新千夜一夜物語 第57話:ヒカルと宮迫と牛宮城

青年は思議していた。

2021年10月1日にオープンする予定だった、ヒカルと宮迫が共同経営する焼肉店“牛宮城”が無期限延期状態になっていることについてである。

今後、“牛宮城”はどうなっていくのか?
今回の件に、何らかの霊障が関係しているのだろうか?
また、ヒカルと宮迫の魂の属性と、二人の相性はどうなのか?

独りで考えてもらちが明かないと思い、青年は陰陽師の元を訪れるのだった。

『先生、こんばんは。本日は、ヒカルさんと宮迫博之さんが共同経営する焼肉店が、無期限延期状態になっていることについて教えていただきたいと思い、お邪魔いたしました』

「先日、話題になっていた件じゃな。まずは、二人が焼肉店を共同経営することになった経緯を教えてもらえるかの?」

陰陽師にそう問われた青年は、スマートフォンの画面を見ながら、口を開く。

・2021年2月11日に、宮迫が“焼肉屋の開業資金として1億円を貸して欲しい”とドッキリ企画でヒカルにお願いしたところ、ヒカルがあっさりと承諾し、ドッキリだったはずが本当に焼肉店を共同経営する運びことになった。
・その後、肉のスペシャリスト・森田隼人氏による手引きのもと、店舗で提供するブランド牛“ヒカサコ牛”の選定を行う動画を公開するなど、焼肉屋の核となる牛肉の品質に関して万全の準備を整える。
・2021年9月28日に、ヒカルと宮迫がオープンを間近に控えた牛宮城の最終確認をすべく来店したところ、試食したヒカルが大激怒。
・牛宮城のオープンは無期限延期状態となり、いいクオリティのものができないと判断したら、ヒカルは撤退も考えているという。

経緯を説明した後、青年はスマートフォンを卓上に置き、再び口を開く。

『ネットの情報を見る限り、“牛宮城”の店内の冷蔵庫が稼働していなかったために、牛肉を冷凍保存せざるをえなかったようで、冷凍保存したことによって質が落ちてしまった牛肉を試食で提供したことが、主な要因と思われますが、他にも問題があったようです』

「なるほど。なにゆえ、オープンまで、そうした問題に気づかなかったのかの?」

『広報を担当していたヒカルさんはほとんどお店には関与しておらず、試食の前から自分も店内を確認していればよかったと言っています。一方、宮迫さんは、店内とメニューを担当していたにも関わらず、彼が全幅の信頼を置く調理人に任せていたようで、調理人に非はなく、自らに責任があると公言しています』

青年の言葉を聞いた陰陽師は、紙に鑑定結果を書き記してから、口を開く。

宮迫博之SS

青年が属性表を見終える頃に、陰陽師が口を開く。

「話を聞く限り、冷蔵庫が稼働していなかったことに加えて、宮迫氏が仕事に対して真摯に向き合わなかったことも主な要因の一つと考えられる。というのも、ワシが見る限り、“牛宮城”を任されていた調理担当料理人の腕はあまりよくないようじゃし、冷蔵庫などの管理も、その人物に一任せずに宮迫氏も確認しておれば、最悪の事態を免れていたかもしれぬからじゃ」

陰陽師の言葉を聞いた青年は、目を見張りながら口を開く。

『なるほど。そうした人選をしてしまったことも含め、宮迫さんの人運が“3”とかなり低いことが、少なからず関係あるのでしょうか?』

「人間は多面体であり、一概に回答することはできぬが、あえて人運の“3”を基に言及するとすれば、9点を満点とする数字の序列として、“人運が悪い”、そして“マゾ的気質”が今世で起きる傾向の基本にあることから、宮迫氏が自発的/能動的/積極的に行動したというよりも、周囲の人/雰囲気/情勢に流された結果、問題に巻き込まれた/問題を引き起こした、という可能性がある」

『なるほど。宮迫さんにはそうした人間関係におけるトラブルから学びを得ることが今世の課題に含まれていると思われますが、彼にかかっている血脈先祖の霊障と天命運に“2:仕事”と“14:人的トラブル”の相の影響がなければ、今回のようにオープン直前ではなく、もう少し早めに、仮に撤退するにしても損失がまだ少なく済ませられた可能性も考えられるのでしょうか?』

「仮定の話に対しては断言できぬが、今世の宿題に対して“順接”、すなわち無用な重しとして顕在化する傾向がある、血脈先祖の霊障の影響を考えれば、その可能性も無きにしも非ず、といったところじゃな。ワシが見たところ、血脈先祖の霊障に“2:仕事”と“14:人的トラブル”の相は、ヒカル氏にもかかっているようじゃからの」

そう言い、陰陽師は紙に鑑定結果を書き足していく。

前田圭太SS

新たな属性表に目を通した青年は、目を見張りながら口を開く。

『ヒカルさんは、魂の属性3:霊媒体質ですので、血脈先祖の霊障だけでなく、今世の宿題に対して“逆接方向”、すなわち今世の宿題とは直接関係のない要素/方向性が含まれて顕在化する傾向がある、霊脈先祖の霊障もかかっていますが、そんな状態であっても、YouTuberだけでなく、歌手やアパレルなどの実業家としても活躍しているのはさすがだと思います』

「そのような経歴を持つヒカル氏ではあるが、1億円を出資したものの、今回の件が起きてしまったが、両者の関係に何らかの変化はあったのかの?」

陰陽師にそう問われた青年は、小さく首を振ってから口を開く。

『ヒカルさんいわく、二人の仲は悪くなっておらず、ヒカルさんは宮迫さんに対してマイナスな感情を抱いていないと述べていますので、これからも何らかの形でコラボするのではないかと予想しています』

「ふむ」

そう言い、浮かぬ顔で湯呑みの茶を飲む陰陽師に対し、青年は怪訝な表情で尋ねる。

『ひょっとして、二人の相性はあまりよくないのでしょうか?』

青年の問いに答える代わりに、陰陽師は紙に鑑定結果を書き足す。

《ヒカルからみて/宮迫博之からみて》
プライベート S /BB
ビジネス BB/BB

『先生の見立てでは、お互いからみてS(90点)以上なら推奨とお聞きしましたので、望ましい結果ではなさそうですね』

青年の言葉を聞いた陰陽師は、小さく頷いてから、口を開く。

「二人が今後、どのような選択をするかは自由ではあるが、ヒカル氏からみれば早晩袂を分かった方がいいとワシは思う」

『ヒカルさんからみれば、という意味では、宮迫さんが“雨上がり決死隊”を解散する際に、あたかもヒカルさんが“雨上がり”の解散を決定づけたような印象を与える発言をしたようですので、今回の焼肉騒動の前にも、ヒカルさんは宮迫さんにトラブルに巻き込まれたと言えそうです』

「宮迫氏に巻き込まれた、という意味では、彼が2019年に吉本興業から契約を解消されたことで、“雨上がり”のコンビとして活躍できなくなった蛍原徹氏も似たようなものかもしれぬ」

そう言い、陰陽師は紙に鑑定結果を書き足していく。

《蛍原徹からみて/宮迫博之からみて》
プライベート B/BB
ビジネス AA/A

陰陽師が新たに書き足した鑑定結果を見た後に、口を開く。

『二人の相性を見る限り、コンビを解消してよかったと言えなくもないですが、“雨上がり”を結成した1989年から2021年と、30年かけて積み上げてきたものが、相方の不祥事によって解散されたことは、蛍原さんにとっては、断腸の思いだったのではないかと思います』

「そうかもしれぬな」

『ただ、蛍原さんの人運の数字が“3”であることを考慮すると、宮迫さんに原因があるとは言え、“雨上がり”の解散を体験することは、今世の蛍原さんの課題を果たすために必要だった可能性があるのでしょうか?』

「その可能性は少なからずあるじゃろうな。ちなみに、蛍原氏は“2−3−5−5…2”の魂の属性を持つ一方、宮迫氏の魂の属性は彼とは異なるが、芸能界において、それぞれの活動状況はわかるかの?」

陰陽師にそう問われた青年は、スマートフォンを操作した後、口を開く。

『蛍原さんは、テレビではバラエティだけでなくドラマや映画でも俳優として多数出演していますし、特にスキャンダルや傷病はなく、“雨上がり”が解散した後は、ピン芸人や司会者として活動していますので、彼の魂の属性に適した活動を継続しているようです』

青年の言葉に対し、陰陽師が黙って頷き、続きを促しているのを確認し、青年は言葉を続ける。

『一方、宮迫さんは、2012年12月6日に早期胃癌を理由に休養した過去や、先ほど先生が触れた2019年6月24日の闇営業騒動により芸能活動を自粛し、同年7月19日に吉本から契約を解消されたことは、“排除命令”に抵触した可能性があるのではないかと思われます』

「宮迫氏の魂の属性は3(9)―3武士であることから、その可能性は考えられるが、蛍原氏とは別で、彼単体での活動はどうなっておるのじゃ?」

陰陽師にそう問われた青年は、再びスマートフォンを操作した後、口を開く。

『芸能活動以外ですと、2021年6月19日に宮迫さんが立ち上げた服飾ブランド“ZILVER”にて、株式会社ロコンドと共同で作成したメンズ(各種セットアップ)・レディース(ワンピース)・スポーツサンダルをロコンドの通販で販売開始しています。YouTuberとしては、チャンネル登録者数が141万人ですが、最近は公開している動画に対し、良い評価よりも悪い評価の方が多いようです』

「なるほど。服飾の事業に関しては何とも言えぬが、YouTubeに関しては、改善の余地があるかもしれぬの」

陰陽師の言葉を聞いた青年は、小さく頷いた後、口を開く。

『そうですね。ただ、ネットの情報を見る限り、宮迫さんにとって、ヒカルさんは唯一の協力者とも噂されていますので、ヒカルさんとの関係が切れてしまったら、宮迫さんは後がない状況になりそうです』

表情を曇らせながらそう言う青年に対し、陰陽師はいつもの笑みで口を開く。

「いつも言っているように、 “出逢いは必然”であることから、宮迫氏とヒカル氏の双方にとって、二人が関わることがお互いの今世の課題を果たすために必要である可能性が考えられるし、お互いが学ぶべきことが終わったら、縁がなくなる可能性もある」

『ただ、ヒカルさんとの縁がなくなった結果、宮迫さんに新たな出逢いが生まれ、新たな活動やビジネスで成功する可能性も考えられますよね?』

「もちろんじゃとも。そうは言っても、その後も宮迫氏が人との縁に恵まれず、人間関係での失敗を繰り返す可能性もあるものの、それはそれで、彼の今世の課題に含まれている可能性があることから、彼にとっては必要な体験でもあるのじゃよ』

陰陽師の言葉を聞いた青年は、小さくため息を吐いてから、再び口を開く。

『宮迫さんの今後は前途多難だと僕には思われますが、転生回数が190回代で“大々山”にである彼には、各神事を申し込んでいただき、大難を小難にして本来のパフォーマンスを発揮していただけたらと願うばかりです』

「宮迫氏がそなたを通じて、あるいは何らかの縁によってワシと出逢うかどうかも“出逢いは必然”と言えるじゃろうな」

『なるほど。今後、幸運にもどこかで宮迫さんとご縁がありましたら、話してみようと思います』

「“未来は不確定”であるゆえ、そなたと彼に縁があるかどうかについてはあえて言及せぬが、そなたの活動範囲がさらに広がり、時が満ちればひょっとするかもしれぬの」

そう言い、陰陽師は壁時計に視線を向ける。
それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

「今日もご苦労じゃったな。気をつけて帰るのじゃぞ」

陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。

帰路の途中、青年は長らく関わっていない、過去の知人と連絡を取っていた。

今、こうして陰陽師の先生とご縁があるのは、いくつもの転機と、その背後でご縁を繋いてくれた人々のおかげである。

会社を辞める背中を押してくれた人物。占いを教えてくれた人物。
初めて氣を体感させてくれた人物。営業について教えてくれた人物。
ボランティアとMLMについて教えてくれた人物。除霊について教えてくれた人物。
周囲から馬鹿馬鹿しいと思われることでも、全力で取り組むことを教えてくれた人物。
夢や宇宙やスピリチュアルについて教えてくれた人物。
口先ばかりで実践が伴わないと、人の信頼を失うことを教えてくれた人物。

今となっては連絡先がわからない人物がいるが、返信してくれた人々は、今も前向きに自分の道を歩んでいるようだ。

もちろん、マイナスばかりで関わらない方がよかった人物も中にはいるが、そうした人々は、先生の鑑定結果ではNGと出た人物と縁を続けるとどんな損失を被るかを、身をもって体験させてくれた人々でもあり、そう言った意味では、“出逢いは必然”なのだろう。

自分は、これからも多くの人々とご縁があるだろうが、恩が縁を運んでくれていたようにも感じられる。
だから、今後も、過去に縁があった人々も含め、恩を仇で返すことなく、自分から縁を切ることなく関わっていこう。

そう、青年は思議するのだった。

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