてランドルをナイフで胸と目に突き刺し、頭を何度も壁に打ち付けるなどして惨殺する。
    ・アーサーは、自分が母親の恋人によって酷い虐待をされていたこと、虐待する恋人を母親が止めなかった理由が“虐待されても笑っているから”だったことを知る。全てに絶望した彼は、母親を殺害した。
    ・尊敬する大物芸人マレーと生放送で共演することになったものの、アーサーはまず地下鉄での証券マン3人の殺人の犯人であることを告白すると、続いて社会の不条理を主張し始めた。マレーとの口論の末、怒りに身を任せてマレーを射殺し、その場で逮捕されてしまう。

    読み上げた後、青年は眉間にしわを寄せながら言葉を続ける。

    『それにしても、これがノンフィクションだったら、壮絶な物語だと思います。映画として盛り上げるための脚本だと理解できるのですが…』

    「そうかもしれぬな。して、服部恭太氏にはどのような出来事があり、どのような動機で事件を起こしたのじゃ」

    陰陽師に問われた青年は、スマートフォンを操作し、口を開く。

    『まずは、事件前に彼の身に起きていた出来事です』

    ・4年前に恋人と別れたにもかかわらず、事件発生日もSNSのプロフィール画像に当時の恋人との写真を用いていた。
    ・2017年に漫画喫茶のシャワー室を2回盗撮した。
    ・3年以上務めたコールセンターの仕事では濡れ衣を着せられ、客とチャットでトラブルを起こす。その後、勤め先から部署の配置転換を提案されるが拒み、自主的に退職した。
    ・事件発生時は無職で、消費者金融からお金を借りて犯行の軍資金と生活費に充てていた。

    『今度は動機ですが、次のようです』

    ・人をやっつけるジョーカーに憧れていた。
    ・仕事で失敗して友人関係もうまくいかず死にたかった。
    ・自分では死ねないから人を殺して死刑になりたかった。2人以上殺せば死刑になれると思って事件を起こした。
    ・小田急線刺傷事件をまねた。

    「小田急刺傷事件をまねたとあるが、その事件はどういったものなのじゃ?」

    陰陽師の問いに対し、青年はスマートフォンを手早く操作し、口を開く。

    『ジョーカー事件の少し前、2021年8月6日に対馬悠介氏が牛刀を用いて小田急線の車内で乗客10人を斬りつける事件がありました。特に、標的にされた20代の女子大生は重傷を負っています』

    「なるほど」

    陰陽師のあいづちに対し、青年は言葉を続ける。

    『小田急線の事件では、対馬氏が刃物で切りつけた後、車内で放火しようとした点はジョーカー事件と同じです。ただ、着火剤として選ばれたサラダ油の引火点(着火するのに必要な最低温度)は250度らしく、彼はライターを使ったためにそこまで高温にすることはできず、火災には至りませんでした』

    「ちなみに、ジョーカー事件の加害者である服部氏は何を着火剤として用いたのじゃ」

    『対馬氏がサラダ油で失敗したことがWEB上に記載されており、そうした情報を知った服部氏は、可燃性の高いライターオイルを選び、小田急線の事件よりも被害が拡大したようです』

    「なるほど。ちなみに、小田急線刺傷事件の加害者は、どのような動機で犯行に及んだのかの」

    青年はスマートフォンを操作した後、口を開く。

    ・食料品店で万引きを行い、女性店員に通報された。店員を恨んだ容疑者は、その日のうちに殺害を決意したものの、食料品店が閉まる時間だったため、電車での無差別殺人に計画を変更した。
    ・以前サークルでばかにされ、出会い系でも断られるなどし、勝ち組の女や幸せそうなカップルを見ると殺したくなるようになった。
    ・“派手な感じをした勝ち組っぽい女性に見えた”という理由で、女子大生を狙った
    ・さらに大量殺人を企て、電車内にサラダ油を撒いてライターで火をつけようとしたが、燃えることはなかった。

    青年の言葉を聞いた陰陽師は、紙に属性表を書き足していく。

    新たに書き足された属性表を見た後、青年は口を開く。

    『彼の場合、ジョーカー事件の加害者と犯行の動機が異なり、女性への逆恨みや、そこから派生する攻撃性、八つ当たりという印象を受けます。また、属性表から判断するに、人運、恋愛運が共に“6”であり、“6”が持つ傾向である“不幸(そのもの)”、“不幸な選択”、“不実”、“攻撃性”、“サド的気質”の中でも、特に“攻撃性”も事件を起こした要因の一部となっている可能性があるのではないかと考えました』

    「その可能性はあるじゃろうな」

    『動機は異なれど、電車内で起きた事件として話を進めますと、対馬悠介氏が小田急刺傷事件を起こしたことで、この事件を模倣して服部恭太氏が京王線刺傷事件を起こし、さらにその事件を模倣し、2021年11月8日に三宅潔氏が九州新幹線にて放火未遂をしました』

    「ちなみに、三宅氏の犯行の動機は似たようなものかの?」

    『ネットで調べる限り、当時の彼は生活保護であり、経済的に困窮していたことを主な理由とした自殺目的のようです』

    「なるほど。動機はそれぞれ一致してはいないものの、一つの事件をきっかけに、それと似たような事件が続いている可能性が考えられるようじゃな」

    そう言い、陰陽師は紙に属性表を書き足していく。

    全員の属性表が明らかになったことで、青年は四つの属性表を見比べた後、口を開く。

    『アーサー・フレックス(ジョーカー)と服部恭太氏の属性表は近いものの、他の2名は細部が異なる印象を受けます。とは言え、四名の共通点はそれなりに挙げられそうです』

    そう言い、さらに青年が4名の共通点を読み上げた後、陰陽師は口を開く。

    「そなたが挙げた共通点の中で、次の項目の数が多くなるにつれて、世間でいうところの“犯罪者”となる可能性が高くなると考えられる」

    そう言い、陰陽師が口頭で伝えた項目を、青年は紙に書き留めていく。

    《この世の基準における共通点》
    ・恋人がおらず、仕事がなくて経済的に困窮している。

    《属性表における共通点》
    1:頭2で、二桁目の枝番が“3”以上(1〜3)
    2:“自己中”度が80以上
    3:三桁目の枝番のほとんどが7か9
    4:仁が50以下
    5:慈愛が35以下
    6:攻撃性の項目の上段の数字が“2”
    7:インターフェイスの一桁目と二桁目の数字が共に“6”(攻撃性が高い)
    8:人運が“6”以下
    9:ビジネス運が“6”以下

    青年は紙に書かれた共通点を見た後、口を開く。

    『頭2の人物には、“我”が強く、物事を自分の利害関係で判断する傾向があり、二桁目の枝番は、“1”に近いほど頭1/2の傾向が顕著になるとお聞きしました。4人とも、頭2で二桁目の枝番が“3”以上ですので、頭2の傾向がかなり強いと思われます』

    そう言い、青年は、頭1と2の傾向を紙に書き記していく

    頭1:農耕/遊牧民族の末裔。世のため・人のためを地で行動する傾向がある
    頭2:狩猟民族の末裔。“我”が強く、物事を自分の利害関係で判断する傾向がある

    手を止めた後、青年は言葉を続ける。

    『また、2:“自己中”度の高さが頭2の傾向に輪を掛けていると思われますが、加えて、3の条件によって“この世の法律や社会規範”から逸脱した言動を取る傾向があると考えられるため、各々が犯罪に手を染めようという結論に至る傾向があったと考えられます』

    「そのように考えることもできるかもしれぬな」

    『事件を起こそうと思い至っても、場合によっては考え直す機会もあったかもしれませんが、4から7の特徴によって、思いとどまることなく、実際に犯行に及んでしまった可能性が考えられるのでしょうか』

    「人間は多面体で一つの出来事においても様々な要因が複雑に絡んでいることから、一概には言えぬものの、そうした可能性も考えられるじゃろうな」

    陰陽師の言葉に対し、青年は小さくうなずき、口を開く。

    『8と9に関しては、“恋人がおらず、仕事がなくて経済的に困窮している”という、この世の基準における共通点に通ずるところがあると思います。ただし、8と9の数値が低いがゆえに今世ではそうした境遇に陥ってしまったと考えられます』

    「そなたの考えに対して付言しておくと、対馬悠介氏について言及した際に“6”が持つ傾向である“不幸(そのもの)”、“不幸な選択”、“不実”、“攻撃性”、“サド的気質”と説明していたと思うが、そうした数字が持つ傾向については、あくまで現時点での見解であり、今後、より多くの人物の鑑定とその人生を照らし合わせて統計を取っていくことで、変わる可能性があることを覚えておくようにの」

    陰陽師の言葉に対し、青年は大きくうなずいた後、口を開く。

    『かしこまりました。ここまでのお話をまとめますと、世間的には、“無敵の人”が誕生する原因は社会にあるという声もあります。確かに、今回取り上げた人物達に、恋人・友人がおらず、仕事もお金もないことの要因に、コロナ禍もあってか、昨今の社会情勢の影響もあったかもしれません』

    青年の言葉に対し、陰陽師は黙って続きを促す。

    『しかしながら、今世の宿題に対し、逆接方向に顕在化する、霊脈の先祖霊の霊障がかかっていないことと、欄外の枝番が持つ傾向と、ビジネス運、人運、恋愛運が低いことなどを考慮すれば、各々が“無敵の人”の条件を満たしたのは、社会に原因があるのではなく、それぞれの今世の課題を果たすため、という可能性が考えられるのでしょうか』

    「その可能性はあるかもしれぬな。そして、各々があえてそうした不運な境遇を体験することを今世の課題として決め、この世に転生すると決めたことは、この世が“修行の場”であり、他の多くの新興宗教がうたう、“地上天国”を目指す場ではないという一つの根拠になりうるのじゃ」

    そう言い、陰陽師は壁時計に視線を向ける。

    それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

    『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

    そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

    「今日もご苦労じゃったな。気をつけて帰るのじゃぞ」

    陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。

    帰路の途中、青年は今回取り上げた事件について反芻していた。

    彼らの犯行に対して、この世の基準で批判、非難することは容易い。

    だが、彼らは各々の今世の課題を果たしているに過ぎず、さらに言えば、例えば、欄外の枝番に“1”を持つ、“この世の法律や社会規範”を準ずる人々からすれば、彼らの言動は批判や非難の対象になることは当然のように思われるが、欄外の枝番に“9”を持つ人々からすれば、その逆もまた然りなのかもしれない。

    結局のところ、この世は“修行の場”であり、各々が今世の課題を果たすことが重要であるので、直接関わることがない人物の価値観や言動について批判や非難をするよりも、なぜ自分は赤の他人に対して批判や非難をしようと思ったのかを考え、自分の今世の課題を果たす糧にしていく方が、“魂磨き”の観点で考えれば適しているのではないか。

    今回取り上げた加害者たちの言動を知り、世間の大勢の目に触れる形で今世の課題を果たしている彼らと比べて、自分は今世の課題を果たせているのだろうか。
    自分の人生という映画の主演を演じきれているのだろうか。
    この世の基準に囚われて、今世の課題と関係ないことに命を費やしていないだろうか。
    その答えはきっと、自分がこの肉体を離れる時にわかるのかもしれない。

    少なくとも、今は霊的な要因によって無用な苦労をしている人々に神事を済ませることの重要性を伝え、一人でも多くの人々が今世の課題を果たせるよう、尽力していこう。

    そう、青年は思議したのだった。

    《合わせて読みたい》
    ・第19話:2018年東海道新幹線殺傷事件と魂の属性

  • 新千夜一夜物語 第60話:問題を起こす都・市議会議員の魂の属性と適性

    新千夜一夜物語 第60話:問題を起こす都・市議会議員の魂の属性と適性

    青年は思議していた。

    都・市議会議員の中で、問題行動を起こしている人物がいる件についてである。

    元東京都議会議員である木下富美子さんは、自動車運転死傷処罰法違反(無免許過失運転致傷)と道路交通法違反(報告義務違反)を。
    臼杵市議会議員である若林純一さんは、鼻マスクで議会に参加し、市議会のルール違反を。
    志木市議会議員である与儀大介さんは、議会の無断欠席を。

    地方の市政を担う立場であるにもかかわらず、こうした問題を起こす3名には、何らかの共通点があるのだろうか。

    独りで考えてもらちが明かないと思い、青年は陰陽師の元を尋ねるのだった。

    『先生、こんばんは。本日は問題行動を起こしている都・市議会議員について教えていただきたいと思い、お邪魔いたしました』
    「そのような議員に何人か心当たりがあるが、そなたが気になった人物を、具体的に教えてもらえるかの」
    青年が挙げた人物の名前を聞いた陰陽師は、紙に属性表を書き連ねていく。

    三人の属性表を見比べた後、青年は言った。

    『全員の共通点として、全員の人運が“7”と低いことと、血脈の霊障に“14:人的トラブル”と“17:天啓/憑依”の相がかかっていることが挙げられます。ただし、それらはあくまで複雑に絡み合う要因の一部に過ぎないと思いますが」

    陰陽師がだまってうなずくのを見、青年は言葉を続ける。

    『まずは木下富美子元都議についてですが、彼女は自動車運転死傷処罰法違反(無免許過失運転致傷)と道路交通法違反(報告義務違反)を起こしたことが、辞職勧告となる主なきっかけとして取り上げられています』

    そう言い、青年はスマートフォンを見ながら内容を説明する。

    2021年7月2日、東京都議選期間中に板橋区高島平3丁目の“高島平二丁目交差点”で車をバックさせて衝突事故を起こしていた。しかも、免許停止期間中の無免許状態であった。
    7月4日、都議会板橋区選挙区より再選。
    7月6日、都民ファーストの会から正式に除名された。その後、木下富美子さんは一人会派である“SDGs東京”を立ち上げる。
    7月23日の臨時会にて、全会一致で辞職勧告決議案が決議された。
    9月28日、都議会定例会にて全会一致で二度目の辞職勧告決議案が決議された。これに対し、木下富美子さんは、ホームページ上で議員継続を表明。
    10月13日、体調不良を理由に“召喚状”には応じず議会を欠席。
    11月22日、都議会議員を辞職。

    『ウェブ上の情報を見る限り、無免許運転は今回に限らず、通算7回もしていたようですね。さらに、彼女を取り巻く騒動は、その事故で終わらず、彼女は当選後に一度も公の場に姿を見せなかったにもかかわらず、議員報酬を全額受け取っていたようです』

    「彼女に対する、世間の声はどうだったのじゃ」

    『都議会局や都選挙管理委員会に“辞職すべきだ”“給与が出るのはけしからん”など430件以上の抗議が寄せられていたようですね。それを受けてかはわかりませんが、議員報酬をNPO法人などの団体に寄付し、政務活動費である合計150万円は都に返還し、今後は政務活動費を請求しない方針を示しました』

    「なるほど」

    『ただ、給与を寄付したと判断できる資料の提出がないようで、実際のところは不明ではないかと』

    「ちなみに、彼女は世論だけでなく他の議員からも辞職を求められていたものの、辞職するまでにそれなりに時間を要していたようじゃが、どういった心情だったのかの」

    青年はスマートフォンを操作した後、答える。

    辞職を求める声があるのは承知している。批判を受ける一方で続けてほしいという声があるのも事実

    『とのことですが、彼女は“自己中”度が80と高く、“トンチンカン度”も85と非常に高いことから、こうした発言も含め、自己中心的で常識外れと言っても過言ではない、一連の問題行動を取ってしまった可能性が考えられます』

    「特に、“トンチンカン度”が高い人物は、世間一般の常識を正確に理解することや、他者がどのように考えているかを理解することが難しい傾向を持つため、その可能性は少なからずあるかもしれぬな」

    陰陽師の言葉に青年はうなずき、口を開く。

    『今度は臼杵市議会議員である若林純一さんについてですが、彼は市議会でのマスクの着用をめぐる騒動を起こした結果、2021年9月30日に市議会にて辞職勧告決議が可決されました。決議文の内容としては』

    青年はスマートフォンを操作した後、再び口を開く。

    2021年8月末、中学校周辺や駅でマスクを着用せずに新型コロナウイルスのワクチンの子供への接種停止を求めるチラシを配布。その結果、臼杵市の議会に市民から抗議が寄せられる。
    9月7日、議長発言によりマスク着用が強制であるルールを知る。鼻マスクであることを二度注意された際、挙手して発言を求めたが、黙殺される。その後に最後通告を受け、午後は欠席。
    9月16日、ノーマスクで出席。退席命令を受けるが理由が不明瞭だと主張し、居座る。
    9月21日、鼻マスクで出席。挙手で発言を求めるが、鼻までマスクをしていないので発言は許されないと注意され、退席。
    9月30日、最初は鼻が隠れるようにマスクを着用していたが、自席に着席すると鼻を出した。議長から鼻を隠すように求められたが無視したため、退席を命じられる。
    彼が退席した後に、マスクの適正着用を求める議長や委員長に従わないとして、議員としての規範意識が欠如していると指摘し、辞職勧告決議案が可決された

    「して、辞職勧告を受けた彼は、どう応えたのじゃ」

    『表現の自由を侵害しているとして、彼は臼杵市と市議会に対してマスク着用義務や議会内の発言禁止処分の取り消しおよび、100万円の損害賠償などを求めて提訴したようです』

    若林純一氏の属性表を再び見、青年は言葉を続ける。

    『マスクの着用を拒否している点だけに着目すれば、以前お聞きした(※第42話:マスク拒否おじさんと魂の属性)、4−4(転生回数期が第四期の魂4)の男性に近い魂の属性を持っているのではないかと思いました。まさか、“魂2:貴族”の魂を持つ人物だったとは』

    驚きを隠せない様子の青年を横目に、陰陽師は湯呑みに注がれた茶を一口飲む。

    「ちなみに、彼が鼻マスクを続けている理由についてはわかるかの」

    『また、新型コロナウイルスが発生した当初、マスクは飛沫を防ぐための“咳エチケット”だったのですが、やがて、未着用は悪いことだと世間の風潮が変わったと思われます。そうした風潮を踏まえた上で、彼は“マスクを着用するか否か”ではなく、“マスクを強要すること”への問題定義として鼻マスクを続けているようです』

    「なるほど。“魂2:貴族”が持つ傾向の一つに、自分の信条を行動によって世に信を問うという気質がある。その顕れとして、鼻マスクを続けていると言えるかもしれんな」

    陰陽師の言葉を聞いた青年は、若林純一市議の属性表を再び見た。

    『彼の信条と魂2が持つ傾向については理解できます。ただ、彼の魂の性質親近性の数字は、上段が“4”ですから、“7”を持つ人物に比べて“優しさ”や“穏やかさ”を持つ傾向があると考えられるため、市議会という公的な場で違反行動を取って問題を起こすような人物には思えないのですが…』

    「そなたの考えに付言するとすれば、下段が“5”であるため、“優しさ”や“穏やかさ”の傾向を根本に持ちながらも、“7”を持つ人物の傾向に寄っていると考えられる。さらもって具体的に言えば、上段に“7”、下段に“1”の数字を持つ人物の傾向と似ていると言えるかもしれぬ」

    青年はしばらく黙考し、やがて口を開く。

    『なるほど。魂の性質親近性が7(1)の人物は明確に自己主張をする傾向があると認識していましたが、その傾向に似ていると考えれば、彼が辞職勧告を受けるまで度重なる注意をされても鼻マスクをし続けていることに納得できます』

    「そのように捉えることもできよう。して、辞職勧告を受けた彼は、今後の議会における振る舞いについて、どのように応えておるのじゃ」

    青年はスマートフォンを操作し、答える。

    そういう風に思われているのは理解しました。これからも市民のために粉骨砕身で頑張る所存です。

    『と述べていますが、鼻マスクについては言及していないようですので、辞職勧告ではなく、強制的に辞職させられるといった、よほどの圧力がかからない限り、彼は鼻マスクを続けるかもしれませんね』

    苦笑を浮かべながら言う青年に対し、陰陽師は小さくうなずいて口を開く。

    「その可能性もじゅうぶんに考えられるじゃろうな。それにじゃ、ワシが見る限り、彼は家庭教育に関する見識が深いようじゃから、他の道に進むことも選択肢の一つかもしれぬ」

    青年はスマートフォンを操作し、口を開く。

    『そう言えば、彼は臼杵市役所の教育民生委員会に所属しているようですから、先生の見立ての通りかもしれませんね』

    民生委員は、厚生労働大臣から委嘱され、それぞれの地域において、常に住民の立場に立って相談に応じ、必要な援助を行い、社会福祉の増進に努める方々であり、「児童委員」を兼ねています。
    児童委員は、地域の子どもたちが元気に安心して暮らせるように、子どもたちを見守り、子育ての不安や妊娠中の心配ごとなどの相談・支援等を行います。また、一部の児童委員は児童に関することを専門的に担当する「主任児童委員」の指名を受けています。”

    厚生労働省ウェブサイト

    青年は一枚の属性表を手に取り、再び口を開く。

    『最後は志木市の与儀大介議員についてですが、2021年2月19日に埼玉県志木市議会が彼に対して“猛省を促す決議”を多数決で可決しました』

    「猛省を促すとは、いったい彼は何をしたのじゃ」

    2020年9月30日の朝霞地区一部事務組合議会を無断欠席
    2021年2月15日の市議会代表者会議と議運を欠席

    『ちなみにですが、後者の会議を欠席した理由は商談だったようです』

    そう言い、青年はスマートフォンを見ながら文章を読み上げる。

    (商談は)企業誘致につながる話だった。(議運などが)志木市のためになる動きを飛ばしてでも参加しなければならない重要な会議かと言われると、そうではないと判断した。

    『とのことですので、前者の会議を無断欠席したことも考慮すれば、彼にとって、公務の優先順位はあまり高くない印象を受けます』

    青年は彼の属性を再び眺め、腕を組んでから言葉を続ける。

    『ただ、彼の物事の本質を見極める力や大局的見地の数値が高く、トンチンカン度と“自己中”度の数値が低めであることを考慮すると、本来は、議会を欠席するような傾向を持つ人物ではないと考えられますが』

    「ふむ。それにしても、なにゆえ彼は志木市議会議員に出馬したのじゃ」

    『ウェブ上の情報を見る限り、矢内東紀さん、通称えらいてんちょうさん(頭2、2−3武士)が“しょぼい政党”を立ち上げて政治活動を始めた際に、与儀大介さんがえらいてんちょうさんから立候補して欲しいと声をかけられたことがきっかけだったようです』

    「なるほど。彼の本懐ではなかったようじゃな」

    陰陽師の言葉に対し、青年はうなずき、口を開く。

    『どうやら、そのようです。実際、彼はSNS上で、“僕には政治思想や実現したいことなどなかったのですが、えらてんさんとやっていたらおもろい景色を見せてくれるんだろうなぁ”と述べています』

    青年はスマートフォンを手早く操作し、言葉を続ける。

    『ところが、彼が当選した後、えらいてんちょうさんが体調を崩し、しかも復帰の目処が立たなかったようですので、えらいてんちょうさんが見せてくれたであろうおもろい景色を見ることが叶わなくなってしまいました。それで、市議会議員としてのモチベーションが大きく下がってしまったと思われます』

    「彼が政治に参加した動機や彼の適性を考えれば、その通りかもしれんな。ワシが見る限り、彼には世界的な見識があり、世界を相手に飛び回る方向性の方が適しているようじゃ。また、彼の適性・今後の人生の方向性の一つとして、不特定多数の人に“娯楽の場”を提供することが挙げられる」

    『なるほど。ちなみに、彼にとって、具体的にどのような職業が適していると考えられるのでしょうか』

    陰陽師は小刻みに指を動かした後、口を開く。

    「大きく分けて二つが考えられる。一つ目は、自分の理想を追いかけ、NPOを立ち上げて世界的な環境問題に取り組むなど、世間的にクリーンな“清く正しく美しく”を地で行く方向性じゃ」

    陰陽師の言葉を聞いた青年は、しばらく黙考した後、口を開く。

    『彼の欄外の枝番の数字はほぼ“1”ですので、“この世の法律や社会規範”に準じた傾向があると考えられるため、納得できます。ただ、その内容ですと、若林純一さんではありませんが、“魂2:貴族”の人物に適している方向性のように思われますが』

    「そこで、二つ目の話じゃ。先ほど説明した、不特定多数の人に“娯楽の場”を提供することを基にした事業が二つ目となり、飲食店やクラブや風俗店の経営、あるいはIT関連にも彼は適しているようじゃな」

    青年は手を打ち、口を開く。

    『なるほど。エステサロンやバーなどの経営もしているようですので、納得できます。また、彼が“魂3:武士”であることも踏まえれば、議会に出席するよりも、彼が考える志木市のメリットのために商談を優先したということも、わからなくもないです」

    「まあ、その可能性もありえるじゃろうな」

    青年は再び3人の属性表を見比べ、口を開く。

    『以前、我が国の与党議員となりえる魂の属性についてお聞きしましたが(※第31話:東京都知事選2020と魂の属性②)、都・市議に適した魂の属性にも、何らかの傾向があるのでしょうか』

    そう言い、青年は紙にペンを走らせる。

    与党側の多く、首相の魂の属性:1(4)−1、2(4)−3
    野党側の多くの議員の魂の属性:2(3)―3、2(7)−4

    「現時点での仮説としては、基本的にはその傾向に沿っていると思われる。ただし、県議会議員、市議会議員、町・区議会議員と規模が縮小するにつれて、その傾向から離れ、曖昧になっていく可能性も考えられる」

    『なるほど。今回の3名ですと、与儀大介さんが2(3)―3に該当していますが、3名それぞれの都・市議会議員としての適性を鑑定することはできるのでしょうか』

    「どれ、みてみよう。少し待ちなさい」

    青年が固唾を飲んで見守る中、陰陽師は指を小刻みに動かした後、結果を紙に書き記していく。

    与儀大介 :75
    木下富美子:60
    若林純一 :35

    青年はやや目を見開きながら口を開く。

    『与儀さんのスコアが3名の中で1位であることは予想していましたが、若林さんよりも木下さんの方がだいぶ適性があるようですね。ただ、先ほど先生からお聞きした若林さんの適性を考えれば、納得できますが』

    「人間は多面体であり、それぞれの今世の課題が異なるゆえ、魂の種類や属性だけで適性を判断できるわけではないということじゃな」

    陰陽師の言葉に対し、青年は真剣な表情でうなずいた後、口を開く。

    『それにしても、適性に関しては90点(S)以上が望ましいとのことだったと記憶していますが、三人ともその水準を下回っているようですね』

    「出逢いは必然であることから、その三人が政界に進出したことは、本人たちにとっては言うまでもなく、その三人と関わった人々にとっても何らかの学びを得られたじゃろうから、適性のスコアだけで判断をしないようにの」

    陰陽師の言葉に対し、青年は大きくうなずく。

    『そうですね。都・市議での経験が、それぞれにとって適した道に進んだ時に活かされる可能性もあるでしょうし。ただ、与儀さんは血脈先祖の霊障と天命運に“2:仕事”の相がかかっていますので、市議の任期を終えた後の仕事においても、無用な重しがあると思われますが』

    眉間にシワを寄せながらそう言う青年に対し、陰陽師はいつもの笑みで声をかける。

    「一つ補足しておくと、与儀大介氏と若林純一氏の転生回数の一の位の数字は共に“1”じゃ」

    『そう言えば、転生回数の一の位の数字にも、それぞれ傾向があるのでしたね。僕の見立てでは、木下富美子さんの転生回数の一の位の数字は、“数奇な運命を歩む”、“拡散、爆発、拡散、アップダウンが激しい”傾向がある“3”ではないかと思いましたが』

    青年の言葉に対し、陰陽師は小さくうなずいた後、口を開く。

    「そなたの言う通りじゃ。話を戻すが、“1”の数字が持つ意味とは、“雑味がなく、本来持って生まれた能力を100%発揮しやすい”傾向があると思われるが、現時点では確認・検証中ではある」

    『なるほど。与儀さんと若林さんが今後どのような方向性に進むにせよ、本来持って生まれた能力を100%発揮しやすい傾向を持っているなら、現在のパフォーマンスはお二人とも23%しか発揮されていませんので、なおさら、各種神事を済ませてパフォーマンスを100%にし、今世の課題を果たしていただきたいところです』

    「時が満ち、そなたと何らかの縁があればあるいは…」

    そう言い、陰陽師は壁時計に視線を向ける。
    それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

    『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

    そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

    「今日もご苦労じゃったな。気をつけて帰るのじゃぞ」

    陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。

    帰路の途中、青年は都・市議会議員の適性について考えていた。
    若林純一さんは2010年の市議選において、与儀大介さんは今回の市議選において、無投票で当選していたようだ。

    国を変えることは難しくても、都・市議としての適性が90点以上である人物が、無投票で当選できそうな地域で出馬すれば当選しやすくなるだろう。
    そして、適性を持つ市議が増えることで、小さい規模からでも少しずつ社会に変化をもたらすことができるのかもしれない。

    今回の自分の寿命が尽きる頃には実現しないだろうが、遠い未来に何度か転生を繰り返したら、適材適所ではないが、より多くの人が天職に就き、魂磨きに励む時代を見られるかもしれない。
    そのためにも、今世の自分は、一人でも多くの人にこの世とあの世の仕組みについて伝えていこう。

    そう、青年は思議したのだった。

    《合わせて読みたい》
    第42話:マスク拒否おじさんと魂の属性
    第31話:東京都知事選2020と魂の属性②

  • 新千夜一夜物語 第59話:殺人犯が服役中に数学に目覚めた話

    新千夜一夜物語 第59話:殺人犯が服役中に数学に目覚めた話

    青年は思議していた。

    ワシントン州シアトル近郊の刑務所で服役中のクリストファー・ヘイブンズ氏が、大昔の数学の問題を解いたことについてである。

    その問題は、“幾何学の父”と称される古代エジプトのギリシャ系数学者、エウクレイデス(ユークリッド)が頭を悩ませた“連分数”であり、現在では暗号技術などに使われる、非常に重要な理論だという。

    殺人罪で服役中にもかかわらず、世界初の理論を発見した彼は、どのような魂の属性なのだろうか。

    一人で考えてもらちが開かないと思い、青年は陰陽師の元を尋ねるのだった。

    『先生、こんばんは。本日は殺人罪で服役中の数学者について教えていただきたいと思い、お邪魔いたしました』

    「殺人犯でありながら数学者でもある人物とな。具体的に、どういった人物かを教えてもらえるかの?」

    青年はスマートフォンを操作し、ネットの記事をかいつまんで陰陽師に伝える。

    『クリストファー・ヘイブンズ氏は、高校を中退した後に麻薬に手を出したあげく、殺人を犯してしまい、2011年に25年の実刑判決を受けており、現在もワシントン州の刑務所に服役しています。現在40歳である彼には、刑期がまだ15年も残っています』

    「話を聞く限り、服役してから10年も経っているようじゃが、その間、彼はどのようにして数学を学んだのじゃ?」

    青年は再びスマートフォンを操作し、口を開く。

    『彼と数学との出逢いに関する記述はありませんが、刑務所の中で数学を学び始めてから、彼は独学で高等数学の基礎を終えたようです。その後、基礎では物足りなかった彼は、とある出版社に手紙を出し、“Annals of Mathematics”という数学誌を求めました。その数学誌を求めると同時に、彼は刑務所内で数学について話し合える仲間がいないと嘆いていたことも伝えていたようです』

    「して、その手紙を発送したことで、どんな縁が繋がったのじゃ」

    『すると、この手紙を受け取ったMathematica Science Publisherの編集者のパートナーの父親が、なんとトリノ大学の数学者ウンベルト・チェルッティ教授だったようです。手紙を読んだ教授は、手紙を持ってきた娘のためもあってか、クリストファー氏に数学の問題を与えてみたようです』

    「それで、クリストファー氏はその問題を見事解いてみせたと」

    陰陽師の言葉に対し、青年はうなずき、口を開く。

    『チェルッティ教授の課題をクリアしたクリストファー氏は、今度は教授が取り組もうとしていた大昔の数学の問題に挑戦しないかと誘われ、その後に世界初の理論を発見したとのことです』

    「なるほど。ちなみに、彼が解いた問題とはどのようなものなのじゃ」

    青年はスマートフォンを操作し、苦笑を浮かべながら口を開く。

    『数学に明るくないので真っ当な説明ができませんが、“連分数”に関する理論のようです。しかも、この問題は、古代ギリシャの数学者エウクレイデス(ユークリウッド)が頭を悩ませていたほどだそうです』

    そう言い、青年は連分数の説明を読み上げる。

    ”連分数とは分母に更に分数が含まれているような分数のことを指す。分子が全て 1 である場合には特に単純連分数または正則連分数ということがある。単に連分数といった場合、正則連分数を指す場合が多い。具体的には次のような形である。

    連分数SS

    ここで a0 は整数、それ以外の an は正の整数である。正則連分数は、最大公約数を求めるユークリウッドの互除法から自然に生じるものであり、古くからペル方程式の解法にも利用された。”

    「して、この理論は世間でどのような形で活用されておるのじゃ」

    『例えば、現代の暗号技術などにも応用され、金融や軍事通信といった分野で重要な役割を果たしているそうです』

    陰陽師は湯呑みに注がれた茶を一口のみ、口を開く。

    「なるほど。殺人を犯しながらも、そのように世界初の理論を発見したクリストファー氏の魂の属性について知りたいということじゃったな」
    無言でうなずく青年を見やり、陰陽師は紙に鑑定結果を書き記していく。

    クリストファー・ヘイブンズSS
    ウンベルト・チェルッティSS

    両者の属性表を見比べ、青年は口を開く。

    『二人とも数学の研究に携われるという素質から、転生回数が第三期で十の位が“9”、すなわち190回代で理系の“大々山”に該当する“魂3:武士”ではないかと予想していましたが、やはり』

    「何事も例外があるゆえ、あくまで傾向に過ぎないという前提で補足すると、転生回数の200回を境に文系と理系に分かれ、転生回数が200回以下と若い第三期と第四期の魂は理系の傾向が、200回を超える第一期と第二期の魂は文系の傾向があることを覚えておるかの」

    青年が黙って首肯するのを見やり、陰陽師は紙に解説を書き足していく。

    <各期と輪廻転生回数>
    第一期/老年期……301~400回(61~80歳)
    第二期/円熟期……201~300回(41~60歳)
    第三期/青年期……101~200回(21~40歳)
    第四期/幼年期……1~100回(0~20歳)
    ※人生を80年と仮定した場合。

    『両者の魂は3(9)―3と同じであり、クリストファー氏よりもチェルッティ教授の方が数学を研究している時間が長いと考えられることから、今回の“連分数”の理論を解く可能性があったのは教授の方だと思いましたが、なぜ、クリストファー氏は世界初の理論を発見できたのでしょうか?』

    「今後も検証が必要であることから、あくまで現時点で確認できている範囲での回答になるが、一の位の数字によって、同じ190回代でも傾向が変わる可能性が考えられる」

    『なるほど。ちなみに、両者はそれぞれ何回なのでしょうか?』

    やや前のめりになる青年を片手で制し、陰陽師は指を小刻みに動かす。

    「クリストファー氏が“193”回でチェルッティ教授は“197”回じゃな」

    そう言い、陰陽師は属性表に数字を書き足す。

    『以前、“3”という数字は“数奇な運命”を歩む傾向があるとお聞きしましたが、彼の経歴はまさに数奇な運命と言っても過言ではないと思われます』

    「そなたの言葉に付言するとすれば、“3”には爆発、拡散、アップダウンが激しいなどの傾向があり、さらに言うと、数学者としての役割に限って言えば、193回の転生回数を持つ人物には、研究する役割を持つ傾向があると仮説を立てておる。よって、彼は研究の末に世界初の理論を発見できた可能性が考えられる」

    『なるほど。ちなみに、彼が“連分数”の理論を解いた背景には、チェルッティ教授の協力が不可欠だったと思いますが、197回であるチェルッティ教授にはどのような役割があると仮説を立てていらっしゃるのでしょうか?』

    「197回の転生回数を持つ教授には、主に理論などを教える教授としての役割を、研究においては“座長”としての役割を持つ傾向があり、何人かの研究を自分に取りまとめて一つの方向性に収束していく傾向があると仮説を立てておる」

    『その仮説を基に考えますと、クリストファー氏は服役中であり、まだ博士号などの肩書きがないことから、彼が解決した“連分数”の理論をチェルッティ教授が預かり、世間に公表するという一連の流れは、魂の属性からみても妥当な役割分担なのかもしれませんね』

    「そのように考えることもできよう。ただし、その考えはあくまで現時点での仮説に基づいた話であって、今後、様々な人物を鑑定していくなかで変わることがあることを覚えておくようにの」

    『あくまで仮説に過ぎないということ、理解しました。ところで、エウクレイデスの魂の属性も3(9)―3武士ではないかと予想しましたが、いかがでしょうか?』

    陰陽師は青年にうなずいて見せ、鑑定結果を紙に書き足していく。

    エウクレイディスSS

    エウクレイデスの属性表を見た青年は、首をかしげながら問うた。

    『やはり、3(9)―3武士でしたか。ただ、一つ気になったのが、今回話題に上がった数学者は、三人ともトンチンカン度が高いようですが、この項目は学問の研究の適性の有無にはあまり関係がないのでしょうか?』

    青年の問いに対し、陰陽師は小さくうなずいて答える。

    「簡潔に言えば、トンチンカン度は精神的なバランスが取れている人物かどうかを表す指標と考えるとわかりやすいかの」

    『精神的なバランスでしょうか』

    「うむ。例えば、この数値が低い人物は精神的なバランスが取れている傾向があることから、社会や組織の中でもより多くの人間と協力することができる。一方、この数値が高くなるにつれ、精神的なバランスが乱れやすく、他人が考えていることや、世の中の常識を正確に理解することが難しくなっていく傾向がある」

    『つまり、三人の数学者たちは、他人とチームを組んだり協力することが得意ではなく、独りか、なるべく少人数で研究する方が向いているということでしょうか』

    「そのように考えることもできる。今回のクリストファー氏のように、突出した発見をするような研究者や学者などは、“トンチンカン度”の数値がそれなりに高いからこそ、偉業を成し遂げられると捉えることもできる」

    『なるほど』

    青年はうなずき、再び三人の属性表を見比べた後に、口を開く。

    『ちなみに、三人の数学者の中でクリストファー氏だけが、“物事の本質を正しく見極める力”が40と低めですが、字面だけで判断すれば、この数値が低めの彼が世界初の理論を発見できたことは珍しいのではないかと思いました』

    「いや、そうではない。属性表における“物事の本質を正しく見極める力”も“トンチンカン度”と同様、学問とは直接関係はなく、例を挙げるとすれば、人が交流する際に生じる心の“機微”や、相手が発した言葉の“本質”を的確に捉える力を表していると言えよう」

    青年は小さく唸ってから口を開く。

    『“物事の本質を正しく見極める力”には、相手の発言の言葉だけに反応するのではなく、その“意図”を汲み取ったり、心情を察する力も含まれているのでしょうか。例えば、“トンチンカン度”が理論や他者の思考に対する理解度とすれば、“物事の本質を見極める力”は他者の心や感情に対する理解度といったように』

    「“物事の本質を見極める力”について付言するとすれば、人間と猿の大きな違いの一つに言語の有無があり、泣き声によって表現されていた感情だけでなく、言語によって組織や共同体での共通認識となる、“人工的な価値観”も人間は構築できるようになった。言い換えれば、そうした“暗黙の了解”を理解する力も含まれているとも言えよう」

    『なるほど。他に気になったことは、もしも彼が高校を中退せずに大学に進学し、その過程か大学在学中に数学と出逢っていたら、数学の才能がもっと早く開花していたのではないかと思います。その一方で、彼にかかっている霊障に“5:事故/事件”の相がないことと、人運が“3”とかなり低いことと、欄外の枝番に“1”と“9”が混在していますので、殺人を犯して刑務所に入り、そこで数学に目覚めることも、彼の今世の課題としては必要だったのかもしれませんね』

    「彼に殺害された人物とその家族の心中を思えば残念ではあるが、この世の出来事には様々な要因が複雑に絡み合っていることから、断言することはできぬが、そう考えることもできるかもしれぬな」

    『なるほど』

    「また、彼が欄外の枝番に“1”と“9”を持っていることに関して付言するとすれば、霊的にも、潜在的な今世の性格としても“ジギルとハイド”ではないが、世間一般にいうところの善人と悪人という二面性を併せ持つ傾向があると仮説を立てることもできよう」

    陰陽師の言葉を聞いた青年は、納得顔でうなずいて言った。

    『クリストファー氏の経歴を見て思ったのは、ゲーテが言うように、“光が多いところでは、影も強くなる”ではありませんが、麻薬に手を出し、殺人を犯してしまったことが世間での影だとすれば、数学は世間における光の領域といったところでしょうか』

    「彼に限って言えば、そのように捉えることもできるかもしれぬな。“9”という数字には“3”と同様に例外/矛盾という意味を持つものの、“9”が収束、まとめるなどの役割を持つことから、“3”とは別の傾向があるという仮説を立てておる」

    陰陽師の言葉を聞いた青年は、しばらく黙考し、やがて口を開く。

    『確か、“9”には“世の変革者”という傾向があるとお聞きしたことがありますが、彼は今回の“連分数”の理論の発見で終わらず、今後も数学界の先駆者として活躍していける可能性はあるのでしょうか』

    「ひょっとしたら、その可能性もあるじゃろうな」

    『実際、彼は現在、郵送で学位を取得できるアダムズ州立大学で準学士号の取得を目指しているそうです。他にも、刑務所内で数学クラブなるものを結成しており、メンバーの中には、円周率の小数点461桁まで暗唱してみせた人物もいたようです。そう言う意味では、彼は隠れた才能を発掘していると言うべきか、後進の育成や囚人の更生の一助も含めて行なっているようです』

    「ふむ。数学クラブを結成したことで、刑務所内で数学について話し合える仲間がいないと嘆いていた彼にとっての、念願が叶ったようじゃな」

    『どうやらそのようですね。ただ、彼の人運が“3”とかなり低いことと、欄外の枝番の“9”の数字の特徴を持つことは余生もずっと変わらないことから、数学クラブにおいてか、あるいは数学の研究をしていく中で何らかの人間関係にまつわるトラブルが生じ、さすがに今度は殺人とまではいかないと思いますが、問題を起こすのではないかと、個人的には危惧しています』

    「今後の彼の人生において、そなたが言うようなことが起こる可能性が無きにしも非ずであるが、そうした人間関係におけるトラブルもまた、彼にとっての今世の課題に必要な出来事であるのじゃろうな」

    そう言い、陰陽師は壁時計に視線を向ける。
    それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

    『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

    そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

    「今日もご苦労じゃったな。気をつけて帰るのじゃぞ」

    陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。

    帰路の途中、青年は自らの属性表とビジネス鑑定の結果を眺めていた。

    転生回数:233回
    トンチンカン度:80
    物事の本質を見極める力:40

    《ビジネス鑑定》
    経営者:AA
    経営陣:A
    従業員:BB
    自営業:SS

    これ以外の他の数字も見る限り、どうやら自分には他者とアライアンスを組むよりも、自分が苦手な分野を外部発注し、自分は自営業の立場で得意分野に専念する方が良さそうだ。
    あるいは、今後、自分の事業が大きくなって経営者の立場にならざるを得ないことがあったとしても、ごく少人数で回す方が適しているのかもしれない。

    いずれにせよ、万が一自分とアライアンスを組んでくれる人物や社員となってくれる人物が現れたとしたら、そうした貴重な人々と丁重に関わっていけたらと思う。

    鑑定結果の様々な項目の数字によって、この世の生きやすさが変わるかも知れず、時には落胆することもあるかも知れない。だが、鑑定結果の傾向を基にある程度の人生の方向性を把握できるのであれば、自分の傾向に合った生き方を選び、同時に今世の課題を果たせたらと思う。

    とは言え、転生回数が233回と、十の位も一の位も“3”であることから、数奇な運命、爆発、拡散、アップダウンが激しいなど、客観的に見ればかなり破天荒な人生だと自覚しているのもまた事実である。

    青年は苦笑を浮かべ、ため息をつくのであった。

  • 新千夜一夜物語 第58話:VTuberとフェミニスト

    新千夜一夜物語 第58話:VTuberとフェミニスト

    青年は思議していた。

    2021年7月16日から、千葉県警が公開していた交通安全の啓発動画に出演していたVTuber 、“戸定梨香”に対し、同年8月26日に全国フェミニスト議員連盟の代表である増田薫さんが“性的対象物”として描写されていると主張し、動画の削除を要請した件についてである。

    この要請に対し、千葉県警は、子ども向けの動画として製作したものの、本来の目的と異なる意図が伝わることを懸念し、同年9月10日に当該動画を削除した。

    動画が削除されたことに対し、“戸定梨香”をプロデュースする板倉節子さんは、“戸定梨香”の製作陣は全て女性であり、“性的対象物”として描写していないと主張したものの、結果的に、秋以降の千葉県警との共同企画も白紙になってしまった。

    “戸定梨香”が“性的対象物”として描写されているか否かについて、女性同士で意見が割れているが、異なる見解を持つ二人は、それぞれどのような魂の属性なのだろうか?
    また、今回の騒動を経て、社会にどのような変化が起きていると考えられるのだろうか?

    独りで考えてもらちが明かないと思い、青年は陰陽師の元を訪れるのだった。

    『先生、こんばんは。本日は千葉県警の交通安全の啓発動画に出演していたVTuberが、“性的対象物”として描写されているという理由で削除されてしまった件について教えていただきたいと思い、お邪魔いたしました』

    「質問に答える前に聞いておきたいのじゃが、VTuberとはどういったものなのかの?」

    陰陽師の問いに対し、青年はスマートフォンを操作し、口を開く。

    Virtual YouTuber(バーチャル ユーチューバー)の略称。
    アニメやCGで作ったキャラクターを動かしてYoutuberのように動画を配信する人。ビジネスの世界などで活用が広がっている。

    「VTuberがいかようなものかについては理解した。ところで、動画を用いて何らかの情報を発信するのであれば、本人が出演すればいいものを、なにゆえキャラクターを用いるのじゃ?」

    『“戸定梨香”の場合、松戸市出身の女性が、自分のなりたい姿としてセーラー服に似た衣装などをデザインし、Youtubeでの声も自分で担当しているとのことですので、自分の理想の姿やなりたい自分を模したキャラクターになりきって発信できることが、理由の一つかもしれません』

    「なるほど。ワシにはなじみがない分野ではあるが、千葉県警が“戸定梨香”を採用した理由についてはわかるかの?」

    『千葉県警は、若い世代に興味をもってもらうために、松戸市の魅力を発信するなど地域に根ざした活動を行なっている芸能プロダクションから“ご当地VTuber戸定梨香”による広報啓発活動の提案を受け、採用したようです』

    「して、その“戸定梨香”は、動画の削除を要請されるような、性的対象物として描写された容姿なのかの?」

    陰陽師の言葉に対し、青年は首を傾げながら口を開く。

    『“戸定梨香”に関し、僕は性的だとは全く思いませんが、全国フェミニスト議員連盟は次のように主張しています』

    セーラー服のような上衣で、丈はきわめて短く、腹やへそを露出しています。体を動かす度に大きな胸が揺れます。下衣は極端なミニスカートで、女子中高生であることを印象づけたうえで、性的対象物として描写し、かつ強調しています。公共機関である警察署が、女児を性的対象とするようなアニメキャラクターを採用することは絶対にあってはならない。

    『これに対し、“戸定梨香”をプロデュースしている、株式会社Art Stone Entertainmentの代表取締役の板倉節子さんは女性で、製作陣も全員女性とのことですし、性的な対象物として描写つもりも、強調したつもりもないと述べています』

    「女性が制作している以上、性的対象物として描かれたとは言い難いと思われるが、他の動画においても、性的対象物としてクレームが入っているのかの?」

    『いえ、板倉さんが言うには、“戸定梨香”は2020年4月から松戸市を応援する動画に出演していたようですが、これまでに一度もクレームはなかったとのことです。実際、千葉県警が“戸定梨香”を採用する際も、松戸警察署の男性職員及び女性職員が参画して、“戸定梨香”の過去の出演映像等を確認していましたので、千葉県警としても問題ないと判断したようです』

    「なるほど。他に、板倉さんがどういった主張をしているか、わかるかの?」

    陰陽師にそう問われた青年は、大きく頷いてから、口を開く。

    ・服装や体型を理由に“性的対象物だ”とレッテルを貼り、公共の場から追い出そうとする全国フェミニスト議員連盟の活動は、本来、フェミニズムが擁護すべき、女性の多数な在り方と自由を称揚する立場と全く矛盾する。
    ・いろんな意見があるのは当然だと思うが、議論がなければ同じことが続いてしまうので削除されて終わりにはしたくない。私やタレントの気持ちはどうなるのでしょうか。今後地域を盛り上げるPRに関わることができるのか不安です。作品を作る皆さんの気持ち、努力を見た目で判断しないでください。それこそが女性蔑視なのではないでしょうか。動画の制作に関わった私も女性です。表現をする上での女性の権利は一体何なのか。

    「なるほど。そうした経緯を踏まえて、そなたは二人の魂の属性について知りたいということかな?」

    『おっしゃる通りです』

    「ちなみに、そなたの見立てではどのように考える?」

    陰陽師にそう問われた青年は、しばらく黙考し、やがて口を開く。

    『“戸定梨香”に対して性的対象物だと主張し、動画の削除まで要請した増田さんは、頭2の2−4(転生回数期が第二期の魂4:一般庶民)であるのに対し、板倉さんは、頭1の2−3(転生回数期が第二期の魂3:武士・武将)ではないかと思います』

    「それではみてみよう。少し待ちなさい」

    そう言い、陰陽師は紙に二人の鑑定結果を書き記していく。

    増田薫SS
    板倉節子SS

    二人の属性表を見比べた後、青年は口を開く。

    『どうやら、増田薫さんは頭2の2−4で、板倉さんは頭1の2(4)−3武士のようですね。この二人に限って今回の件について話を進めていくと、偏狭な正義感を持ち、大局的見地に欠けた主張を行う前者と、大局的見地に基づいた主張を行う後者とで二分していると思われます』

    そう言った後、青年は増田薫の経歴を紙に書き記していく。

    1965年11月東京都江戸川区生まれ
    武蔵野美術短期大学デザイン科卒業
    都立亀戸職業訓練校 建築製図科卒業
    都内の建築設計事務所勤務
    1998年 松戸市に転入
    蔵のギャラリー・喫茶「結花」スタッフ
    2002〜2003年 松戸市矢切小学校PTA
    2011年〜 放射能から子どもを守りたいと願う母おやたちと活動
    2012〜2014年 生命保険会社勤務
    現松戸市市議会議員

    「その二人に限って言えば、そうと言えるかも知れぬが、今回の件に対し、ネット上での反応はどうなっておるのじゃ?」

    『この件に対し、インターネット上では、動画の削除の要請に対する反対署名が6万5,000件以上も集まっていますし、千葉県警のホームページからは動画を削除されたものの、株式会社Art Stone Entertainmentは独自に当該動画を公開しているようで、動画に対する反応は賛意がほとんどで、否定的な意見は1割あるかないか、とのことです』

    青年の言葉を聞いた陰陽師は、小さく頷いてから、口を開く。

    「なるほど。ちなみに、反対署名を始めた人物についてはわかるかの?」

    陰陽師にそう問われた青年は、スマートフォンを操作した後、口を開く。

    『どうやら、大田区議員である荻野稔氏のようです。彼自身もVTuberとして活動していますし、増田薫さんと同じ地方議会議員としての立場ではありますが、彼女とは対に当たる言動を取っています』

    青年の言葉を聞いた陰陽師は、指を小刻みに動かした後、口を開く。

    「ふむ。彼は頭1(4−1)、2(3)―3武士のようじゃな。そなたが調べた情報のみで判断するとすれば、ネット上の声も加わり、頭1の魂3側の意見の方が主流のように見えるが、増田薫さんが要請した通りに動画が削除された結果を鑑みるに、彼女の思惑通りに事が進んだようじゃな」

    陰陽師の言葉を聞いた青年は、眉間にシワを寄せながら、口を開く。

    『今回、動画の削除を要請されたことがきっかけで、千葉県警と“戸定梨香”との秋以降の共同企画は白紙になってしまったようで、“戸定梨香”の製作陣の仕事が減ってしまいました。同時に、“戸定梨香”を採用することで千葉県警が得られたであろう、宣伝効果もそれなりに失われてしまったと思われます』

    「ワシにはよくわからぬが、VTuberというのは、そこまで宣伝効果があるのかの?」

    陰陽師にそう問われた青年は、スマートフォンを操作し、口を開く。

    『ネットの情報を見る限り、VTuberは地方自治体における町おこしへの活用も始まっており、2018年には茨城県が茨ひより氏を自治体公認VTuberとするなど、地方の魅力を全国に発信するための新しい媒体として期待されているようです』

    「なるほど」

    『せっかく千葉県警が交通安全を啓蒙するためにVTuberを採用したのですから、美大卒でそれなりにクリエイティヴに理解があると思われる増田薫さんも、感情的に動画の削除を要請して終わりにするのではなく、動画の視聴者が不快感を覚えぬよう、“戸定梨香”の容姿のどこをどう具体的に改善すればいいのかといった提案をし、秋以降の動画の内容に活かすこともできたのではないかと思います』

    「そなたは“魂3:武士”ゆえ、そのような考えを持つのじゃろうが、大局的見地に欠け、偏狭な正義感を持つ2−4の増田さんには、そのような発想を持つことは難しいかもしれぬな」

    『そうなのですね。ただ、よくよく考えてみたら、公共機関である千葉県警が採用するキャラクターとしては、あのキャラクターでなくてもいいとは思わなくもないですし、動画の削除の要請に賛同した少数派の人々の主義・主張には賛成しかねるものの、彼女なりの感じ方をなるべく尊重できたらとは思いますが』

    「そのように歩み寄ることは時には必要ではあるものの、魂4の声ばかり取り入れた結果、現代の生きづらい世の中になっていることを、理解しておるかな?」

    陰陽師にそう問われた青年は、しばらく黙考した後、口を開く。

    『インターネットの出現によって、参加意識が高い“魂4:一般庶民”が発言権を得たことで、大局的見地が欠けた偏狭な正義感に基づいた価値観が浸透し始めたことだと記憶していますが、今回の件に限って言えば、どのような変化があったのでしょうか?』

    「例えば、昨今では問題視されている、セクハラやパワハラなどは、昭和(1)の時代では“風潮”のようなもので、平成と令和(共に2)のように騒がれるものではなかった」

    『当時はセクハラやパワハラが“風潮”として受け入れられていたということは、昨今の価値観とは大きく異なると思われますが、それらに対する認識において、昨今とはどのように異なっていたのでしょうか?』

    「例えば、会社の男性上司が部下である女性社員に対し、“(体型が)少し丸くなったのでは”といった主旨の発言をしたとしよう。その意図するところは、当時の女性社員は早めに素敵な男性を見つけて寿退社することがほとんどだったという背景を踏まえており、女性社員が意中の男性とよりよく交際できるように、といった上司なりの気遣いもあったと思われる」

    『そのような背景があったのでしたら、そうした上司の発言に悪意があるとは言い難いですし、上司の発言の意図をくめたであろう、魂1〜3の人物にとっては、自戒のきっかけになりそうです。しかしながら、魂4の人物にとってはそうではなかったと?』

    青年の問いに対し、陰陽師は小さく頷いた後、口を開く。

    「魂4の人物の中にはそうした上司の発言に対し、良い思いを抱かなかった人物は少なくなかったと思われる。もっとも、そなたが言うように、魂1〜3全員がそうした上司の発言に対して寛容ではなかったと思われるがの」

    『なるほど』

    「セクハラに関して付言しておくと、例えば、望ましい容姿の男性に言い寄られることは快く、生理的に受け付けられない男性から同様の行為をされることは不快に感じ、許せないという、同じ行為であっても、受け手の好み、すなわち当事者間の主観的な問題であることはわかるかの」

    陰陽師の言葉に対し、青年は納得顔でうなずいた後、答える。

    『ところが、ネットの出現によって魂4の声が多数を占めた結果、魂1〜3の人々がそうした魂4の声が世間の価値観のスタンダードだと勘違いしてしまった。その結果、0or100ではありませんが、女性が不快に感じる男性からの言動をセクハラとみなし、さらにセクハラを禁止して撲滅しようとする価値観が、世の中の主流になってきたわけですね』

    「その可能性が考えられる。しかしながら、**ハラスメントの問題は当事者同士の主観の相違、つまりはお互いの価値観に対する相互の“不寛容さ”の問題に過ぎないと思われるため、当事者同士の主観に基づいた基準がそのまま世間の基準となることが、本当に適しているかどうかは断言できぬがの」

    陰陽師の答えを聞いた青年は、しばらく黙考した後、やがて口を開く。

    『何事にも例外があると先生がおっしゃるように、一つの基準がどんな場合においても当てはまるとは限りませんからね。僕にとって気掛かりなことは、魂4の声が主流となった世論の変化によって、セクハラやパワハラにとどまらず、カスタマーハラスメントやワクチンハラスメントといった言葉が現れているように、平成以降の世の中の言動に対する制限が増え、ますます生きづらい世の中になっていく傾向があるのではないかということです』

    「現状のままでは、今後もその傾向に進みつつあると思われる」

    陰陽師の言葉を聞いた青年は、腕を組み、思案顔で口を開く。

    『ちなみにですが、魂1~3の人物がSNS上で大局的見地に基づいた発言を積極的に行うことによって、いずれ、魂1〜3の価値観が魂4の人々にも伝わり、ネット上の声の内容やが変わり、世論に変化が生じる可能性はあるのでしょうか?』

    「その可能性は無きにしもあらず、じゃな。以前も伝えたように、魂の種類はそれぞれの役割と容量で異なっている。そして、魂1〜3と魂4の間には魂の容量に大きな差があるため、残念ながら、魂1〜3の意見は魂4の人物には伝わらない可能性が非常に高い」

    そう言い、陰陽師は魂の種類とそれぞれの容量について、紙に書き記していく。

    《魂の種類とそれぞれの容量》
    魂1:僧侶/王侯(スーパーコンピューター)
    魂2:貴族(汎用コンピューター)
    魂3:武士・武将(パーソナルコンピューター)
    魂4:一般庶民(ガラ携並)

    眉間にシワを寄せ、小さくため息をついてから、青年は口を開く。

    『ということは、今回の件のように、個人の主観であり、彼女たちの“不寛容さ”に基づいていると言えなくもない少数意見であっても、“言ったもの勝ち”といった風潮が続いていく可能性が考えられるのでしょうか?』

    「少なくとも、現状はそのような風潮であり、魂4の価値観が主流になっていることは紛れもない事実のように思われる。しかしながら、魂1〜3の発言が増えることによって、やがて魂4の価値観とのすり合わせが生じる可能性も無きにしも非ず、じゃ」

    『なるほど。ネット上では魂1〜3にとっては多勢に無勢ですので、魂1〜3の価値観を主流にすることは難しいものの、魂4側の価値観も含めてお互いの価値観を認めつつ、お互いにとって望ましい妥協点に落ち着くことができるなら、それはそれで理想的な状態と言えるのでしょうか?』

    『実現するかどうかは別として、その状態も一つの可能性ではあると思う。いずれにせよ、令和革命の影響によって、これまでの“等質性”から“多様性”に回帰していく世の中で、お互いの個性を尊重しあえる人物が増えることが望ましいのかもしれぬな」

    そう言い、陰陽師は壁時計に視線を向ける。
    それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

    『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

    そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

    「今日もご苦労じゃったな。気をつけて帰るのじゃぞ」

    陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。

    帰路の途中、青年は“戸定梨香”の動画を再び視聴していた。

    等質性から多様性の世の中にシフトしているということは、それだけ“個性”も重要になってくるのかもしれない。
    もしそうであるならば、今までのような、受け身で右に倣えといった価値観に捉われず、また、魂磨きに適しているか否かを主軸に、自らが活躍できる環境に身を置くことも必要になってくるだろう。

    昨今でも、集団の中には、自分たちと異質な存在を排除しようとする人々がいるだろうし、そうした中で他人と異なる言動を取ることは勇気が要るかもしれない。
    だが、魂の種類によってそれぞれの理屈や思いがあるように、社会的な肩書きやこれまでの人生の背景だけで目の前の人物の価値観や言動が決まることはないだろう。

    よって、一方的に目の前の人物をこうだと決めつけることは避け、目の前の人物がどんなことに何を考え、何を感じているかをお互いに把握することは、重要なことのように思われる。
    そして、そうした他人とのやり取りを経ることで、他人と違うことを恐れず、他人と異なる自らの個性を受け入れられたら、自らの個性を尊重することができ、同様に、他者にも他者が尊重している個性があることを理解すれば、他者の個性も受け入れやすくなるのかもしれない。

    可能性の一つとして、今世の課題を果たすことと個性を発揮することに、多少なりとも関係があるのであれば、各種神事を済ませて霊的な無用な重しを解消することによって、より多くの人々が、本来の人生を歩んでもらえたら嬉しく思う。

    そう、青年は思議したのであった。

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